『ルームズ・フォー・ツーリスト』(2004) - Habitaciones para turistas –

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アルゼンチンのモノクロ・スプラッターという異色映画。モノクロホラーと言って思い出すのが『ムカデ人間2』だけど、独特の古いフィルムのような世界観が似ているとはいえ、方向性は全く違う。こちらはノスタルジックな雰囲気漂う中での精神崩壊、ナタぶった切り系で、かつ不思議ファイト系でもある。
 
■ルームズ・フォー・ツーリスト - Habitaciones para turistas -■

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2004年/アルゼンチン・メキシコ/92分
監督・脚本:アドリアン・ガルシア・ボグリアーノ
撮影:ベロニカ・パドロン
音楽:ロドリゴ・フランコ

出演:

ヒメナ・クロウコ
マリエラ・ムヒカ
エレナ・シリット
ブレンダ・ベラ
ビクトリア・ビテンブルグ
 

解説:
アルゼンチンホラーの鬼才、アドリアン・ガルシア・ボグリアーノ監督の出世作となったスプラッターホラー。
(キネマ旬報社)

あらすじ:
都会から地方へ向かっていた見ず知らずの女子達が乗り継ぎがうまくいかずに、ある小さな町で一晩足止めに。町の人の親切から町外れのホステルに宿泊することになった彼女たち。だが、夕食後、それぞれ部屋に戻り眠ろうとした時に突然、一人の女の子の部屋から大きな悲鳴が―

英題:Rooms For Tourists


Habitaciones_para_turistas_13とにかく、すごく変わってる。
ホラーでありながらモノクロ作品という事にまず驚き、ざらついていたり、わざと一部をにじませたような絵作りやコマ落ちしたような運びが古いフィルム映画のよう。舞台は田舎を走るバスで始まり、お互い見ず知らずの女子達が乗り継ぎのため降り立った地は地方の小さな町らしく、電車が1日1本というような場所。
そう言えば彼女らは携帯も持っていなかった。いつの時代のお話なのかと混乱させられる。
 
Habitaciones_para_turistas_16大体彼女ら5人からしてそれぞれワケがあるらしく、やっぱり少し変わっている。
皆が皆、およそ快活、明朗、おしゃべり好きとは程遠く、特に(強いて言えば)主役テーダは、いつもオドオド、ビクビクしていて落ち着きが無く、眠りにつくと必ず悪夢を見てしまう、精神的に不安定な娘。他にも我儘そうな娘や我関せず型娘などが揃っていて、纏まりがない。たまたま行き先が同方向だったという5人だから仕方が無いのだが。
 
そんな彼女たちがバスを降りた小さな町サン・ラモン。都会暮らしの彼女たちが翌朝の電車が来るまでホステルに宿泊することになる。大きな屋敷を持つ兄弟が経営している町外れのホステルだが、どう見ても客で賑わっているとは思えない。親切な駅員のおじいさんに勧められホステル行きの車に乗り込んでみたものの、あまりの遠さに不安になる5人。だが着いてみると立派な屋敷でそう悪くはないのであった。
 
Habitaciones_para_turistas_19・・が、、
皆がそれぞれの個室でなかなか眠りにつけずにいる、ちょうどその時、館内に突然響き渡る女性の叫び声
部屋から飛び出してきた娘達は、ただ一人姿の見えない娘の部屋へ飛び込むが、夥しい大量の血痕が残されているのみ。
 
彼女が殺されたと分かり慌てた彼女らはオーナー兄弟に報告しようとするが、ぃゃ!オーナー自体が犯人では?と話が纏まり脱出しようと動き出す。しかし外への扉、窓という窓は外側から鍵をかけられ、あるいは何かで打ち付けられ、簡単には脱出不可能になった事を知る。
電気も切られ、真っ暗闇になった広い館内をライターの火を頼りに進む娘4人。しかし恐怖の魔の手は後ろからこっそりと、一人また一人と捕らえていくのだった ―


 
「ホラー映画」くらいの認識で観始めたものだから、絵の雰囲気や音からどういう作品なのかと掴みきれないまま、ここまで観ていた。けれどもこの独特の雰囲気、時たま挿入されるテーダの妄想や恐怖の表情にイライラ感と同時に何故か惹き付けられる。なんて言うか、、リンチ作品とも違うし、、そうそう!アレだ。
 
umezu_kazuo楳図かずお氏のホラー作品の雰囲気なのだ。
モノクロで、可愛らしいはずの少女の怖い叫び顔(今見てもイヤな気持ちになる)。
この作品の娘達も決して可愛く、美しくは撮られていない。光の加減と方向、モノクロをふんだんに効果的に使って、彼女たちの不安定で切羽詰まった極限状態を表現する。
 
合わせて、この映画はスプラッター・ホラー。
モノクロをいいことに、まるで料理でもしているかの如くザックザクとナタでぶった切る。腕、胴、顔・・・お構いなし..。
 
Habitaciones_para_turistas_12ここまでを纏めると「ワケあり5人娘がサイコキラー屋敷へ」てな感じだが、ここからの話のキモは誰が殺されるか?(気になるほど、誰にも感情移入できていない)ではなく、誰が生き残るのか?(理由同じ)、誰が犯人か?(唐突に現れるから、愛着心が沸かない)でもない。
それはその理由だった。
オープニングの不気味な映像がここに繋がり、この町の偏った宗教観が露呈する、殺人の一方的な理由
 
けれどもソレを知った時、被害者である彼女らに対する自分の見る目が変わるのが分かる・・・。人となりが分かりにくくて勝手に想像し組み立てていた彼女たちの背景がふにゃっと崩れ落ちるのだ。登場する人物がもれなくどこかオカシイ中で、なんとかコチラ側だと思おうとしていた彼女たちに裏切られた感じがするのだ。一方的な偏った考えで。
― 彼女らの事情も知らないというのに
 

監督 アドリアン・ガルシア・ボグリアーノ
■主な作品
・ルームズ・フォー・ツーリスト (2004)
スクリーム・アット・ナイト (2005)
36 PASOS (2006)
ザ・ヘル ネクストステージ (2008)
・NITRO ニトロ (2010)
ABC・オブ・デス (2012)