なんか妙なタイトルが付いていて、そこから内容を想像するのは難しい系。で、ついつい、いつものように妙なタイトルに引き寄せられた管理人momorexさん。しかしそこには、あらすじや作品冒頭などからでは到底計り知れない世界が深く深く広がっていたのだった・・・
■ コングレス未来学会 - The Congress – ■
2013年/イスラエル・フランス/123分
監督:アリ・フォルマン
脚本:アリ・フォルマン
原作: スタニスワフ・レム「泰平ヨンの未来学会議」
製作:アリ・フォルマン他
撮影:ミハウ・エングレルト
音楽:マックス・リヒター
出演:
ロビン・ライト( ロビン・ライト)
ハーヴェイ・カイテル(アル)
ポール・ジアマッティ(ドクター・ベイカー)
コディ・スミット=マクフィー(アーロン・ライト)
ジョン・ハム(ディラン・トゥルーリナー)
ダニー・ヒューストン(ジェフ・グリーン)
サミ・ゲイル(サラ・ライト)
マイケル・スタール=デヴィッド(スティーヴ)
■解説:
「戦場でワルツを」のアリ・フォルマン監督が、「惑星ソラリス」の原作でも知られるポーランドのSF作家スタニスワフ・レムによる小説「泰平ヨンの未来学会議」をアニメーションと実写を交えて映画化。■あらすじ:
俳優が自らの一番輝いている姿をスキャンし、デジタルデータとして保存することが可能になった未来世界。40歳を超えて女優としての旬を過ぎたロビン・ライトは、難病を抱えた息子のためにも、巨額の報酬と引き換えに、それまで出演を拒んできた売れ筋の映画を含むあらゆるジャンルの作品に彼女のデータを提供するという契約を結ぶ。映画会社のミラマウント社にデータを提供したロビンは演技をすることもなくなり、表舞台から退く。そして20年後、ミラマウント社が開く未来学会議に招かれたロビンは、人々が化学薬品を使った新たな娯楽に没頭している世の中を目の当たりにする ―
(映画.com)
初っ端、大物女優らしく涙を流すロビン・ライト。その彼女にハーヴェイ・カイテルが人生の大先輩らしく、プロのマネージャーらしく手慣れた感じで流れるように、時に厳しく、時に優しく言い聞かせ、説得している。
あぁ、このハーヴェイ・カイテル・・。相手が男だろうが、女だろうが、殺し屋だろうが、小僧だろうが、ハーヴェイ・カイテルの説得術にかかっては、大人しく項垂れて静かに話を聞くしかない。だって絶対的にハーヴェイ・カイテルが正しいんだからね。言い返す言葉も無く、圧倒的な説得力を持って静かな威厳でコテンパンにやられるんだからね。
ロビンが説得されている内容とは、、
若い頃は売れていた女優ロビン・ライト(実名)も今や40代半ば。出演作も途切れがちになる中、所属映画会社ミラマウントに最後通牒を言い渡される。「君の身体をスキャンしてデータとして会社に残し、今後はこれを使って映画を制作していく。データを高く買う代わりに契約は終わり。そのうえ、今後一切、俳優として演技してはならぬ。」
演技する機会を永遠に失うことになる、こんな話に乗れるわけはない。それが例えハーヴェイ・カイテルの説得力のある話であっても、、、ロビンは最初抵抗したけれど、難病(アッシャー症候群)を患う息子を育てていくために折れ、データスキャンを受ける。彼女は確かに少し傲慢な振舞の女優ではあるけれど、子供たちにとっては良き母であり、その傲慢な感じも女優を演じているに過ぎない。そうじゃないと、この世界で生きては来れなかったのだ。だが、これからは自然体で人生を生きていく、子供たちと一緒に。生きていくはずだった-
【アッシャー症候群】
難聴と、徐々に失われていく視力で特徴付けられる。難聴の原因は内耳の障害に因り、視力の障害は網膜の細胞が変性することによって起こる網膜色素変性が原因である。通常は網膜の桿状体細胞が先に障害され、この為夜盲症が起こり、徐々に周辺視力が失われていく。一方、黄斑にある錐体細胞が先に失われるために、中心視力が失われる場合もある。
Wikipedia :アッシャー症候群
ここまでが前半だ。スキャン時になかなか気分の乗らないロビンに、アル(ハーヴェイ・カイテル)が子供の頃の話を聞かせる、とても見ごたえのある場面もあるが、ここまでは一女優の話に過ぎない。が、後半は20年後の世界がアニメで表現され、ロビンと彼女の周りの数名ほどしか生きている人とは感じられない。なぜにアニメと化したかというと、20年後にロビンが招待されたミラマウント社のある地域に入るには、この時代では当然となっている幻覚剤を吸入することになっている。この地域はアニメ専用地域となっており、幻覚剤もそのタイプのものを強要されるのだ。そして吸入後はあっという間に
こんな世界に踏み込むことになる。
自分も他人も誰もが自由に思い描くカートゥーンの世界の住人になる。面白おかしい世界のようだが、ミラマウントの人間が警察まがいの役割をおっていたりして、自由なのは見せかけだけ。しっかり管理されているのだ。面白おかしく、何も考えずに生きていくように。ただただ、ミラマウント社の映画作品を楽しむように。
だがこの世界は自由選択だ。このおかしな世界を選ばずに、幻覚剤を吸入しない道も選ぶことができる。当然、ご想像通り、もう一つの自然であるはずの世界は、この世の終わりのような無彩色でみじめな貧困の世界。ロビンが20年前にデータをスキャンした時に指示された「笑い、喜び」に相反する「空虚、無表情」の世界なのであった。
だがしかし、カートゥーン世界にそびえ立つミラマウントホテルの豪華な部屋から見える外の景色は、まるで不毛の赤い惑星・火星のようだ。赤い砂山の真ん中の世界は虚構という名に相応しい。
映画俳優という虚構の世界に生きてきたロビンが、真の自由を手に入れるため、離れ離れになってしまった子供たちをもう一度この手に抱くために、自分の足で動き、走り、転び、追いかける。女優時代とは違って、決して諦めない、欲しいものを手に入れるまで。彼女が心の底から笑い、泣くことができるのも、もうすぐだ。
本作はハリウッドの世界が根底にあり、ロビン・ライトがロビン・ライトで出ている他にも、キアヌ・リーヴスの名がサラッと出てきたり、カートゥーンの世界にこんな人が出てきたり
ロビンの息子の初登場時の表情がとても「無垢」な感じでありながらも、何か大人びたようにも見えるのがマイケル・ジャクソンに似てるなぁと思っていたら、カートゥーンの世界のレストランでマイケルがスリラーの格好で給仕をしていたり、他にも何やら色々な有名人がわしゃわしゃと出てくるあたり、虚構の世界にかなり何かを訴えていると思われます。
制作国はイスラエルとフランス。タイトルの「コングレス」とは”代表者による正式な会議”という意味で「未来について考えようぜ!」みたいな感じなのかなー(いい加減)。俳優スキャンなんてもう10年以上も前から普通に行われているから、いずれロビンみたいな目に合う時代もくるのかな、なんて。
本作はいつも観る映画とはまた違った目線でお楽しみいただけたらと。
久しぶりの更新となりました。最近、ふと思い立ってブログテーマを変更し、あれこれ触って時間がたつのを忘れる感覚を久しぶりに感じていたのですが、ちょっと待って。違うやろ?形より中身でしょ、と。映画や海外ドラマは相変わらず観ており、書きたいなと思うこともしばしば。私も自然体で吐き出すべきことは吐き出していこうかと思ってます。
ぼちぼちとどうぞよろしくお願いいたします(*’ω’*)