『ホビット 思いがけない冒険』(2012) -The Hobbit: An Unexpected Journey –

『ロード・オブ・ザ・リング』で闇の冥王サウロンが作りだした魔力を秘めた“指輪”をこの世から抹殺するため旅だったフロドと旅の仲間達。それは「世界を手に入れ、全てを支配したいという傲慢な欲望」との戦いだった。しかしその60年前にも今まで語られていなかった一つの旅があった。この旅には、わずか15人で失われた故郷を取り戻すという大きな目的が。
 
真実の世界は外に広がっている-

The Hobbit: An Unexpected Journey_2012
■ ホビット 思いがけない冒険 -The Hobbit: An Unexpected Journey – ■
2012年/アメリカ・ニュージーランド/170分
監督:ピーター・ジャクソン
脚本:フラン・ウォルシュ、ピーター・ジャクソン、ギレルモ・デル・トロ他
原作:J・R・R・トールキン「ホビットの冒険」
製作:キャロリン・カニンガム、ピーター・ジャクソン他
製作総指揮:アラン・ホーン、トビー・エメリッヒ他
撮影:アンドリュー・レスニー
音楽:ハワード・ショア

出演:
イアン・マッケラン(灰色のガンダルフ)
マーティン・フリーマン(ビルボ・バギンズ)
リチャード・アーミティッジ(トーリン・オーケンシールド)
ヒューゴ・ウィーヴィング(エルロンド)
ケイト・ブランシェット(ガラドリエル)
リー・ペイス(スランドゥイル)
クリストファー・リー(白のサルマン)
シルベスター・マッコイ(茶色のラダガスト)
マヌー・ベネット(アゾグ)
バリー・ハンフリーズ(大ゴブリン)
アンディ・サーキス(ゴラム)
ベネディクト・カンバーバッチ(スマウグ)(死人遣い)
イアン・ホルム(ビルボ・バギンズ/老年時)
イライジャ・ウッド(フロド・バギンズ)

 
解説:
J・R・R・トールキンの『指輪物語』を映画化した傑作ファンタジー「ロード・オブ・ザ・リング」3部作の監督ピーター・ジャクソンが、その60年前の中つ国を舞台として描かれた児童書『ホビットの冒険』を再び3部作として映画化するファンタジー超大作の第1弾。魔法使いのガンダルフに協力を求められ、13人のドワーフたちと共に、恐るべきドラゴン“スマウグ”に奪われたドワーフの王国を奪還する危険な旅に加わったホビット族のビルボ・バギンズが辿る壮大な冒険の行方を圧倒的なスケールで描き出す。メジャー作品としては初となる、通常の倍の毎秒48フレーム(48fps)で撮影された“ハイ・フレーム・レート”方式の3D映像も話題に。出演は若きビルボ役に「銀河ヒッチハイク・ガイド」のマーティン・フリーマン、その他ガンダルフ役のイアン・マッケランはじめケイト・ブランシェット、イライジャ・ウッド、アンディ・サーキスら「ロード・オブ・ザ・リング」3部作の主要キャストも多数再登場。
  (allcinema)

あらすじ:
ホビット庄で平和に暮らしている青年ビルボ・バギンズの元にさすらいの魔法使いガンダルフが現れる。過去にドラゴン“スマウグ”によって奪われたドワーフ王国を取り戻すため一緒に旅に出て力を貸して欲しいと言う。戦はおろか剣を持ったことさえ無いビルボはいったんは断るが、ガンダルフが呼び寄せた13人のドワーフ達の故郷を思う歌に突き動かされ、彼らの旅に参加することを思わず決心する-

The Hobbit: An Unexpected Journey_2012

 


ガンダルフがふと感じた直感のようなもの「この冒険にはきっとあいつが必要になる」が発端で、うまくのせられ
エレボール(はなれ山)”へ向かう冒険の旅に出たビルボ。LoRでのドワーフと言えば“ギムリ”。旅の仲間の一員でありながら、他の面々に比べると少しだけ地味目だった。しかし今回の冒険の目的はドワーフ達の故郷を取り戻すことなので、ドワーフがたっぷり13人出演。これにガンダルフとビルボを足した15人が今回の旅の仲間だ。

エレボール(はなれ山)
The Hobbit1_80この地は古代よりドワーフによって治められてきた。この岩山は金銀がたくさん出る場所で、働き者のドワーフが採掘しては素晴らしい装飾物などに加工し保存。中でもたまたま見つけられた山の精髄である“アーケン石”は太陽のように輝く特別な石で、これはドワーフの王がその玉座にはめ込み、王国の象徴として大事にされていた。山裾には人間達のデイルという町もあった。
しかしある日、突然、ドラゴン“スマウグ”がエレボールにやって来る。口から炎をはき、ドワーフや人間達に襲いかかる。この恐ろしいドラゴンには勇敢な戦士であるドワーフ達も為す術がなく、エレボールを後にして逃げ去ることしか出来なかった。こうしてエレボールは眠れる黄金と共にドラゴン“スマウグ”の住処となり、ドワーフは故郷を失ったのだ。

ギムリの活躍でも分かるように、陽気で負けず嫌いの戦士ドワーフ。
本作でのドワーフ達も(王になるトーリンを除き)陽気でイタズラ好き。ビルボの家に押しかけてドンチャン騒ぎをする強面。まるで白雪姫の小人達のようだが、失った故郷を想う歌を歌い始めると迷惑がっていたビルボも思わず耳を傾けてしまうという面も。
それと今回のドワーフはギムリのイメージとは(全く)違う若者も含まれている。中年以降のドワーフががっちり体型であるのを見ると、ドワーフは若いときはスラリとしていて年取るとがっちりになるのかなー、などと関係ないことを考えたり。

Contents

13人のドワーフ達


The Hobbit1_73 The Hobbit1_67 The Hobbit1_68 The Hobbit1_70 The Hobbit1_72 The Hobbit1_61 The Hobbit1_63 The Hobbit1_62 The Hobbit1_69 The Hobbit1_71 The Hobbit1_64 The Hobbit1_65 The Hobbit1_66
左上から
トーリン(リチャード・アーミティッジ)、バーリン(ケン・ストット)、ドワーリン(グレアム・マクタヴィッシュ)、フィーリ(ディーン・オゴーマン)、キーリ(エイダン・ターナー)、オイン(ジョン・カレン)、ボフール(ジェームズ・ネスビット)、オーリ(アダム・ブラウン)、ビフール(ウィリアム・キルシャー)、グローリン(ピーター・ハンブルトン)、ノーリ(ジェド・ブロフィー)、ドーリ(マーク・ハドロウ)、ボンブール(スティーヴン・ハンター)

The Hobbit: An Unexpected Journey_2012

命の危険も伴うと聞いて「どうしてこの僕が一緒に行く必要が?」と、最初は同行を拒否していたビルボ。しかし彼らが出発してしまった後、いてもたってもいられずに、荷物をまとめて後を追う。冒険心をくすぐられてしまったのだ。ガンダルフにはこれもお見通しだったに違いない。
ガンダルフが言うから仕方なく、、はビルボだけでは無かった。身体が小さくこっそり動くことが出来るから「忍び」として雇うと言われたが、なんの役にも立たないだろうとドワーフの隊長トーリンは思っていた。役に立つわけない、と思っていたのは当のビルボも一緒で、ただ「冒険」に出ただけのような出発だった。

The Hobbit: An Unexpected Journey_2012

しかし出発まもなく、次々と襲いかかる悪の力。トロルにワーグ(魔狼)に乗ったオーク、岩の巨人にゴブリン。そしてトーリンと因縁のある穢れの王“アゾグ”。ゴラムも出てくる。
これらに平行してガンダルフの魔法使い仲間“茶色のラダガスト”がドルグルドゥアで“死人遣い(ネクロマンサー)”と遭遇し、うごめく闇の力について中つ国の番人ガンダルフに忠告する。
そしてあの美しいイムラドリフの谷(裂け谷)にはエルロンド卿ガラドリエル様と一緒に“白のサルマン”が。5人いる魔法使いでは一番の上級であるにも関わらず、出来ない政治家のようなことをのたまっており、だからLoRではああなったのか、と頷ける場面も。

LoRと同様、170分という長編で情報量が半端なく多い本作だが、ストーリーはさくさく進み、あっという間。また今回のガンダルフは、あまり迷いが無く頼もしいので、余計に進行が早く感じられた。
おたおたしているビルボにガンダルフは色々な言葉を与えるが、その中でも本作のメッセージはこれだろう。
 「勇気とは、命を奪う時では無く、助ける時にこそ問われる

そして続きは第2部へ
 第2部 『ホビット 竜に奪われた王国』2013年12月
 第3部 『ホビット ゆきて帰りし物語』 2014年12月

また私の長い旅が始まる
ではまた

はなれ山の歌
寒き霧まく山なみをこえ、
古き洞穴(ほらあな)の地の底をめざして、
われらは夜明け前に旅立たねばならぬ、
青く光る魔の黄金(こがね)をさがし求めて

そのかみドワーフたちは強き呪文を唱え、
その槌音は鐘のようになりわたった、
万物ねむる地の底深く、
山々の下に口をあけた大広間で

いにしえの王やエルフの殿のために、
ドワーフたちが作り仕上げた、
きらめく黄金の宝ものや、
剣のつかにちりばめた宝石はおびただしかった

ドワーフたちは銀の首飾りに、
星の花々をつづり、
冠の上に竜の火をかかげ、
かがる鉄線には月光と日光をまぶした

寒き霧まく山なみをこえ、
古き洞穴の地の底をめざして、
われらは夜明け前に旅立たねばならぬ、
忘れられたわれらの黄金を手にいれるため

われを忘れて刻みあげた大さかずきや、
黄金のハープが、まだ人間に掘られずに、
長の年月、うずもれてきた。
人にもエルフにもきかれぬ歌がうたわれてきた

あの日、松林は山の背にうめき、
風は夜のやみになげいていた。
火は赤々と、炎をあげてもえ広がり、
木々がたいまつのようにかがやいた

鐘は谷間に鳴りわたり、
人々は顔青ざめて空を見上げた。
竜の怒りはすさまじく、
その火が、塔も家もやきほろぼした

山は月あかりにかすんでいた。
ドワーフたちは、ほろびの音をきいた。
そして住居(すまい)の穴からにげるうちに、
月光の下、竜の足にかかって死んだ

お暗き霧まく山なみをこえて、
古き洞穴の地の底をめざして、
われらは夜明け前に旅立たねばならぬ、
竜からハープと黄金をとりもどすため

「ホビットの冒険 1章 思いがけないお客たち」 瀬田貞二訳より

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