何故か憎めないサイコキラー登場。めがねを外してせっかく美人になったのに、そんなこと続けてたら嫌われるよー、と、このストーカーにハラハラしどうし。女性の連続殺人鬼は珍しいけれど、この作品は殺人鬼ものというよりも、人形だけが友達で少女時代を送ったメイのファンタジー・ホラーといった感じもある。それでも痛い描写が多いので苦手な人は観られないかも。
■MAY -メイ- - May -■
2002年/アメリカ/94分
監督・脚本:ラッキー・マッキー
製作:マリアス・バルチュナス 他
撮影:スティーヴ・イェドリン
音楽:ジェイ・バーンズ=ラケット
出演:
アンジェラ・ベティス(メイ)
ジェレミー・シスト(アダム)
アンナ・ファリス(ポリー)
ジェームズ・デュヴァル(ブランク)
ニコール・ヒルズ(アンブロシア)
ケヴィン・ゲイジ(メイの父親)
マール・ケネディ(メイの母親)
2002年/アメリカ/94分
監督・脚本:ラッキー・マッキー
製作:マリアス・バルチュナス 他
撮影:スティーヴ・イェドリン
音楽:ジェイ・バーンズ=ラケット
出演:
アンジェラ・ベティス(メイ)
ジェレミー・シスト(アダム)
アンナ・ファリス(ポリー)
ジェームズ・デュヴァル(ブランク)
ニコール・ヒルズ(アンブロシア)
ケヴィン・ゲイジ(メイの父親)
マール・ケネディ(メイの母親)
■解説:
内気な女性が止めどない狂気に目覚めていくスプラッター・ホラー。不器用に生きる孤独なヒロインが愛を求める感情に突き動かされて、狂気の行動へと走るさまを切なくもグロテスクな描写満載で綴る。主演は「17歳のカルテ」「尼僧の恋/マリアの涙」のアンジェラ・ベティス。監督はこれがデビュー作となるラッキー・マッキー。 (allcinema)
■あらすじ:
幼い頃から内気で友達がいなかったメイは、母親からプレゼントされた人形のスージーだけが話し相手だった。大人になり動物病院に努めるようになったメイは、近所で見かけた、大きな手をしている優しげなアダムに恋をする。何度かデートを重ねたが、メイの異常な愛情表現に驚き、距離をおくようになったアダム。同性愛っぽい関係のあった同僚のポリーにも新しい恋人が出来、再び孤独になったメイだったが、「友達が出来ないなら、造ればいい」と思い立ち-
弱視が原因で斜視になってしまっている内気なメイ。娘を溺愛する母親はそれを隠すように黒い眼帯を付けるが、それを理由にまた友達が出来にくくなる。不憫に思った母親は、自分が作った人形スージーをプレゼントする。ガラスケースに収まったスージー。ここからメイの話し相手はスージーだけとなってしまった。
友達の出来ない娘に対する親の対応がもう少し違っていれば、これからの話も起きなかった、かもしれない。
大人になり動物病院に勤めだしたメイ。
特に好きな仕事は手術のアシスタント。同僚のポリーは嫌がるが、切り開かれたお腹を見ても、贓物が飛び出していても、中に手を入れるのも大丈夫、というより大好きだ。
そしてメイは働いたお金でとうとうコンタクトを手に入れる。斜視もわからなくなり、表情が明るくなったメイ。おしゃれにも興味を持ち、持ち前の裁縫技術でどんどん素敵な服を作り出していく。口紅をひき、鏡の前で踊るメイに、ガラスケースのスージーの表情は悲しげに見える。
そんな時にみかけたアダムは、素敵な大きな手を持っていた。その手で頬を優しくなでられるのを夢見ていたメイ。何度か顔を合わせるうち、デートするようになったがキスの仕方も知らないメイ。しかし問題はそれではなかった。愛情表現が彼女独特で、ホラー映画の内容と現実の区別、やっていい事と悪い事、相手が喜ぶ事と嫌がる事の区別が付かない。それはようするに相手の気持ちなど考えない、考えることが出来ない、自己中心的な性格であるということだった。それもそのはず。ずっと話しかけてきた親友は人形のスージーだけ。何をしゃべろうとスージーは聞いているのみ。あとは娘を溺愛する両親しかいなかったのだ。
アダムはこんなメイから離れていく。しかしその理由さえ分からずスージーに当たり散らすメイ。スージーを守るガラスケースにヒビが入る。それはメイを守っていた“最後の常識”にヒビが入ったと同じ事だった。
ひつこくアダムにつきまとい、ますますあからさまに嫌がられるメイは、同僚の同性愛者ポピーとも関係を持っていたが、そのポピーにも新しい恋人が出来たことを知る。
アダムにもポピーにも見捨てられ、スージーはなんの役にも立たない。メイには新たな友達が必要だった。そして思い立ったのだ。自分の大好きな部位をくっつけて友達を造ることを。それにはまず、アダムの素敵な大きな手が必要だということを-
ラッキー・マッキー監督の最新作『ザ・ウーマン 飼育された女(2012)』では、大人しい母親役であまりぱっとしなかったアンジェラ・ベティス(メイ)。
めがねのおどおどした女の子、コンタクトを手に入れ足取りが軽くなり、素敵な男性とのデートに空を飛び、捨てられた男に復讐(本人はそう思ってない)を決めた時の決め服とその美しさ。などなど、本作では言葉少ない役柄なので、その表情を存分に使って色々な面を見せてくれる。
そしてそれらを横でいつも見ている人形スージーが醸し出す雰囲気、これまたなんとも不気味。どこかで見たことある雰囲気の人形だ、と思っていたが、今思い出したよ。『女優霊(1996)』のオープニングに出てくる姉妹の人形だ・・
←これ。
こんな所にも『女優霊』のトラウマが発動するとは..
スージーの存在だけでは、もはや慰めを見いだせないほどの孤独に陥ったメイが、自分の好きなモノを集めて“友達”を造る!と決めてから、どんどん綺麗に妖艶になっていく。それでもアダムとポピーの心を取り戻すことが出来ないのが可愛そうだが、もうここからはオドオドした優柔不断さは一切吹っ切れて、どんどん目的に向かって突っ走る。これはラッキー・マッキーが製作に参加したジャック・ケッチャム原作『THE LOST ザ・ロスト 失われた黒い夏(2005)』主人公に共通するものを感じる。
ロバート・K. レスラー著「FBI心理分析官」によると、元々殺人鬼気質を持つ人間は、何かのトラブル、例えば恋人を失った、失業した、などを引き金に、その隠れた殺人鬼性が目を覚まし、犯行に及ぶということらしい。
そういった意味では、メイは立派なシリアルキラー。見てくれは華奢で可愛くても、『悪魔のいけにえ(1974)』のモデルとなった、人間の死体を使ってランプシェイドやブレスレットを作ったことで知られているエド・ゲインとなんら変わらないのであります。(Wiki:エド・ゲイン)
シリアルキラーとは
「シリアルキラー」という単語は、アメリカの連続殺人犯テッド・バンディを表現するために考え出されたものである。元FBI捜査官のロバート・K・レスラーが1984年9月に提唱した。
重度の精神汚染に陥っている連続殺人者はサイコキラーと呼ばれ区別されることもある。また、快楽殺人犯は早期に発覚・逮捕されなかった場合、その性向から連続殺人になりやすい。金銭目的で犯行に及んだ連続殺人犯はシリアルキラーから除外されることもあるが、被害金額が少なかったり拷問殺人が発覚した場合などでは明らかに殺害に主眼が置かれているため、シリアルキラーに含まれる。
別々に起きた殺人がほぼ同様の手口で行われている場合や同傾向の人物が狙われている場合には、捜査上でシリアルキラー事件(連続殺人)と判断する重要な根拠になりえる。