『ロシアン・ルーレット』(2010) - 13 –

死刑か、私刑を兼ねているのか。なんとも残忍で後味の悪い賭博ゲーム

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■ロシアン・ルーレット - 13 -■
2010年/アメリカ/97分
監督:ゲラ・バブルアニ
原作:ゲラ・バブルアニ
脚本:ゲラ・バブルアニ、グレッグ・プルス
製作:リック・シュウォーツ、ヴァレリオ・モラビート
製作総指揮:ジャネット・ビュアリング他
音楽:マルコ・ベルトラミ、バック・サンダース
撮影:マイケル・マクドノー
出演:
サム・ライリー(ヴィンス・フェロー)
ジェイソン・ステイサム(ジャスパー・バッジェス)
ミッキー・ローク(パトリック・ジェファーソン)
レイ・ウィンストン(ロナルド・リン・バッジェス)
マイケル・シャノン(ヘンリー)
ベン・ギャザラ(シュレンドルフ)
デヴィッド・ザヤス(ラリー・ミューレン警部)
アレクサンダー・スカルスガルド(ジャック)
カーティス・“50セント”・ジャクソン(ジミー)

解説:
ひょんなことから集団ロシアン・ルーレットに参加することになった青年。その命懸けの苦闘を描く、戦慄のサスペンス。カルトな映画「13/ザメッティ」を米国でリメイク。 (WOWOW)

あらすじ:
13_11オハイオ州タルボット。家族と住む電気技師の青年ヴィンスは、父親の事故による多額の入院治療費に困っていた。両親が長年真面目に働いてローンを払ってきた家を担保にお金を借りるが、生活は厳しく先行きの見通しも立たない。
そんな時、ひょんなことから1日で大金を稼げる仕事があることを知る。
指示を受けニューヨークへ向かうヴィンス。途中で移動に手を貸す銃を持った高圧的な男達。目的地は郊外の大きな屋敷だった。
身の危険を感じ抜けたいと伝えたヴィンスだったが、時すでに遅く、賭博「ロシアン・ルーレット」の始まりは告げられてしまった-


本作は、ゲラ・バブルアニ監督が自身の監督作『13/ザメッティ(2005/フランス)』をハリウッドでリメイクしたもの。設定や映像表現を変えてはいるが、基本的なストーリーはそのままだ。
13/ザメッティ』は、グルジア出身のゲラ・バブルアニ監督の長編処女作で、2005年ヴェネチア国際映画祭最優秀新人監督賞ほか数々の映画賞に輝いている。

リメイクの原題が『13』であるのに、邦題を『ロシアン・ルーレット』としたのは、何とももったいない。。
1作目『13/ザメッティ』や『13F(1999)』というタイトルがよく似たSF映画もあるのでこうなったのかは分からないが、本作は賭博ロシアン・ルーレットを描いた作品なのではなく、あくまでも、この賭博に関わることになってしまった者の人間ドラマ、群像劇だ。
自分は『13/ザメッティ』を未見だったので、『ロシアン・ルーレット』にジェイソン・ステイサムと聞いて、またまた派手なハリウッド映画か、と大きな勘違いをしていたじゃないか
それでも観てみたのは、ミッキー・ロークが出ていたのと、やはり「ロシアン・ルーレット」というのに惹かれて。。え、、、

本作は群像劇でありますので、多彩な人々が登場する。
主役とも言えるのは、父親の入院で急に大金が必要になったヴィンス
13_03真面目な両親と姉妹がいる電気技師の青年。
彼も真面目に仕事をし、両親や小さな妹を大事にしている優しい青年だ。急に必要になった大金に出来るだけの事はするつもりでいるが、このままでは両親の大事な家を銀行にとられてしまうかもしれないと心配している。とはいえ、道ばたに大金が落ちているわけでもなく、目の前の仕事をこなし経験を積み、給料をあげてもらうしかないと地道に考えていた。
が、そこに1日で大金が入る仕事の話が。そして、その仕事が目の前にぶら下がった時、彼は思わず掴んでしまう。全ては家族のためだった。危険かもしれないと分かっていながら、仕事の指示書が入った封筒を手にした時、彼の人生は見たこともない奈落の底へ-。

演じたのはイギリスの俳優サム・ライリー。すごく似てるんです、若い頃のL.ディカプリオに。今までも『ファニーゲーム U.S.A.(2007)』マイケル・ピットは似ているぞと思っていたけど、上をいきました。きっとこう思っている人はたくさんいるでしょう。同時代に大御所に似ているということは、大変だろうなぁ、などと彼が出てくるたび、というよりずっと出ているんだけど考えてしまって、雑念が。
マット・デイモンも最初の頃は似ていると言われていましたね。でも彼はきちんと自分の道を切り開きました。サム・ライリーよ、がんばれ。

メキシコで強盗をやり捕まったパトリック
13_20メキシコで牢屋に入れられていたパトリック。どんなに拷問されても盗んだお宝の隠し場所をしゃべらなかった。これ以上、拷問しても金にならないとふんだ刑務所所長。なんと恐ろしい賭博ロシアン・ルーレットのプレイヤーに売り飛ばされた。次々倒れるプレイヤー達。はたして彼は生き残れるか

我らがミッキー・ローク。昔から大ファン。昔というのは『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン(1985)』、『ナインハーフ(1985)』、『エンゼル・ハート(1987)』の作品の頃から。しばらくしてあまり見ないな、と思っていたら『ドミノ(2005)』にごついゴリラのような人が。ファンだというのにボクシングをやっていたとは知らずにいた。
あの泣き顔が似合う優男のあまりにもの変貌ぶりに最初はどうしようかと思ったが、最近は気分も落ち着き、彼が出ている作品は必ず観るようにしている。
2008年の『レスラー -The Wrestler』では彼自身の人生が重ね合わされているとも言われ、各種の賞を受賞している。ある授賞式にだらしない格好で参加し、受賞した壇上では下品な言葉遣いをしたミッキー・ローク。社会人として褒められたことではないが、その様子にシャイであまのじゃくなミッキー・ロークを感じることが出来る。今後も変わらない活躍を願っています。

プレイヤーに兄を出す賭博師ジャスパー
13_15数百万ドルをたずさえて参加するこの賭博ロシアン・ルーレット。
プレイヤーのオーナーとも言える立場にあるジャスパーは、プレイヤーに兄を使う。かつて3度の開催を生き抜いた兄ロン。「経験があるから、うちのプレイヤーは強い」とか言っているが、このロシアン・ルーレットに経験も何も無いのではないか?
兄は精神を病んでおり入院中、という以外、この兄弟の詳細は分からない。分かっているのは、この賭博で3度勝ち抜き、多額の儲けが出た。そしてそれを管理しているのは弟のジャスパーということだけだ。
兄は弟に言う。「これが終わったら、自由にさせてもらうからな。金もちゃんともらうぞ。」
これを聞いている弟の微妙な表情。何を考えているのか。

久しぶりにアクションではないジェイソン・ステイサム。過去の出演作の中で一番好きな作品は『スナッチ(2000)』だ。この人は表情だけで充分演技できる俳優だと思う。今後もそれをいかした作品に出演して欲しいな。

兄ロナルドにレイ・ウィンストン
13_08ベオウルフ/呪われし勇者(2007)』のベオウルフ役の人。
ロンドンのハックニー出身。11歳よりボクシングを始め、アマチュアボクサーとして80回以上優勝した。その後演技を学び、1977年にテレビシリーズ”Scum”の主演でデビュー。
出演作に『チューブ・テイルズ(1999)』『キング・アーサー(2004)』『ディパーテッド(2006)』『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々(2010)』などがある。

他にも日頃の考え方や、生き様が垣間見える登場人物達が

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ヴィンスのお目付役ジャック
鋭い目つきの監視役兼セコンド役。最初の印象とは反対にヴィンスに人間らしく接しようとするが、この状況のヴィンスにとっては「だからどうした」としか思えない。
アレクサンダー・スカルスガルドは『バトルシップ(2012)』で主役のお兄さん役を演じた人だ。本作のジャックの方が断然印象に残る役柄だった。ラース・フォン・トリアー監督『メランコリア』にも出演している。夏にセル化するので楽しみだ。
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賭博の進行役ヘンリー
高い位置からプレイヤーを見下ろし、自身の合図によりプレイヤー達は引き金を引く。こんなイヤな仕事は無いだろうが、たんたんと有無を言わさず進行させていく。
演じたのはマイケル・シャノン。最近見かけたのはマーティン・スコセッシ監督の禁酒法時代ドラマ「ボードウォーク・エンパイア (Boardwalk Empire)」。一癖ある重めの役がうまい。

13_12 ヴィンスのオーナー(ロナルド・ガットマン)
13_13 シュレンドルフ(ベン・ギャザラ)
13_19 ジミー(カーティス・”50セント”・ジャクソン)
13_09 タクシー運転手(フォレスト・グリフィン)
13_06 ミューレン警部(デイヴィッド・ザヤス)


プレイヤー達がどんな罪を犯したのかは知らないが、人の命で賭け事をするとは、なんとも残忍で死刑にも匹敵する行いだ。見ているこちら側にとっても非常に後味が悪く、思わず『8mm(1999)』『ホステル(2005)』などを思い出した。それら2作と同じように、この作品でもさらに後味の悪~い結末が待っている。
映画の中の「ロシアン・ルーレット」で、あくまでも作り事で楽しめると思ったら大間違い。
これから観賞しようとされている方。お気を付け下さい。

ではまた

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