『処刑男爵』 (1972) ~串刺し処刑男爵暴れる

もう少し古い作品かと思ったけど、70年代マリオ・バーヴァ監督のホラー作品。『処刑男爵』という素敵なタイトル(おどろおどろしいけど、そうでもない…)ですぐに思い出したのは、紛れもない『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の”人食い男爵 ”だ(‘ω’)!

処刑男爵

■ 処刑男爵
 - Gli orrori del castello di Norimberga – ■
1972年/イタリア/98分
監督: マリオ・バーヴァ
脚本:ヴィンセント・フォートル
製作:アルフレード・レオーネ
音楽:ステルヴィオ・チプリアーニ

出演:
ジョセフ・コットン
エルケ・ソマー
マッシモ・ジロッティ
ラーダ・ラシモフ
アントニオ・カンタフォラ
ウンベルト・ラオ
ルチアーノ・ピゴッツィ
ニコレッタ・エルミ

■解説:
イタリアンホラーの父、マリオ・バーヴァ監督作。舞台となる古城のロケーションの素晴らしさと『第三の男』の名優、ジョセフ・コットンが見せる怪演に引き込まれる。

■あらすじ:
“悪魔の城”と呼ばれるクライスト家の巨大な城がある田舎町。ここには魔女が“処刑男爵”に火あぶりにされたという伝説があった。クライスト家の子孫・ピーターは自らのルーツを調べるため、城を訪れる。そこに処刑男爵が現れ、殺戮を始めるが ─

U-NEXT

英題:BARON BLOOD


時たま観たくなる古いホラー。全体がくっきりと色鮮やかではないけれど、逆にふわっとした中にある鮮烈な”色”だったり、”影”だったりが浮き立って、とても印象に残るシーンが記憶に残ることも多い。モノクロ作品が好きなのもそういう理由からだけど、例えば『エクソシスト』(1973)も印象に残っているシーンと言えば、首がグルっとというよりも↓こんなシーンがお気に入り。また観たくなってきたー(*’▽’)

エクソシスト
エクソシスト

で、本作『処刑男爵』。
伯爵でも、子爵でもなく”男爵”なのは、なんだろう、上過ぎず、下過ぎず、適度な資産と偉そうさと自由さがあるイメージからだろうか(あくまでも私見)。ま、とにかく、その昔、適度とはいえ村々と見事な城を持っていた中世オーストリアの城主フォン・クライスト男爵。

彼は残酷で横暴な城主でその名をとどろかせており、敵は言うに及ばず、気に入らない配下の者や村の人々をすぐに捕まえては城にある特別な拷問部屋で拷問したあげく、処刑、処刑、処刑。その亡骸を城の高いところにある尖塔に串刺しにして見せしめにしたという。

処刑男爵

数百年経った今でも”クライスト”の名を聞くと、身が凍るような思いをする村の人たち。そんな田舎町に男爵の直系の子孫であるピーターが訪れる。
その訪問がオープニングのシーンとなっているのだが、明るくテンポのいい音楽にのせて素敵で大きなジャンボ旅客機が空を飛び、笑顔でさわやかなピーターが空の旅を満喫している。なんでしょう、まるで航空会社と旅行会社のPRコマーシャルのようなオープニング。とても今からホラーが始まるなどとは思えない、この演出。

現代(この場合は70年代)の最先端である飛行機とゴシックなホラーの掛け合わせは、そういえば『キャット・ピープル』(1982)にも使われていたな。どんなに時代が進もうとも、人の欲や恨み、呪いは消え去らないんだよ……

実は嫌いではない、この組み合わせ。
今回、わざわざアメリカから”処刑男爵”とわかった上で先祖の城を訪れたピーターも好みだったらしく、彼の目的は男爵をもっと知り、男爵が処刑したと言われる魔女エリザベートの呪いの真実を確かめるためでもあった。エリザベートの呪いの言葉が書かれている古い書き物を携えて、彼はさっそく現地の学生エヴァと一緒に城に入り込む。やることが早い都会の紳士。

処刑男爵

それには男爵の霊を蘇らせなくては、ということで早速、呪文を唱えるピーター。呪文はすぐに効果を奏して、大きな扉の向こうに不気味な人影が。エヴァさん..今更、ぎゃあぎゃあ言っても遅いのよ…

こうして、浅はかな若者によって蘇った処刑男爵。自分の城を取り戻し、好き放題に拷問、処刑をやりたい、その一心で行動を開始する。自分の城に隠しておいた金銀財宝を使ってオークションに出された城を買い戻し、自分の好きにリフォームし、目を付けたエヴァ(とその他の一行)を城に招待する。それと並行して邪魔な奴には悪の鉄槌を振り下ろす。

あっ、300年近く墓に眠っていた男爵だから想像した通りの見た目で蘇ったはずなんだけど、なぜか医者に修復してもらったり(その後、惨殺するけど)、見た目良く見せる魔術のようなモノも持っていたりして普通の人のようなナリで”ベッカー氏”として皆の前に現れる。それを一目で看破したのは、まだ幼い少女のみ。その力は子どもゆえの好奇心からなのか、少女ゆえの無垢さなのかはわからない…。

こういう普通の人間として現れる感じはドラキュラ伯爵そのもので、レンフィールドのような小間使い的な男も出てくるし、なにより串刺しで見せしめというのは”串刺し公”と言われたヴラド3世(ドラキュラのモデル。実在)そのものだ。

ヴラド・ツェペシュ公(ドラキュラ伯爵)

ヴラド・ツェペシュ

通称ドラキュラ公、または串刺し公。ブラム・ストーカーの小説『ドラキュラ』に登場する吸血鬼・ドラキュラ伯爵のモデルの一人として知られる。

ヴラドは敵軍のみならず自国の貴族や民も数多く串刺しにして処刑したと伝えられる。串刺し刑はこの時代のキリスト教国、イスラム教国のいずれにおいても珍しいものではなかったが、あくまで重罪を犯した農民に限られた。
しかしヴラドの特殊性は、反逆者はたとえ貴族であっても串刺しに処したところにある。通常、貴族の処刑は斬首によって行われるが、あえて串刺しという最も卑しい刑罰を課すことで、君主の権威の絶対性を表そうとしたと考えられている。

Wikipedia

(たいしたことないけど)最悪な祖先、串刺し処刑男爵が現代の町を行く。だが同時に呪文で呼び出したのは、男爵に大いなる呪いをかけて処刑された魔女エリザベートの呪いも一緒だった。これが吉と出るか凶と出るかは、観た者にしかわかりませんが、ラストも何故か航空会社と旅行会社のリズムに乗って迎えることになる、とだけ言っておきましょう。

監督マリオ・バーヴァ

イタリアの映画監督、撮影監督。イタリア・ホラー映画黄金時代を築いた1人として知られている。
1939年、バーヴァは撮影監督として独立し、ロベルト・ロッセリーニの2本の短編映画を撮った。1940年代初期には長編映画も担当した。
1960年、バーヴァはイタリア・ゴシック・ホラー映画『血ぬられた墓標』を監督した。この映画はバーバラ・スティールを一躍スターにしたばかりでなく、白黒フィルムの光と影の使い方で高い評価を受けた。続く『ブラック・サバス 恐怖!三つの顔』(1963年)、『白い肌に狂う鞭』(1963年)ではカラー映画での評価を得た。

バーヴァ作品は後の映画に大きな影響を与えた。たとえば、『知りすぎた少女』(1963年)はイタリア・ジャッロ映画の最初の1本と呼ばれ、SFホラー『バンパイアの惑星(恐怖の怪奇惑星)』(1965年)は『エイリアン』(1979年)に大きな影響を与えたと言われている。

Wikipedia

■主な監督作品
・マラソンの戦い(1959)
・血ぬられた墓標(1960)
・ヘラクレス魔界の死闘(1961)
・知りすぎた少女(1963)
・ブラック・サバス 恐怖!三つの顔(1963)
・白い肌に狂う鞭(1963)
・バンパイアの惑星(1965)
・呪いの館(1966)
・ナイヴス・オブ・ジ・アベンジャー(1966)
・ファイブ・バンボーレ(1970)
・クレイジー・キラー 悪魔の焼却炉(1970)
・ロイ・コルト&ウィンチェスター・ジャック(1970)
・フォー・タイムズ・ザット・ナイト(1971)
・血みどろの入江(1971)
・処刑男爵(1972)
・リサと悪魔(1973)
・新エクソシスト 死肉のダンス(1973)
・ラビッド・ドッグズ(1974)
・ザ・ショック(1977)
・マリオ・バーヴァ 地獄の舞踏(2004) ※ドキュメンタリー

処刑男爵

やっぱり~
ちょっと分かりにくいけど、本作でもライトを逆光にして逃げていく女性を後ろから映す場面の美しい事。ヨーロッパの古都の美しい街並みと恐怖の表情で逃げる女性。なんともイタリアンなホラーで、ほんとだ、後のいくつもの映画で観たことがある。その一つ↓

実は、本作はU-NEXTで観たんだけれど、しばらく前に見慣れぬゴシックなタイトルのホラーが並んでいるのに気が付いた。とりあえずお気に入りに入れて、一つずつ観て行っているところ。そんな中、「夏のホラー秘宝まつり2021」でも上映される予定と知って、監督マリオ・パーヴァの名前を知ったという、、まだまだのホラー初心者です。
さ、ぼちぼち観ていこ。いつ終わるかわからんからね。

処刑男爵

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