あれ?キング原作?と少し戸惑う内容のあらすじ。でもまぁ、そこはキング原作。最近多いスプラッターまがいのレイプ・リベンジものとは違い、リアルに則っていながら、作家の孤独感やホラー要素も忘れない。あ、TVムービーです。
■ スティーヴン・キング ビッグ・ドライバー - Big Driver – ■
2014年/アメリカ/88分
監督:ミカエル・サロモン
脚本:リチャード・クリスチャン・マシスン
原作:スティーヴン・キング
製作:マイケル・マホニー
製作総指揮:ビル・ヘイバー 他
撮影:スティーヴ・コーセンス
音楽:ジェフ・ビール
出演:
マリア・ベロ
オリンピア・デュカキス
ジョーン・ジェット
アン・ダウド
ウィル・ハリス
2014年/アメリカ/88分
監督:ミカエル・サロモン
脚本:リチャード・クリスチャン・マシスン
原作:スティーヴン・キング
製作:マイケル・マホニー
製作総指揮:ビル・ヘイバー 他
撮影:スティーヴ・コーセンス
音楽:ジェフ・ビール
出演:
マリア・ベロ
オリンピア・デュカキス
ジョーン・ジェット
アン・ダウド
ウィル・ハリス
■解説:
スティーヴン・キング原作のレイプリベンジスリラー。■あらすじ:
偶然通り掛かったトラックの巨漢ドライバーにレイプされてしまった人気推理作家・テス。何とか生き延びた彼女は、この悪夢を消し去るために男への復讐を決意する ―
(TSUTAYA)
2010年出版の短編集「Full Dark, No Stars(原題)」に入っている一作が原作で、主人公は「編み物クラブ」の老婆たちが活躍するミステリー小説で著名な作家テス。その彼女が辺鄙な場所の講演会に呼ばれ出かけていった事で巻き込まれてしまうレイプ事件。そして復讐 ―
レイプと復讐。被害女性は作家。
どこかで見た設定ですね?何故、今(2010年)、キングがこれ?
と、思いながらも観た結果、スプラッターホラーな昨今のレイプリベンジ作品に、軽くコミカルに、リアルさとキングらしさを添えつつ渇を入れたのかな?と(・∀・)
とはいえ、レイプシーンはテスそのものが脇から襲われる自分を見下ろしていたり、脱出後すぐには記憶が抜け落ち、周囲の全てが敵に思えるほど混乱し、おかしな言動が続く…。そこに他作に見られない被害者視点の生々しさが存在する。決してレイプそのものの映像や表現を大きく映し出さない。
事件は起きた。相手はレイプ後、殺してしまうシリアル・キラーの大男。奇跡的に息を吹き返し助かったテスは、自分の状態の確認から始める。作家らしく。
傷の状態、精神状態の管理、起きた事の再確認。そして何故起きたのか?原因の追及。
そうやって彼女は犯人と関わる人間を探し出していくのだが、何故、警察に行かなかったのか。それは、人気ミステリー作家の自分が被害に遭ったことが知れたら売名行為だと思われる、という危機感。
ここで少しおかしな事に気が付く。通常、「売名行為」というのは人気に陰りが出始めた有名人が行うことでは・・。大体、有名人気作家が何故わざわざ田舎の先の講演会に出かけたのか?それも忙しい人ならブツブツ文句を言いそうなものなのに、テスはとても楽しそうでウキウキしている。
ここから分かるのは、最近スランプに陥っており、なかなか次作に進めない孤独な作家の姿。有名なだけに何かがあればすぐに面白げに報道され、何を言われるかわからない。もちろん次作が失敗すればこき下ろされる。物を創る者の孤独と苦悩。こんなヒドい事件に遭っても誰にも相談することは出来ない。リアル社会での周囲の人々、物は全て“敵”であるとも言えるのだ。
そんな彼女の真の友人は、昔から頭に住んでいる小説の主人公老女と車に搭載しているナビの“トム”。彼らだけはテスに嘘の無い助言を与え、心から心配してくれる。今回の復讐にも彼らは心配しつつも応援してくれた。彼らこそがテスの中に住む“作家”だったのだ。
この辺りからはキングらしさが次々と覗き始め、編み物老女やナビのトム、テスが殺害した死体までもがテスに向かって話し出す。でもそれはテスが混乱し、おかしな精神状態になっているのではなくて、反対に彼女をより冷静にしていく手段なのだ。作家のテスは全てに台詞を与え、自ら説明させる。
にしても、キングさん。主人公に容赦ないですよね。今回の破壊力は『ミスト』に比べたら随分ましだけど・・・(主人公に起きた事件の事じゃ無いですよ、念のため)