『冷たい熱帯魚』(2010/日本) - Cold Fish –

この素晴らしき世界

 

冷たい熱帯魚_00
■ 冷たい熱帯魚 – Cold Fish – ■
2010年/日本/146分
監督:園 子温(その しおん)
脚本:園 子温
製作:杉原晃史 他
音楽:原田智英
撮影:木村信也
出演:
吹越 満(社本信行)
でんでん(村田幸雄)
黒沢あすか(村田愛子)
神楽坂 恵(社本妙子)
梶原ひかり(社本美津子)
渡辺 哲(筒井高康)
諏訪太朗(吉田アキオ)

解説:
本作はその衝撃度からR-18指定ではあるが、逆に18歳以上だからこそ観ることが出来る「真の大人の映画」であり、久しく日本映画が忘れかけていた映画愛がここにある。監督自ら最高傑作と称しているこの猛毒エンターテインメント。観る者がどのように受け止めるか? 是か非か?
本作は鬼才・園子温の金字塔作品であると同時に、間違いなく2011年最初にしてNo.1の問題作である。
 

(公式サイトより)

あらすじ:
富士山の見える小さな町で小さな熱帯魚店を営む社本信行(しゃもと のぶゆき)。妻は3年前に病没し若い嫁を迎えたが、年頃の娘、美津子と折り合いが悪い。美津子は悪い仲間と外をうろつき、とうとうスーパーで万引きをして捕まってしまう。警察に突き出されそうになったところを、たまたまその場に居合わせたスーパー店長の知り合い、村田幸雄(ゆきお)がその場を納めてくれた。
地元で大きな熱帯魚店を営む村田。社本に同情した村田は、同業者のよしみから自分の店で美津子を預かり、仕事をさせながら立ち直らせてやろうと社本に持ちかける-

 


 
初めての邦画レビュー。
この作品を観終わって最初の一言-。  「えらいもん観てしもたぁ
 
いつもお邪魔させて頂いているalai Lamaさんのブログで園子温監督作『自殺サークル』をレビューされていて、自分も観たいと探していたが、なかなかレンタル出来ず。で、代わりに借りたのが本作『冷たい熱帯魚』。
なぜこれを選んだか。熱帯魚を飼っている変な女の子の話かなと勝手に推測し、自分も熱帯魚を飼っているからと(ハハ
 
洋画ホラーは大好きでよく観るのだけども、邦画は『女優霊』や『黒い家』以降苦手で避けて通っていた自分。
(「ほん○にあった呪いのビデオ」なんかは全巻観てるんだけど)
いつの間にか邦画ホラーもここまで来てたんですね。
 
よく言われることだけど、洋画のホラーはどんなにえげつなくてもエンターティメントとして、作り物として楽しめる。それが例え実際の事件に基づいているものだとしても。
でも邦画は違う。当たり前だが日本が、日本人が設定なのでとても身近に感じられ、まるで近くで、隣の家で、自分の家で起こっている出来事のように感じられ、日本独特のジメっと感もあいまって怖い
 
特に本作は実際にあった事件「埼玉愛犬家連続殺人事件」をベースにしており身近すぎる上に、こてこてのスプラッターで味付け。あ、違う。味付けではない。遺体の処理方法などは実際の事件とほぼ同じと思われるので、このスプラッター部分も一部はホントにあったこと。とても同じ人間の所行とは思えない
 
 
前置きはこのぐらいにして、登場人物について想像できる範囲でお話を。(ためになる付き)
熱帯魚店主 社本 信行
冷たい熱帯魚_01メガネをかけた大人しい、日本でよく見かけるタイプ。
最初の妻が病気で亡くなり、ややこしい年頃の娘がいるというのに若い後妻を迎える度胸はある。事なかれ主義の典型で、目の前の問題は見て見ぬふり。娘が万引きしてスーパーに呼びつけられるも自分が頭を下げるばかりで、娘に一言もしからないばかりか、娘自身に謝らせることもしない。ここで自分は「」っと思いましたね。
この様子を見ていた村田。いつ社本を取り込もうと思いついたのかは分からないけれど、これらの態度が決め手になったのは間違いないはず。親として、大人としてあまりに無責任で逃げ腰過ぎる。隣で一緒に頭を下げている嫁も、なんとか言えばいいのに。この作品で一番いらいらしたのは、このシーンかも。
がしかし、だからといって他人に何をされてもいいわけでは無い。嫁と娘に大事なことはなかなか言えないけれど、真面目に熱帯魚店を経営して働いている。その気持ちを理解してフォローしてくれる人さえ周りにいればいいわけだし。
その人が社本にとって村田だったのかもしれない。言いたいことをどんどん代わりに言ってくれて、ぐいぐい引っ張ってくれる。引っ張られる方向さえ間違ってなければよかったけれど…。
社本のもう一つの趣味「天体観測」。プラネタリウムで両脇に嫁と娘を座らせて、二人に「この生活も、今の状態も、何もかも、大好き!」と幸せ感一杯に言われる様子を妄想する。この作品で一番悲しいシーンだった。

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大型熱帯魚店主 村田 幸雄
冷たい熱帯魚_03話題が豊富で、面白おかしくよくしゃべる下町のおじさん風。親父ギャグを連発するも憎めない。「ユキオちゃんに何でも相談してよぉ。」と懐が大きな所も。
がしかし、一皮むけばそれは、人の考え方を素早く見抜き、考えていることを素早くキャッチ。弱点をあっという間に手に入れる。包容力のある大人にも甘え上手な子供にも自由に変身することが出来る。恫喝だろうが、泣き落としだろうが、相手と時と場所によって自由に使い分ける事が出来る。ようするに詐欺師だ。
ただの詐欺師だけならば、盗まれるのはお金だけだろうが、この人は新種の連続殺人鬼でもある。
人を殺すことを「透明にする」と表現し、遺体さえなければ殺人事件として立件できないと、徹底的に遺体を処理。このあたりは実際の事件の犯人と同様に描かれている。
しかし例え遺体がないとしても、天涯孤独な人を選んで殺しているわけでもなく、周りで何人も行方不明者が出れば警察に目を付けられると思うんだけど、実際、この犯人はそこの所はどう考えていたんだろうか。自信とプライドで出来ているような人だから、絶対大丈夫と考えていたんだろうか。
確か、この「埼玉愛犬家連続殺人事件」の他にも同じような事件で不動産がらみのものがあったはず。そっちも同じようにいい人で信頼されていて、その立場を利用し騙してお金を奪い最後には殺す。ただこちらは遺体は埋めていただけなようだが。
アメリカなんかの連続殺人鬼は基本、被害者は見ず知らずの人を選ぶ。こういうタイプの殺人鬼は白人に多いとされている。日本では宮﨑勉がこのタイプだそうだ。
日本ではお金が絡んだ、この村田のようなパターンがちょこちょこありますね。気をつけて下さい。

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村田 愛子
冷たい熱帯魚_05村田の妻。すごく色っぽい。それもこの女の武器だ。
実際の事件でもそうだが、ほとんどの事に関与し、遺体の処理も料理のようにやってのける。
ホントにこんな人がいたのかと信じられないが、、いたんでしょう。
夫婦やカップルで一緒になって殺人を繰り返す事件は、アメリカでは有名なものが数件ある。日本ではあまり聞きませんが、有名なのはカレー事件かな。これも保険金がらみなのでお金ですね。
相方である女の方もいい人を装い、足りない部分は色気でカバー。夫のユキオちゃんよりも妻であるこの女に、より狂気を与えた演出となっております。怖いですよ。

 icon-arrow-right  色仕掛けに惑わされるな



社本 妙子
冷たい熱帯魚_04社本の妻。夫の仕事を支えるいい妻のようだが、料理は全て冷凍で、○○もするし、ちょっと分からない位置づけ。義理の娘に思い切り嫌われており苦労しているが、堪えているようだ。
もう少し台詞があればよかったけれど。
 

 icon-arrow-right  場の雰囲気に流されるな



社本 美津子
冷たい熱帯魚_02社本の娘。口が悪く暴力も平気。食事中でも携帯命な今時の娘。
本作では全ての原因がこの娘にあると言ってもいいくらい。
 
言えるのは子供を持つということは大変だということ。
-後は何も語るまい。
 

 icon-arrow-right  足元を見て生きろ



 


 
本作はかなり流血騒ぎの非道いシーンがあるので、人に簡単には勧められない。
しかし、この実話ベースの狂気の人たちを演じたでんでん氏や黒沢あすかさん、吹越 満氏の演技がとても素晴らしく一見の価値はあると言いたい。あまりに狂気に満ちていて、とても現実とは思えないほどだ。
しかし、最後の最後に、本当のラスボスが出てくる。
ここで一気に赤い異世界から現実に引き戻され、うんざりすること間違いなし。
真の恐怖はこんな身近にあったのだ-。
 
ではまた