おー、、これは…。ホラーの中に混ぜて借りたものの、それはある意味正しかったかもしれない。思春期らしい親への反発や親への不信感から離れられなくなった女子2人。現実を忘れて想像の世界に生きる乙女達が生み出してしまった怪物。その怪物は自分の住む世界を守るため、邪魔者を破壊する。ぅぅーー、危ないわー、、ここまででないにせよ、ありがちな気がするーー
■乙女の祈り - Heavenly Creatures -■
1994年/ニュージーランド・アメリカ/108分
監督:ピーター・ジャクソン
脚本:ピーター・ジャクソン、フラン・ウォルシュ
製作:ジム・ブース、ピーター・ジャクソン
製作総指揮:ハンノ・ヒュース
撮影:アラン・ボリンジャー
音楽:ピーター・ダゼント
出演:
メラニー・リンスキー(ポウリーン)
ケイト・ウィンスレット(ジュリエット)
ダイアナ・ケント(ジュリエットの母)
クライヴ・メリソン(ジュリエットの父)
サラ・パース(ポウリーンの母)
■解説:
allcinema
純粋でいて残酷、あまりにも多感な二人の女子中学生が夢見る幻想と現実。夢に溺れる二人は、ついには自分達の領域を侵すものを抹殺しようとする……。実際に起きた事件の映画化で、彼女たちが犯行に駆り立てられるまでを、鮮明に解き明かした心理ドラマ。多感な少女の見る幻想世界の映像や、この年頃の持つ残酷さを描いた心理描写はお見事。「バッド・テイスト(1987)」、「ブレインデッド(1992)」のP・ジャクソンが新境地を見せた逸品である。
■あらすじ:
1950年代のニュージーランド、クライストチャーチ。ここに暮らすポウリーンは内気な中学生。厳しい規律の名門学校に通い友達はいなかったが、イギリスからの転校生ジュリエットと意気投合し親友関係に。ほとんどの時間を一緒に過ごす強い二人の絆に、両親達は同性愛を心配して二人の仲を裂こうとするが-
スプラッター・ホラーを作っていたピーター・ジャクソン監督が、いきなり方向転換。可憐な少女2人の、2人であるがゆえ生み出された怪物を描く。見所は怪物ではなく、それまでの経緯。また、想像力豊かで小説家を夢見る2人が作り上げる第四帝国“ボロウィニア王国”の世界観。2人がこの国を第四帝国と呼ぶところに、身勝手で高慢な思春期特有の危うさが見て取れる。
最初は砂で作った城だったのが、精巧な粘土細工でできた町の人々が住み始め、支配する王様と后に王子が生まれる。その他にも利発な町娘などがいて、きちんと自分たち2人に役を割り振る。そして作り上げた理想の世界を傍観するだけで無く、自由に行き来できるようになってどんどん入り込み、最後には出てくることが出来なくなってしまった。
しかし彼女たちは“囚われの乙女”ではない。この王国を守るため、自らが怪物になり邪魔者の排除に立ち上がったのだから。
むっつり顔のポウリーンは14歳。骨髄の病気で足に大きな手術跡が残り、体育はいつも見学している内気な女の子。そんな風だから友達もいなくていつも一人だったが、怒ったような表情で平気を装っていた。ある時、イギリスからジュリエットが転校してくる。先生に対してずけずけ物を言い、生意気で鼻持ちならない女の子。結核を患ったことのあるジュリエットも体育は見学。
そんな2人が好きな歌手やスターのことで話すようになり、小説家になることが夢なのも一緒だということで話が盛り上がり急速に親しくなる。父親が大学長で母親がタレントという派手でお金持ちのジュリエットの家に度々遊びに行くようになったポウリーン。父親が魚屋で家には下宿人がいる彼女は、ジュリエットに憧れ、ジュリエットの家族を羨ましく思うようになる。ジュリエットはジュリエットで純粋で話の合うポウリーンを大事な親友として、自分の家で一緒に暮らしたいとまで思うように。
いつも一緒の2人は“ボロウィニア王国”の物語を書き始めた。チャールズ王と后デボラ。王子ディエロに町娘ジーナ。2人は王になり后になり町娘になって、現実の世界との境界がどんどん曖昧に。そんな時、ジュリエットの結核が再発し入院。これがきっかけとなり、ますます離れられなくなった2人に、ジュリエットの父親が「不健康な友情」ではないかと心配し、彼女の療養を理由に南アフリカへジュリエットだけが移る計画を立てた。
これをなんとか阻止し、無理であれば一緒にと願うポウリーン。ジュリエットも協力し渡航費用を捻出するのを手伝うが、ポウリーンの母親がそれを許さなかった。
成績が落ちたこと、生活態度が悪いことなどをくどくど説教する母親に、ポウリーンはジュリエットとの世界を邪魔する全ての元凶が母親だと思い込む。そしてジュリエットとともに、この邪魔者を消し去る計画を立てる-
奇妙な乙女の実話事件映画を代表するのはもちろんコレ『ピクニックatハンギング・ロック(1975)』だが、本作はより、というよりかなり現実的で生々しく、女性なら「ある、ある(あった、あった)」と思わず頷いてしまう部分があるお話。本作も実際にあった事件を元に作られている。
クライストチャーチ 高校生による殺人事件
ニュージーランドのクライストチャーチに住むポーリーン・パーカー(15歳)とジュリエット・ヒューム(16歳)はともに創作を志す親友同士であり、二人で創作したファンタジー小説の世界で空想に耽り、性的な関係を持つまでに至った。
このことを知った二人の両親は恐慌を来たし、特に、名門大学の学長として世間体にこだわるヘンリー・ヒュームは二人を引き離すため、ジュリエットを南アフリカへ移住させるという強硬な手段に訴えようとした。
ポーリーンの母がこの計画の急先鋒だと勝手に思い込んだふたりは、それを防ぐために殺人を計画。1954年にポーリーンの母を二人してレンガで撲殺した。事故死に偽装しようとしたものの、事故死というには不自然すぎる状況や、素人目にも明らかな稚拙な偽装工作から警察は二人を追及したところ、犯行を自供したため逮捕された。後に発見された日記には、二人が浸っていた空想の物語のほかに、母親の殺害計画がつづられており、裁判で検察側の有力な証拠となった。二人には無期懲役の判決がでたが、二度と二人で会わないことを条件に、5年後に仮釈放された。
ジュリエットは女子少年院で外国語を習ったり、編み物や小説執筆したりしてすごし、ポーリーンは高校卒業資格をはじめ各種の資格取得や職業訓練に積極的に取り組んだ。ポーリーンはニュージーランドに留まり書店に勤めていたが、のちイギリスに移住し南東部で子供向けの乗馬学校を開いていた。なお現在はスコットランドの離島でひっそりと余生を送っている。ジュリエットはイギリスに帰り、客室乗務員など複数の仕事を経て人気作家になった。(Wiki:小説家アン・ペリー)
この事件を映画化したピーター・ジャクソンは、広大なニュージーランドの自然を背景に、後の『ロード・オブ・ザ・リング』を少し彷彿とさせる2人の夢の世界を構築した。監督はまた、夢の城だけではなく、最後の惨殺事件も適当に濁すこと無くきちんと描写。決して乙女の夢物語では終わらせていない。
思えば、価値観を共有する少女が岩場に消えていった『ピクニックatハンギング・ロック(1975)』も舞台はオーストラリア。本作はニュージーランドだけれども、何かオセアニア地方(広いな、オイ)というのは、乙女を惑わし、行動を起こさせる磁場みたいなものがあるんだろうか。
どちらにせよ、男性には理解不能な世界かも。
ではまた
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コメント
コメント一覧 (2件)
こんにちは!コメントありがとうございます。
最後に起きたことは単純(ひどい犯罪ですが)なんですが、
そこにいくまでの少女の世界をピーター・ジャクソンが丹念に描いています。
あわせて「ピクニックatハンギング・ロック」も観られると
少女の世界を堪能できるかもしれません[絵文字:i-237]
興味深いストーリーですね。観たいかも^^