『ザ・ウーマン 飼育された女』(2012) - The Woman –

森で自由に生きていた野生の女。それを捕まえ飼育し、自分の自由にしようとする男。それを見守る妻と子供達。この作品は年齢を超えた究極の「女vs男」の戦いを描いたものである。さて、勝利するのはどっちでしょう?
 

The Woman_Movie
■ ザ・ウーマン 飼育された女 – The Woman – ■
2012年/アメリカ/104分
監督:ラッキー・マッキー
脚本:ジャック・ケッチャム、ラッキー・マッキー
原作:ジャック・ケッチャム「ザ・ウーマン」
製作:アンドリュー・ヴァン・デン・ハウテン他
撮影:アレックス・ヴェンドラー
音楽:ショーン・スピラン
出演:
ポリアンナ・マッキントッシュ(女)

ショーン・ブリジャース(クリス)
アンジェラ・ベティス(ベル)
ローレン・アシュリー・カーター(ペギー)
ザック・ランド(ブライアン)
シーラ・モルフセン(ダーリン)
カーリー・ベイカー(教師)
アレクサ・マルシグリアーノ
 

解説:
「MAY -メイ-」のラッキー・マッキー監督がホラー小説界の異才ジャック・ケッチャムとのコラボで撮り上げたバイオレンス・ムービー。ケッチャムのデビュー作『オフシーズン』の続編を原作とした「襲撃者の夜」に登場した食人女が再登場し、鬼畜親父と遭遇したことで辿る衝撃の顛末を過激なバイオレンス描写満載に描く。主演は「襲撃者の夜」のポリアンナ・マッキントッシュ、共演にショーン・ブリジャース。 (allcinema) 
 
あらすじ:
有能な弁護士クリスは森にハンティングに出かけ、偶然見かけた野生の女を捕獲。自宅へと連れ帰り地下室に繋いで監禁、飼育することに。気の進まない家族の協力も取り付け、調教を始めるが-


The Woman_Movie森に生きる野生の女。この凶暴そうな顔をした女は、どうやら赤ちゃんの時に森に捨てられ狼に育てられたようだ。その赤ちゃんは無事に育ち、狼女になった。食糧は森や川で動物や魚を捕まえ、ねぐらは他の動物たちと争って確保する。そうやってずっと一人で生きてきた女。
それを偶然見かけてしまったのが敏腕弁護士クリス。誰もいない森の中で水浴びをする女に目が釘付けになる。そっと女の後をつけ、ねぐらを確認したクリスはその日はいったん帰り、女を監禁する場所の確保をしてから後日森へ。弁護士らしい用意周到さで、ねぐらから女が出てきたところを網で確保。こうして女はいとも簡単に人間クリスの手に落ちた。
 
The Woman_2012クリスには妻と高校生女子を筆頭に3人の子供がいる。郊外の森近くに屋敷を構えるが、この家族がなんとも、どこかヘンなおかしい家族だ。妻は痩せぎすでいつもビクビクしているし、一番年長の娘も父親に向かっていつも上目遣いの低姿勢。母親と同じでビクビクしている。
クリスは丁寧な言葉遣いで家族に接するが、、、口答え、ではなく、何か他の意見を言おうものなら、容赦なく平手打ちが飛んでくる。夫であり父親であるクリスは絶対の存在で支配者として君臨していた。クリスへの返事はいつも「はい。あなた」「はい。パパ」しかあり得ないのだった。
 
The Woman_2012こんな一家の地下室に連れてこられ繋がれた野生の女。クリスは家族それぞれに役割分担を決め、まるで犬のように飼育する。もちろん最終目的は一つ..。しかし女はへこたれず、鎖に繋がれた状態でクリスの指を噛み千切り飲み込んだ。それでもクリスは負けない。ますますサディスティックに調教の手を強めるのだった。
そして身ぎれいになった女を暴行するクリス。それを扉に開けた穴からのぞき見てしまった息子ブランドンは、家族が留守の間に女に酷い仕打ちを。それを知った母親ベルはクリスに告げるが意に反してブランドンの肩を持つ父親クリス。家族に言えない悩みを一人で抱えている長女ペギーは右往左往するばかり。
そして、それらを全て見ていた野生の女。
クリスによって見えない鎖で繋がれた家族と両手両足を鎖で繋がれた野生の女。
その両方の鎖が解けたとき、本当の戦いが始まり惨劇の幕が開け、この家族のさらなる秘密が暴かれる!

  

 
↑上のallcinema解説にあるとおり、本作はカニバリズム(食人)がクローズアップされているようだが、自分がこの作品を観る限りでは、あまり気分の悪い食人ものという印象は受けなかった。この女は森で野生として育ったのだから、動物も魚もヒトも食べる対象であるのだろう、と感じただけ。

The Woman_2012それよりも、吐き気と怒りにイライラしたのはクリスの存在。
紳士のような言葉で家族を管理、思いのまま動かし、(こんなところで)王様のように君臨しているクリス。
平気で暴力をふるうこの男に、ビクビクしながら肩を寄せ合っている妻と子供達・・・と思っていたが、これも一部は全然違っていて、これもまた虫ずが走る事実があとで明らかになってくる。
 
ところで、この野生の女は↑解説にあるようにジャック・ケッチャム原作アンドリュー・ヴァン・デン・ホーテン監督『襲撃者の夜 食人族 the Final』にも出演していて本作で再登場ということだが、下の予告編を見る限り団体で行動しているようだ。ということは、本作『ザ・ウーマン』でヒトの味をしめた野生女がその後『襲撃者の夜』で・・・という流れなら面白いな。

 icon-film 原作者ジャック・ケッチャム
アメリカ・ニュージャージー州のホラー小説家。ボストン大学卒業後、俳優、教師、出版エージェント、材木のセールスマンなどの職業を経たのち、1981年に『オフシーズン』で作家デビュー。著名なホラー作家スティーブン・キングによって賞賛される一方、Village Voiceの評論家には、暴力的ポルノ作品であると批判されている。
■主な作品
 ・オフシーズン(Off Season, 1981年)
 ・隣の家の少女(The Girl Next Door, 1989年)
 ・襲撃者の夜(Offspring, 1991年)
 ・ロード・キル(Joyride, 1994年)
 ・老人と犬(Red, 1995年)
 ・オンリー・チャイルド(Stranglehold, 1995年)
 ・地下室の箱(Right To Life, 1998年)
 ・黒い夏(The Lost, 2001年)
 ・森の惨劇(Cover, 2009年)
(Wiki:ジャック・ケッチャム)

「隣の家の少女」は実話ベースだけれど何度か映画化されてますね。その他にも興味引かれるタイトルがつらつらと..。
ケッチャム作品はホラーに分類されるけれども、出てくるのはモンスターでも幽霊でもなく人間なんですね。モンスター化した人間。それに襲われ、それと戦う話が多い。邪悪で鬼畜な人の皮を被ったモンスター。

本作の邦題は原題『The Woman』に「飼育された女」なるものがくっついているけど、この女は全然飼育などされておりません。動物的本能と女であることを武器に飼育されていると思わせただけ。
そしてタイトルの『The Woman』はこの野生の女だけを表しているのではない。本作に出てくる全ての女性を表していて、“Woman”以外は全て敵だと言っている。それは男の子型のクッキーをバリバリ食べる本作の小さな次女ダーリンにも本能的に宿ってる。
 

こんなお話を監督したのは『マスターズ・オブ・ホラー』にも参加したラッキー・マッキー。主な作品に
 ・MAY -メイ-(2002) 内気な女性が止めどない狂気に目覚めていくスプラッター・ホラー
 ・THE LOST ザ・ロスト 失われた黒い夏(2005TV) 原作ケッチャム
 ・マスターズ・オブ・ホラー/虫おんな(2005TV)
 ・怨霊の森(2006)
 

 
本作の妻役アンジェラ・ベティス。華奢な身体に神経質そうな頬のそげた顔。シリアスな女優さんかと思ったら意外にホラー出演も多くてラッキー・マッキー監督作『MAY -メイ-』では主演。
The Woman_01 
 
あー、観たり読んだりしたいものが、どんどん増えていく・・
ではまた
 

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