『内なる迷宮』(2012) - L’Etrange couleur des larmes de ton corps –

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iTunesで見つけた一応、ホラーに分類されている不思議・混乱型作品。作品冒頭から中盤にかけて観る者を翻弄する内容と仕掛けが用意されている。それを乗り越えた者だけがラストの種明かしを知ることが。観終わって調べてみると、現在進行形で開催されているインターネット映画祭「第5回マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル」出品作だった。

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■ 内なる迷宮 - L’Etrange couleur des larmes de ton corps – ■
2012年/フランス/97分
監督:エレーヌ・カッテ、ブルーノ・フォルザーニ
製作:エリック・ユエリアン 他
 
出演:
クラウス・タンゲ
ウルスラ・ベデナ
ジャン・ミッシェル・ウォフク
シルヴィヴァ・カマルダ
サム・ルーウィック

解説:
2015年開催【第5回マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル(myFFF)】コンペティション部門・長編作品に出品された不思議・難解系サスペンス・ホラー作品。監督は『ABC・オブ・デス』で“O”を担当したエレーヌ・カッテ。

 
あらすじ:
出張から戻り妻の失踪を知ったダン。混乱しながらも近所の住民に聞いて回り、警察に捜索願を出した彼だったが、真相に近付くにつれ深い闇がさらに彼を覆い始め ―


結果として、ストーリーそのものは簡単なお話なのだけど、その“結果”に行き着くまでが長い長い、分かりにくい、分かりにくい・・・。と言うより監督自身が別に分かってもらわなくていいよ、って考えているような感じ。
それは『ABC・オブ・デス』の“O”作品でもそうだった。確か台詞は一切無く、観念、情念、それも一切の「他」を捨て去り無視した、個人による個人のための「個人的な頭の中と瞑想」を表現していたように思う(題材は「Orgazm/オーガズム(絶頂)」)。
 
とにかく本作も冒頭から2/3はそんなモノで表現されている。
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舞台は古いアパルトマン。そこに住むある一人の男ダンが、居なくなった妻を捜し回るお話。登場人物はそう多くなく
・妻を探す男ダン
・8階の住人夫婦
・7階に住む色っぽい女ヴァルヴァラ
・刑事
・大家
・髭の男
こんなもん。
 
付けられた邦題からして一筋縄ではいかないのは予測されていたので、一生懸命妻を探している風の男ダンが、実は妻を殺していた、ぃや、実は最初から妻など居ない妄想話、それとも出張帰りの飛行機が落ちて、実はダンは死んでいた?・・・などなど、色々想像しながら妻を探すダンに付き合っていたのだが、、、
8階の夫婦の話になって、これは私ごときが想像できるようなものじゃ無いのでは・・・・と途方に暮れ始めた。
 
ダンはまずこの建物の住人に妻の所在を聞いて回る(この段階でダンは酒に飲まれて倒れる寸前になっていて、妻を心の底から心配しているようにも見える)。ほとんどが知らないと答える中、8階の奥さんが反応した。自分の夫も行方知れずになってしまった、と。
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でも、この奥さん、大体のことは分かっているはずなんだよねぇ。だって全部見ていたワケだし…。
 
次にダンが接触したのは全裸で屋上に佇む7階の住人女性。
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次々出てくる女性は年齢は様々だけども性的な誘惑に満ちあふれている。彼女らの登場時間も多く取られていて秘密めいているものの手に届く場所にいる女性にも見える。これらは事実か?
・・・違うんです。
 
L'étrange_couleur_des_larmes_de_ton_corps_17-2妻が居なくなり、酔っ払って目も当てられないダン。
この後、自宅には妻のことを聞きに刑事が訪れる。「奥さん、失踪したんですよね?」
いかにも胡散臭げで、まずは夫を疑うのはマニュアル通り。けれども、この刑事すらも訳の分からない行動をし始める。酒に酔ったような幻覚世界の中で、何度も鳴るベルに応答する全裸のダン。
「お前の後ろに誰かがいるぞ、お前を殺そうとしているぞ」
後ずさると、そこには血まみれの自分の姿が。そしてベルが鳴る。同じ事が繰り返され、部屋の暗がりにはナイフを持って震える自分の姿。倒れているのも、ベルを鳴らしているのも、応答しているのも全て自分だ。
 
ぅわぁーーーっと叫びだしたところを、肩を大きく揺すられ起こされた。
そこは警察の取調室。妻の頭部が見つかったと説明を受けていたのだった。
 
 
はい、ここまでが2/3。
L'étrange_couleur_des_larmes_de_ton_corps_15-2ここまでは登場人物たちの「心の内なる迷宮」が次から次への繰り出されてきた。映像化されているほとんどは、誰かの(ほとんどはダン)希望だったり、妄想だったりする。
そしてここからは、今度は「建物の内なる迷宮」が主人公となる。ようやく目の覚めたダンが妻を殺した犯人を捜し、追い詰めていこうとし、刑事も職務を果たそうと動き出す。
ここからはサスペンス・スリラーとなって、俄然分かりやすい普通のお話に。そりゃもう、前半必要だったんですか?って聞きたくなるくらい・・・
 
全ての発端はここに
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ルームナンバーの“7”がひっくり返って“L”に見えるこの部屋。
この部屋に隠されているのは、少年がまだ幼い頃に大人の女性にそうとは分からずに抱く性的な憧れの気持ち。この“気持ち”を忘れられないまま、消化できないまま大人になった男が犯人だ(ズバリ)!が、しかし消化した後もくすぶり続けるのが男っていうもんだ、というのを証明したのが作品前半の混乱ぶりだ。それぞれの昔の想い出が妄想の中に少しずつ組み込まれているのが可愛らしい。
 
犯人の餌食となった者は性別に関わらず、犯人にとっては操りやすい個人的な秘密を抱えていた。その秘密は罪というようなものでは無かったけれど、本人にとっては大事な事柄であり、そこをうまく付け入られたとも言える。
犯人はねぇ・・・ 頭の光ったあの人だと思うんだナ・・・


 
この作品をきっかけに知ることになったオンライン映画祭【マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル(myFFF)】。フランス映画に特化したこの映画祭は今年は5回目で、コンペティション部門長編10作品、短編10作品、その他4作品が上映。長編は200円~約300円、短編は無料で公開されている。
公式サイト 第5回マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル(myFFF)】
 
長編はオンラインレンタルという形で公式サイト、YouTube、iTunes Storeなどで視聴可能。料金は少しずつ違うみたいで本作『内なる迷宮』の場合、公式271円、YouTube220円、iTunes200円でした(2015.1.18現在)。
興味がありましたらぜひ。