『グランド・ブダペスト・ホテル』(2013) - The Grand Budapest Hotel –

可愛い色使いで全てのシーンはばっちり構図が決められ、その中で大勢の登場人物達が人形のように芝居をする。まるで分厚目の絵本を見ているような話題のユーモラスな作品だが、その実、コメディをシリアスに置き換えると非常に怖いサスペンスドラマになる。オススメの副題は「ロビーボーイと愉快な詐欺師たち」とでも

the-grand-budapest-hotel_movie2013_02-2-c
■ グランド・ブダペスト・ホテル - The Grand Budapest Hotel – ■
2013年/ドイツ・イギリス/100分
監督・脚本:ウェス・アンダーソン
製作:ウェス・アンダーソン 他
製作総指揮:モリー・クーパー 他
撮影:ロバート・イェーマン
音楽: アレクサンドル・デスプラ

 
出演:
レイフ・ファインズ(ムッシュ・グスタヴ・H)
F・マーリー・エイブラハム(ミスター・ムスタファ)
マチュー・アマルリック(セルジュ・X)
エイドリアン・ブロディ(ドミトリー)
ウィレム・デフォー(ジョプリング)
ジェフ・ゴールドブラム(コヴァックス)
ハーヴェイ・カイテル(ルートヴィヒ)
ジュード・ロウ(若き日の作家)
ビル・マーレイ(ムッシュ・アイヴァン)
エドワード・ノートン(ヘンケルス)
シアーシャ・ローナン(アガサ)
ティルダ・スウィントン(マダム・D)
トム・ウィルキンソン(作家)
オーウェン・ウィルソン(ムッシュ・チャック)
トニー・レヴォロリ(ゼロ)

解説:
「ライフ・アクアティック」「ムーンライズ・キングダム」のウェス・アンダーソン監督が、レイフ・ファインズ、エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、ジュード・ロウはじめ豪華キャストを迎えて贈る群像ミステリー・コメディ。ヨーロッパの一流ホテルを舞台に、とある常連客をめぐる殺人事件とその遺産争いに巻き込まれた“伝説のコンシェルジュ”グスタヴ・Hとその忠実なるベルボーイ、ゼロ・ムスタファが、自らの誇りとホテルの威信を懸けて事件を解明すべく繰り広げる大冒険の行方をユーモラスに描く。

あらすじ:
1932年。グランド・ブダペスト・ホテルは、“伝説のコンシェルジュ”と呼ばれるグスタヴ・Hの完璧なおもてなしが評判で、彼目当てのエレガントな客で溢れかえるヨーロッパ随一の超高級ホテル。そこでベルボーイ見習いとして働くことになったのが移民の少年ゼロ・ムスタファ。グスタヴの指示を忠実にこなし、少しずつ信頼を獲得していく。そんなある日、グスタヴと懇意の間柄だった富豪の常連客マダムDが殺害され、遺言で名画“少年と林檎”がグスタヴに贈られることに。しかしグスタヴには殺人の嫌疑がかけられ、おまけに絵を取り戻そうとマダムDの息子ドミトリーの刺客も迫ってくる。そんな中、グスタヴとゼロはコンシェルジュ仲間やゼロの婚約者アガサの力を借りて逃亡を続けつつ、事件の謎を解明すべくヨーロッパ中を駆け巡るのだったが ―
(allcinema)


 詳しい解説やあらすじは上 icon-arrow-up を参照頂くとして、、
これは欧州のある国に移民として移り住み、由緒正しきホテルで働くことになったロビー・ボーイが、時代の移り変わりをつぶさに目撃する物語。彼の名前が“ゼロ”というのも面白く、“何も持たない”ことや“ゼロからの出発”などなど、意味合いはとてもポジティブだ。人間、守るものが無い時こそが自由であり、見通しよく目の前が開けているもんだからネ…
the-grand-budapest-hotel_movie2013_11-2-c
この慣れない国で彼が見たものは、大きなホテルのジゴロのような嫌味で気取り屋コンシェルジュや、ジゴロに群がる金持ち婦人達、同性愛差別、醜い相続争いと殺人事件、絵画泥棒、子飼いの殺人鬼、革命・戦争という名の暴力と殺人などなど、恐ろしいことばかり。
けれどこれらの忌むべき事象は、“ゼロ”の目を通して裏側から見るとまた違った側面を見せる。

コンシェルジュのジゴロ稼業は、独立した個人的な仕事なのではなく、あくまでも寂しいご婦人達へのサービスの一環なのである。あくまでもコンシェルジュの仕事の延長線上にあり、心から喜んでいるご婦人方の様子から、ゼロはコンシェルジュの行動を認める。必要なことなんだ、と。

そんな中、一番懇意にしていた貴婦人が急死。これが殺人疑惑と遺産争いに進んでいく。戦々恐々としている金持ち一族を横目に、自分に遺されたお高い絵画をササッと持っていく場面はコミカルな犯罪場面でありながら、ややこしい手続きや関係無い人達の憎しみのこもった視線を避けたシンプルな入手法でもある。
GRAND BUDAPEST HOTEL_426.jpg
この絵をさっさとお金に換えちゃったりしたらコンシェルジュを信頼出来なくなるけれど、この高価で貴重な絵画は数十年経った今でもこのホテルに掛けられている。

ところで、この遺産に狂った貴婦人の息子( icon-arrow-up 中央)エイドリアン・ブロディはホントにイヤらしくて存在自体が可笑しかったが、その左横。何か他のホラー映画で見かけたような目つきの悪いこの男はブロディ子飼いの殺人鬼ウィレム・デフォー。こんな役のウィレム・デフォーを久し振りに見た気がしてとても楽しかった。
ご主人様の命に従って粛々と任務をこなす殺人鬼ウィレム。ラスト近くでバチが当たるのだが、この殺人鬼の最期はいかにもあっさりしており、アニメの悪役のようだ(例えばミッキーマウスに出てくるピート)。

コミカルと言えば他にも
the-grand-budapest-hotel_movie2013_29-2 the-grand-budapest-hotel_movie2013_33-2
重要な貴婦人役と刑務所の顔役にも。あと
the-grand-budapest-hotel_movie2013_28-2

彼らは他の一般作に出ていれば、アクの強い嫌らしい悪い奴らではあるのだけれど、この絵本映画ではどこまでも真面目にユーモラスに描かれている。

the-grand-budapest-hotel_movie2013_25こんな彼らに翻弄されながらも持ち前のコンシェルジュ気質をいかして前に進んでいくコンシェルジュとゼロ。ゼロはコンシェルジュとしての全てを彼から受け継ぎ、素敵な奥様もゲットするが、時代はゼロに容赦なかった。
ゼロが「ゼロ」で無くなった時、彼の人生は決まった。この大きなお荷物「グランド・ブダペスト・ホテル」を死ぬまで面倒みずにはいられなくなったのだ。
持つ者と持たざる者。どちらが、いいものなのか・・・