『ビザンチウム』(2012) - Byzantium –

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肉感的な美女ジェマ・アータートンと“儚い”を絵に描いたようなシアーシャ・ローナン主演のヴァンパイア映画。長く延びた歯で噛む派手な吸血シーンはあまり前面に出てこない。それよりも、生きる意味を考え、生き抜く力を身につけていく様子を静かにパワフルに描く。
 

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■ビザンチウム – Byzantium -■
2012年/イギリス・アイルランド/118分
監督:ニール・ジョーダン
脚本:モイラ・バフィーニ
原作:モイラ・バフィーニ
製作:スティーヴン・ウーリー 他
製作総指揮:マーク・C・マニュエル 他
撮影:ショーン・ボビット
音楽:ハビエル・ナバレテ

出演:
シアーシャ・ローナン(エレノア)
ジェマ・アータートン(クララ)
サム・ライリー(ダーヴェル)
ジョニー・リー・ミラー(ルヴェン)
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ(フランク)
ダニエル・メイズ(ノエル)
トム・ホランダー(ケヴィン)

解説:
「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」のニール・ジョーダン監督が、「007/慰めの報酬」のジェマ・アータートンと「ハンナ」のシアーシャ・ローナンを主演に迎え、過酷な宿命を背負うふたりの美女の悲痛な運命をセクシーかつスタイリッシュに描き出したヴァンパイア・ストーリー。共演はサム・ライリー、ジョニー・リー・ミラー、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ。(allcinema)
 
あらすじ:
誰にも明かせない秘密を抱える16歳の少女エレノアと年上のクララ。寂れた海辺のリゾート地に現れた彼女らは廃業したホテルに住み着く。孤独なエレノアは地元の若者フランクと出会い心を通わせ始めていたが、彼女らには命を狙う追っ手が迫っていた ―


Byzantium_2124歳のクララと16歳のエレノア。
かつて娼館に売られたクララは、生活を支えるため現在も性風俗で稼ぐ身。彼女が保護するエレノアは一人静かに過去の記憶を書き留め、破り捨てては、また書き留める。そうやって2人は200年もの間、町を転々として生きてきた。
そんな2人が今回訪れたのは寂れた海辺のリゾート地。ここでクララはノエルと、エレノアはフランクと出会う。
 
ノエルの好意で彼の持つ元ホテルに住み着いた2人。クララはここを娼館にする計画を立て、孤独なエレノアは、血液の病気を持ち同じく孤独なフランクと心を通わせていく。
Byzantium_26だが、2人はヴァンパイア。自分たちの秘密を決して口外しないことが鉄則だ。が、エレノアは真実をフランクに打ち明けたい衝動にかられる。自分の生きた証を、自分の記憶を、破り捨てずに証明したい、残したいと願うようになったのだ。しかし真実を知った者はその命を奪わなければ、自身が滅びることになる。
 
2人の危機はこれだけでは無かった。
同じ種族の仲間が彼女たちを永遠に葬るため追ってくる。元は男性だけで構成されていたヴァンパイア属。彼女たちは異端であり迫害されていた。その上、追ってきた一人の男をクララが殺したために、追われる身となったのだった―
 

  

Byzantium_18ビザンチウム」とは、2人が住むことになったホテルの名前。由来は4世紀に分割された東ローマ帝国、またの名をビザンツ帝国の首都名から。今のイスタンブールにあたる。
なぜこの名がタイトルとなったのかは、作品内でヴァンパイア属が同じ仲間を葬る際に使う剣がその時代のもの(即ち、ヴァンパイアは当時からいたということなのか?)であることからのようだ。

クララとエレノアが滞在することになったこの町は、実は2人にとっては人間からヴァンパイアへと変身したルーツの場であり、歴史ある建物はかつてエレノアが暮らしていた場所であることも示唆される。この地でエレノアの古い記憶は鮮明となり、フランクと出会ったことで新しい人生を手に入れることを切望するようになる。
反対にクララはあまり未来に期待は無く、刹那的に生きているようにも見えるが、生き抜いていくという決意と力は非情に強い。
 
Byzantium_20他作品でもどちらかというと男尊女卑的なものが感じられるヴァンパイアだが、古の時から男性だけで構成されていた、とはっきり明示されたのは新しい解釈だ。新しいのはそれだけでは無く、このヴァンパイア達は太陽の光に当たっても大丈夫だし、鏡にも映る。ただし、他人の建物には招かれなくては入ることは出来ない。加えて人をヴァンパイアに変える力がある者は、この世にただ一人だけ。
 
男性ヴァンパイアがきちんとしたスーツに身を包み、まるで何かの秘密結社のような出で立ちであるのと反対に、女性の2人は時代に合った衣装を着て町を転々とし、自然の中で眠ることも出来る。女性達が異端であるかのように差別されるが、実は女性の方が自然と一体となり自由に生きているという描写も面白い。
Interview_with_the_Vampireそう言えば同監督の『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』でも、キルスティン・ダンスト扮する少女ヴァンパイアのクローディアが、母親代わりの女生と一緒に太陽の光で処刑されたのも、男性ヴァンパイアの指示だったですねー。
 
立場の弱い者、古いルールを打ち破り新しい何かを模索する者を、弾圧する勢力から独立させて自由を勝ち取らせる、というテーマは、この監督が好むものなのかな。
本作では女性2人が男性チームから自由になるばかりではなく、子供が保護者から独立し、自分の足で生きていくという点も言及されている。これは“親離れ”という側面と同時に“子離れ”ということでもあるのかな、と。
 
Byzantium_22けれども先の『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』では仲間から逃げ出したはずのルイが仲間を求めてさまよった事とは反対に、本作ではきちんとパートナーを準備したあたり、ルイよりは希望が持てて明るいラストである事には救われる。ま、どちらも原作があるから監督の意思だけではないんですけど。
 
最後に大病を患っているフランク役ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ。この人は『アンチヴァイラル』同様、具合の悪い役が上手すぎるゾ