『3時10分、決断のとき』(2007) - 3:10 to Yuma –

「生きる」とは何なのか

310 to Yuma_00

■3時10分、決断のとき -3:10 to Yuma-■
2007年/アメリカ/122分
監督:ジェームズ・マンゴールド
脚本:ハルステッド・ウェルズ、マイケル・ブラント、デレク・ハース
製作:キャシー・コンラッド
製作総指揮:スチュアート・ベサー、ライヤン・カヴァナー、リンウッド・スピンクス
音楽:マルコ・ベルトラミ
出演:
ラッセル・クロウ(ベン・ウェイド)
クリスチャン・ベール(ダン・エヴァンス)
ベン・フォスター(チャーリー・プリンス)
ピーター・フォンダ(賞金稼ぎバイロン・マッケルロイ)
グレッチェン・モル(アリス・エヴァンス)
ローガン・ラーマン(ウィリアム・エヴァンス)
ダラス・ロバーツ(グレイソン・バターフィールド)
アラン・テュディック(ドクター・ポッター)
ケヴィン・デュランド(タッカー)

■あらすじ 
南北戦争終結間もないアリゾナ。
狙撃手として従軍、負傷で片足が不自由になったダン・エヴァンスは妻と二人の息子と共に荒野で小さな牧場を営み生活していた。鉄道網を敷く予定の場所に彼の牧場があるため、日々嫌がらせを受けている上、干ばつのため借金がかさみ生活は苦しい。
そんな折、悪名高い無法者ベン・ウェイド一味が駅馬車を襲う場面に居合わせてしまう。手下は逃げたが保安官に逮捕されたウェイドは裁判所のあるユマへ連行されることが決まる。コンテンションの町にある駅からユマ行きの列車が出るのは三日後の午後3時10分。ダンは危険を承知で200ドルのために護送役に名乗り出る-

※当時の1ドル=当時の日本の1両に当たる。1両は時によるが江戸時代中~後期では3~5万円相当。町人1人が1年暮らせるほどの額らしい。幕末で1両3~4千円。仮に4千円として200ドルで80万円。江戸時代であれば単純に町人が20年前後遊んで暮らせる額となる。(あくまで各所から情報を寄せ集め計算しただけです。)


カウボーイ&エイリアン』を観た後、この『3時10分、決断のとき』を録画してあったことを思い出し視聴。
この正当派西部劇は1953年3月に発表されたエルモア・レナードの短編小説を映画化した『決断の3時10分』(1957)のリメイクである。
無法者一味のボスを単純な悪として表現せず、一人の人間として掘り下げた事は当時としては珍しいのではないだろうか。有名な西部劇『シェーン』も原作小説と同じ1953年製作。
※西部劇の簡単な歴史についてはこちらの記事をご参照ください。

Contents

監督はジェームズ・マンゴールド


310 to Yuma_09大好きなサスペンス映画『“アイデンティティー”』(2003)の監督さんだった。どうりで登場人物が多くても個々の人物像がよく分かる。
代表作に『君に逢いたくて』(1995)、『17歳のカルテ』(1999)、『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(2005)、『ナイト&デイ』(2010)などがある。

クリスチャン・ベール(ダン・エヴァンス)


310 to Yuma_03スピルバーグ監督作『太陽の帝国』(1987)で映画デビュー。4000人のオーディション参加者から選ばれた。当時13才。
最近は『バットマン』シリーズで有名だが、『アメリカン・サイコ』(2000)、『マシニスト』(2004)などの映画に主演しているあたり、ただのアクション俳優では無いとみた。多彩なジャンル、役どころで出演するから、どういう俳優さんなのか自分の中で掴みきれない難しい人だ。
2010年公開の『ザ・ファイター』でゴールデングローブ賞 助演男優賞、アカデミー助演男優賞を受賞している。もうすぐWOWOWでやるので楽しみだ。

ラッセル・クロウ(ベン・ウェイド)


310 to Yuma_02マキシマスですね。
私生活では短気、粗暴で扱いにくい人のようだが、この怒りを抑えた演技はどうだ怒りをため込み、目で笑う。この人の笑っている目ほど複雑で怖いものは無い。
枝にとまっている鳥が飛び立ち、それを目で追うシーンが今作にも『グラディエーター』にもあり、どちらも作品内で最初のラッセル・クロウ登場シーンとなる。役柄は違えど純粋で子供のような目をしているのはその時だけで、後は背負っているものを複雑に表現する。
そういった意味では『グラディエーター』(2000/ アカデミー主演男優賞)と今作『3時10分、決断のとき』が彼の代表作と言える。こんなラッセル・クロウをまた観たい。
1964年生まれ、ニュージーランド出身。

ベン・フォスター(一の子分チャーリー・プリンス)


310 to Yuma_05今作で特別賞をあげたい人チャーリー。ベン・ウェイドの下で一味をまとめる。
←この画像では分かりにくいが、非道、冷徹、利口で単純。ボスを守るためなら得意の二丁拳銃でなんでもする。まるで従順なロボットのようだ。他の子分達が機会さえあれば下克上を狙う輩である中で際だっており、ボスの信頼も厚い。ある意味とても魅力的な蛇のような目をした男だ。薄いベージュ色の衣装もよく役柄に合っていた。
演じたのはベン・フォスター。今までノーチェックだったのが口惜しいぞ。1996年から俳優活動をしており、映画にドラマに出演作は結構ある。

  • フラッシュ・フォワード Flash Forward (1996-1997)
  • フォーン・ブース Phone Booth (2002)
  • 11:14(2003)
  • パニッシャー The Punisher (2004)
  • ホステージ Hostage (2005)
  • X-MEN: ファイナル ディシジョン X-Men: The Last Stand (2006)
  • アルファ・ドッグ 破滅へのカウントダウン Alpha Dog (2007)
  • 30デイズ・ナイト 30 Days of Night (2007)
  • パンドラム Pandorum (2009)
  • メカニック The Mechanic (2011)

二人の男の生き様を軸にしたこの西部劇『3時10分、決断のとき』。
家族のため、生活のため、200ドルのため、そして自身の自尊心を取り戻すため旅に出た男ダン。
幼い時に親に捨てられ荒野に放り出された男ベン・ウェイド。そのしなやかな生き様は動物的であるとも言える。
彼らが生きた西部開拓時代とはどのような時代だったのか。

西部開拓時代とは!?

西部開拓時代(American Old West)とは、19世紀(特に1860年代に始まり1890年のフロンティア消滅まで)における、北アメリカの時代区分の一つ。オールド・ウェスト (Old West) 、ワイルド・ウェスト (Wild West) とも呼ばれる。
植民地時代から発展していた大西洋岸から太平洋岸まで漸進的に未開拓地域が開拓されていった。1848年にカリフォルニア州で金鉱が発見されるとゴールド・ラッシュの到来が開拓を後押しした。また、1869年にはアメリカ合衆国で最初の大陸横断鉄道が開通した。いっぽう先住民であるインディアンにとっては、突然やって来た侵略者に自分達の土地を強奪されたうえに殺戮された時代でもある。
アメリカ合衆国東部で1871年ごろに第二次産業革命が始まった頃、フロンティアには人が集まり始めた。ワイルド・ウェストの初期は土地の大部分が公有地で、広い土地での畜産も農業も自由であった。地方の法執行機関もほとんどなく、軍は特定の場所に集中していた。バッファローの狩猟者、鉄道労働者、放浪者、兵士らの小競り合いが銃撃戦に発展した。
当時、牛追いを襲う牛泥棒は深刻な犯罪であった。牛泥棒は自警団によって私刑に処される結果となった(ただし、この手の物語はたいていがフィクションである)。メキシコ人の牛泥棒と、コマンチェロ(コマンチ族と交易をしていたヒスパニック系商人)と手を組んだ無法者たちは、メキシコ政府がこの慣習を支持していたことで非難され、南北戦争以前から19世紀の終わりまでの主要な問題となった。  Wikiより

ロン・ハワード監督『遥かなる大地へ』(1992)でトム・クルーズとニコール・キッドマンが土地を得るため、馬や馬車で駆けていた場面が思い出される。よーいドンで参加者が一斉に欲しい土地へ走り出し、早い者がその土地の所有者となったシーン。
またアウトロー軍団の腕のいいメキシコ人狙撃手が出てきたのは『カウボーイ&エイリアン』(2011)だったか。

発展していく所には人が集まり金が集まる。
法執行機関は設置されはしたが、
西部開拓時代の辺境地域の保安官には様々な種類の人物が就任した。荒くれ者を取り締まるために凶悪犯の前科を持つ者や得体の知れない流れ者のガンマンがその職に就任することがあった。税の取り立ても任されたので地域の有力者と癒着することが多く、自ら地域のアウトローたちのボスになって悪徳の限りを尽くす者もいた。多くは公募に対して射撃の腕に自信がある者が名乗り出、地元住民の選挙によって選ばれた。
こんな時代だ。

そもそもアウトロー(無法者)とは

語源的には犯罪等により法の保護を受けられなくなった人物をさす。しかし、現代ではもっぱら西部劇での無法者及びそのような生活スタイル(自ら好んで法の埒外に身を置く)を示す語として用いられることが多い。本来は法律用語で対象となる人物に付される厳しい宣告の一つである。
アウトロー宣告を受けると「市民としての死」(civil death, 市民権剥奪)が科せられた。この宣告は社会的な死であり、あらゆる市民社会から排除され、如何なる者も彼に食事や隠れ処その他の援助を与えることが禁じられた。もし援助すれば couthutlaugh (=A person who harbored an outlaw)の罪に問われ援助者自身が宣告を受ける虞れがあった。支援した者が許されるにはアウトローを殺さなければならなかった。実際にアウトロー殺しは推奨され、「アウトローは市民社会を無視したので、社会もアウトローにいかなる義務を負わない」という論理で、殺しても殺人罪に問われることはなかった。彼らに市民権はなかったので訴えたり保護を求めることはできず、自らが法的責任を負った。日本では「無宿人」が相当する。

Wikiより

310 to Yuma_10有名なアウトローにジェシー・ジェイムズコール・ヤンガービリー・ザ・キッドなどがいる。
極悪非道な輩達ではあるが、同じく極悪な町の支配者や保安官がいる中で、痛快なまでの強盗やその悲劇的最後は人々の同情を集め、強者に立ち向かうロビン・フッドのイメージに重ね合わせる者がいたのも事実であり、一部のアウトロー達は伝説となる。

画像はビリー・ザ・キッド

310 to Yuma_07そして今作の無法者のボス‘ベン・ウェイド’
ダンの上の息子ウィリアムは、一味による駅馬車強盗目撃からウェイド護送と父親と行動を共にする。
護送初期のウェイドを見るキラキラした目が、実に子供らしい。
彼もこの旅で大きく成長する。


人は元来、善と悪を併せ持つ。
個々人で善悪の価値観があり、バランスを持っている。
小さな嘘をついたとき、そのバランスが崩れて罪悪感を持ち、善で補うことで自分を許すことが出来る。(奥さんについた嘘が気になって、ついつい花やケーキなど買って帰り結局嘘がばれるというアレですね。)

ダンとウェイドは「お金を得ること」をそれぞれ共通目的とはしているが、このバランス感覚が絶対的に違っている。それを一緒に行動してつぶさに目撃していく息子ウィリアムは観客の目でもある。
ダンとウェイド、ダンと息子ウィリアム、ウェイドとウィリアム、ウェイドと賞金稼ぎバイロン。そして忘れてはならないのがウェイドとチャーリー。
彼らのバランスの計り方と自尊心に対する考え方が見どころです。
そして最後に蛇の目チャーリーのために祈ってやってください。
悪いヤツですが可愛そうなヤツでもありました。

余談--
いくらでも贅沢できる今の時代に1億あっても2億あっても足らないけれど、この19世紀に次々と強盗を繰り返していたギャング達は何に使っていたんだろう?
ちなみにジェシー・ジェイムズ強盗団は4人ほどで1866年2000ドル、1867年4000ドル、1868年14000ドル、1871年40000ドル奪っている。
大きな牧場を経営するなどの目的があるならいざしらず、アウトローだからそれも無理だろうし。。

謎を残し、ではまた

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