『マニアック』(2012) - Maniac –

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ようやく観ることが。イライジャ・ウッドが悪人に扮するのは『シン・シティ』で驚き済みだったが、こちらもなかなかの出来映え。この映画は殺人鬼目線のシーンが多くて(POV風)彼の息づかいや独り言がまるで自分のもののように錯覚する作り。でも決してショッキング映像の羅列ではなく、どうして彼がこうなったのかという所も描く殺人鬼物語です。
 

Maniac_movie2012
■マニアック – Maniac -■
2012年/フランス・アメリカ/89分
監督:フランク・カルフン
脚本:アレクサンドル・アジャ 他
オリジナル脚本:ジョー・スピネル
製作:アレクサンドル・アジャ 他
製作総指揮:アントワーヌ・ドゥ・カゾット 他
撮影:マキシム・アレクサンドル
音楽:ロブ

出演:
イライジャ・ウッド(フランク)
ノラ・アルネゼデール(アンナ)
ジュヌヴィエーヴ・アレクサンドラ(ジェシカ)
リアーヌ・バラバン(ジュディ)
アメリカ・オリーヴォ(フランク母)
サミ・ロティビ(ジェイソン)

解説:
「ヒルズ・ハブ・アイズ」「ピラニア3D」のアレクサンドル・アジャが製作を務め、1980年のカルト・ホラー「マニアック」を、主演に「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのイライジャ・ウッドを迎えて完全リメイクした衝撃の猟奇バイオレンス・ホラー。マネキンしか愛せず、若い女性を襲ってはその頭皮を剥ぎ取る凶行を繰り返す猟奇殺人犯が、初めて生身の女性に恋心を抱いた末に辿る歪んだ欲望の行方を、ショッキングかつスタイリッシュな映像で鮮烈に描き出す。共演は「幸せはシャンソニア劇場から」のノラ・アルネゼデール。監督は「P2」のフランク・カルフン。(allcinema)
 
あらすじ:
ロサンジェルスでマネキン修復師として暮らす大人しい青年フランク。だが彼には連続殺人鬼としてのもう一つの顔があった。夜な夜な街を車で徘徊しては凶行に及ぶ彼は、被害者の頭皮を剥ぎ取り、自宅のマネキンに被せては悦に入るのだった。そんなある日、カメラマンのアンナと出会い、生まれて初めて生身の女性に恋心を持つが ―


Maniac_movie2012カルト作品のリメイクという点(未見だけど)にもとても興味があった本作。この映画は殺人鬼の凶行を第三者的な立場から見て楽しむ(怖がる)ゴアホラーとは違ってる(オリジナルはそんな感じらしい)。
冒頭、カメラは殺人鬼フランク目線で、車内から獲物を物色。めぼしい女性を見つけたら車でひっそりと後を追う。その女性に声をかける男がいようものなら、車の中でブツブツ言ってるんですよね、「それはお前のものじゃない、手を出すな」とかなんとかボソボソと。この女性は前から目をつけていたらしく自宅も知っている。そして先回り..。
 

一般的に快楽型の連続殺人鬼は獲物を追い詰め、じっくりと殺す過程を楽しむ。この過程は自分がその場の絶対的支配者であることを確信するための大事な儀式。この「全てを支配している」という事実には、幼少時の虐待の記憶や日頃の鬱憤を晴らす目的が。男性的不能な場合も多い連続殺人鬼にとっては、それが快楽を生むことになる。で、やめられなくなると。
(momorex的雑学より 詳しくは『アフターライフ』連続殺人鬼とは!?へ)

 
Maniac_movie2012だが、この映画の連続殺人鬼フランクは“殺人”そのものに快楽を覚えるタイプでは無い。被害者を追い詰める時も合理的で無駄が無く、サクリと殺す。では何が彼に快楽を与えるのか。
映画内での最初の被害者女性を会って2秒で殺したのにもビックリしたが、その後、身体から抜いた大きなサバイバルナイフを髪に当てた時には、あー、この人は“髪”を記念品にするタイプなのかーと見ていたら・・・額の生え際から頭皮もろともザクザクって剥ぎ取りました この間、カメラはフランクの目線。目の前でこの凶行が行われる。
この剥ぎ取り場面は何度も出てくるが、全て白っぽくふわぁっとぼかされており、よく見えない。ただ見えないことで、単なるゴアホラーじゃ無いことが、より明確になった気がする。映画本来の方向性は分からないが、このぼやけたシーンがフランクの虚ろでフラフラで孤独な様子を表わす手助けになっていると。
Maniac_movie2012 一応置いときますねー、小さく。
 
Maniac_movie2012で、この剥ぎ取った髪付きの頭皮、というより頭皮付きの髪。これが彼に快楽をもたらす。と言ってもこれを彼が被るのではなく、被せるのは彼の恋人達である大事なマネキンだ。髪を被せ被害者の衣服を着せたマネキンは、その時に初めて命を持ち、彼の帰りを待ち、彼に語りかけ、夜が明けるまで彼の大事な恋人となり家族となる。
 
― 何故「髪」なのか。
それは亡くなった母親アンジェラの存在。豊かな髪をした美しい母親。だがその実態は、父親亡き後、まるで娼婦のように毎晩男を家に引っ張り込む女。その都度、狭いクローゼットに押し込められたフランクだったが、彼は情事の全てを見ていた。暗いクローゼットの中から、目を大きく見開いたまま・・。
 
Maniac_movie2012これがトラウマとなったフランクは、女性を殺すことで淫乱な母親を消し去り、同時に大好きだった母親の豊かな髪を被害者から手に入れて“母親”を取り戻し、マネキンに被せて一緒に暮らしていたのだ。これらの恐ろしい行為は、夜の闇にまぎれて、どこかノスタルジックに描写されていく。
フランクの見ている相手の女性は殺害されるまでは生命感にあふれ、生き生きとしている。反対にフランク自身は常に偏頭痛に悩まされ、視線も定まらない。そして死んでマネキンのように動かなくなった女性から、頭皮を剥ぎ取るのだ。
 
Maniac_movie2012それは、初めて恋した女性が出来ても変わらなかった。反対に殺し方は、何度も何度もナイフを突き立てるなど、まるで自分に芽生えた気持ちを突き刺し抹殺したいかのように残虐になる。
 
今まで被害者を殺すことで欲しいものを手に入れてきた彼は、ただ隣にいるだけで心の平安を与えてくれる恋しい人アンナに接近していく。今度は髪だけではなく、生きたままの状態で手に入れたいのだ。だが、なかなか上手く事が運ばず混乱していく彼。そしてその大事なモノが壊れてしまった時、彼の精神は完全に崩壊に向かう。
彼は壊れてしまった。古くなったマネキンのように―
 
フランクは酷いサイコな連続殺人鬼だけれど、どこか同情する部分もあったりして、観終わった後、ひどくもの悲しい気分になった。これは作品全体を覆うそういった雰囲気のせいなのか、イライジャ・ウッドだからなのかは分からないけど。