人生は計算通りにはいかない― 軍隊のような規律を持って全てを管理、纏まっていたはずの男子社交クラブがどんどん崩壊していく。そんな一夜を描いたのがこの作品『血と銃』。まるで戦場のように次々と巻き起こるアクシデント、トラブルに脂汗が飛び散る。あなたもこのリアルな一夜を体験してみませんか。
■血と銃 - Brotherhood -■ 2010年/アメリカ/76分
監督:ウィル・キャノン
脚本:ウィル・キャノン、ダグ・サイモン
製作:クリス・ポラック 他
製作総指揮:ケヴィン・イワシマ
撮影:マイケル・フィモナリ
音楽:ダン・マロッコ
出演:
ジョン・フォスター(フランク)
トレヴァー・モーガン(アダム)
アーレン・エスカーペタ(マイク)
ルー・テイラー・プッチ(ケヴィン)
ジェニファー・サイプス
イヴァン・ギャンブル
ルーク・セクストン
■解説:
銃撃 放火 監禁 衝突 狂気 暴力。
制御不能に陥った少年たちが荒れ狂う新時代のバイオレンス・サスペンス!! (amazon)
■あらすじ:
ある大学の名門社交クラブの入会審査に、根性試しのコンビニ強盗が行なわれることに。しかしちょっとした行き違いで新入生の1人が銃でコンビニ店員に撃たれたことから、統制が取れていたはずの集団の歯車がどんどん狂っていく-
ジャケットを見る限りではギャングの犯罪物語に見えるが、違う。登場人物はある大学の社交クラブに属する面々。名門社交クラブということだから、それなりの大学なのだろう。この名門社交クラブ“シグマ・ゼータ・キー”の入会テストが代々コンビニ強盗による根性試しというから、なんじゃそれ、となるが、とにかく新入生はこれをこなさないとこのクラブに入会できない。
オープニングがこのテスト真っ最中の車内。クラブリーダーでもあるフランクが震える新入生達に手順を説明、1人ずつ車から駆け下りコンビニまで突っ走る。手には銃、顔にはマスク。盗ってくるのは19ドル10セント(クラブ設立が1910年だから)。彼らの高鳴る鼓動と冷や汗で(そのマスク使い回してんの?と気になりながらも)、観ているこちらも相当ストレスがたまる。
冒頭10分でたまったストレスは、この後、最後まで癒されること無くたまりまくり。何しろ、彼らは強盗など未経験のただの大学生だから。
ところがこのテストには裏があり、実際に強盗するのではなかった。が、ちょっとした手違いで銃を持ちコンビニ店員を脅す羽目になってしまったケヴィン。コンビニには当然、銃が常備されており、返り討ちにあったケヴィンは肩を撃ち抜かれる。慌ててフランクやケヴィンの親友アダムらがコンビニを目指すが、銃に慣れない店員はめったやたらに撃ちまくり、店内は戦場のような様相に。
アメリカは銃社会だが、銃をきちんと使いこなせる人はどれほどいるんだろうか。ましてや、状況を判断し撃つことができる人は?
店員の隙を突き、店員を殴りつけてなんとか脱出した彼ら。しかしケヴィンの怪我は重傷だった。想定外のハプニングに慌てふためくリーダーのフランクだったが、警察に捕まるわけにはいかない。今のままでは「コンビニ強盗」と「撃たれた犯人」だ。パニクリながらも対処方法を模索するが、そこにはケヴィンを病院に連れて行くという考えは含まれていなかった。アダムはなんとか病院へ、と懇願するが、裏切り者扱いにされる始末。
しかし彼らに起きたトラブルは、この夜、これから起きることの始まりに過ぎなかった―
何留かしてそうなフランクを含め、この子達はまだ学生。
その学生達が強盗と銃による重傷者を抱え、その上、警察に捕まらないという方法を必死に考えている。そのパニクリようが実にリアルで、どう考えても両方をうまく解決する方法など無いように思われる。可哀想なことに、この夜のトラブルはまだまだ続く。コンビニ店員も黙っちゃいない。
クラブ員10数名がその場にいるが、それなりに対処し対策案を話せるのはほぼフランクとアダムだけという状況で、解決に向けて行動すれば行動するほど、ドツボにはまっていく。決定権のあるフランクが「皆のため」と言いながら自身の保身に走っているのが原因だ。
原題『Brotherhood』は「兄弟分」というような意味だが、これでは兄弟の絆、友情というよりも「仲間意識」。それも強制的に仲間と言わせる勘違いの連帯責任もどき。
次々起こるトラブル連鎖。決して休むことが許されない、まさに弾丸ストーリー。そんな中、どんどん傷が悪化していくケヴィン。弾は貫通したが出血がひどい。映画によくあるように貫通したから大丈夫じゃないの?と安易に考えちゃ駄目なようだ。アダムは親友を助けることが出来るのだろうか。
そして空が白み始めた頃、彼らに最後の災難がふりかかる。
「若さ」というのは決して「ムチャをやっても笑って許される」護符ではないのだ。
*関係ないけど『血とバラ』も観てみたい → 観てみました『血とバラ』
『血とバラ』(1960) - Et mourir de plaisir –
古めの吸血鬼映画特集ぼちぼち続いてます。今回は『世にも怪奇な物語/黒馬の哭く館』のロジェ・ヴァディム監督作。もう『血とバラ』なんてタイトルだけでクラクラしそう…