『ボーン・アイデンティティー』(2002) - The Bourne Identity –

男は、彼らの「武器」となる為に訓練された筈だった…

 

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■ボーン・アイデンティティー - The Bourne Identity -■
2002年/アメリカ/119分
監督:ダグ・リーマン
脚本:トニー・ギルロイ、ウィリアム・ブレイク・ヘロン
原作:ロバート・ラドラム「暗殺者」
製作:ダグ・リーマン、パトリック・クローリー、リチャード・N・グラッドスタイン
製作総指揮:ロバート・ラドラム、フランク・マーシャル
撮影:オリヴァー・ウッド
音楽:ジョン・パウエル
 
出演
マット・デイモン(ジェイソン・ボーン)
フランカ・ポテンテ(マリー・クルーツ)
クリス・クーパー(デッド・コンクリン)
ブライアン・コックス(ウォード・アボット)
ガブリエル・マン(ダニー)
ジュリア・スタイルズ(ニッキー)
クライヴ・オーウェン(プロフェッサー)
デビッド・セルバーグ(マーシャル)
ハリー・ギルバート(アラン)
ティム・ダットン(イーモン)
アドウェール・アキノエ・アグバエ(ニクワナ・ウォンボシ)
 
解説:
ジェイソン・ボーンを主人公にしたロバート・ラドラム原作の国際ポリティカル・サスペンス3部作の第1作目にあたる同名小説(邦題は『暗殺者』)を映画化したサスペンス・アクション。主演はこれが本格アクション初チャレンジとなる「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」「リプリー」のマット・デイモン。監督は「スウィンガーズ」のダグ・リーマン。
  (allcinema)
 
あらすじ:
The Bourne Identity_02ある嵐の夜。マルセイユ沖で操業していたイタリア漁船が海に漂う男を発見。引き上げたその男の背中には2発の弾痕と皮下に埋め込まれたマイクロカプセル。そして気がついた男は記憶を失っていた。
身元を証明するものを何も持っていなかった男は、カプセルに隠されていた銀行名を頼りに単身スイスへと向かう-


 
『ボーン』シリーズの記念すべき第1作。
原作はロバート・ラドラム「暗殺者」(1980)。「ジェーソン・ボーン」三部作の1作目であり、それぞれが映画化されてはいるが、内容のほとんどは別物で、ラドラム自身が製作に関わったのは本作『ボーン・アイデンティティー』だけになる。
この原作三部作はずいぶん前にたまたま読んでいて、それが映画化すると聞いたとき、主演がマット・デイモン?と驚いたものだ。マット・デイモンと言えば『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち(1997)』、『リプリー(1999)』など、利口ではあるが気の弱い、とてもCIAやスパイやアクションとは程遠いイメージだったからだ。
(どちらの出演作も好きな作品なのでよけいに)
 
しかし、観始めて最初の15分で、「えっ、いったいどういうことでしょう」とため息をつく自分。
人の可能性というものを、すっかり蔑ろにしていた自分を恥じ、反省することになったあの瞬間-
 
というわけで、楽しみでもあり怖くもあるボーン番外編『ボーン・レガシー』公開前にボーン祭りを開催したいと思います。
…間に合うかな…
 
 2014.11/12追記:間に合いました  このブログのボーンシリーズレビュー
 
  

 
The Bourne Identity_10嵐の中、スイムスーツで夜の海を漂う男。
てっきり遺体だと思い引き上げた漁船の漁師達。銃弾を受け、記憶を無くしたこの男を介抱し、マルセイユの港に降ろした。名前も分からず、ただ一人、見知らぬ町に降り立った男。着ているものは漁師達にもらった穴だらけのセーター。
実は、このシーンが好きだ。背中にいくつも穴の開いた魚臭そうなセーターを着た男の不安げな後ろ姿。いつものマット・デイモンだ。
そんな彼が向かうのは、スイスにあるチューリヒ相互銀行。
身元を証明するものは何一つ持っていなかったが、ただ一つ、身体に埋め込まれていたカプセルにあった銀行名と口座ナンバー。それを頼りに自分が何者なのかを探るため列車に乗った。
 
The Bourne Identity_16到着したのは夜。よくしてくれた漁師にもらった金も残り少なく、見つけた公園のベンチで眠る。そこへ警察官が現れる。不審に思った警察官は職務質問をするため、男にID提示を促す。当然持っていない男。警察官が警棒を男に向けたその瞬間、目にも止まらぬ早業で警察官2人を倒し、銃を奪っていた。そんな自分に驚いたが、「すぐこの場を離れろ」と自分の中の誰かが命ずるが早いか、上着を脱ぎ捨て走り出す。奪った銃の弾倉を外し捨てるのも忘れない。
いったい自分は何者なのか-。

 
The Bourne Identity_07こうして男が自分を知るための一つ目の鍵に近づいていた時、アメリカCIA本部では、ある案件が失敗に終わったとの連絡が入る。その案件を動かしていたのがこの人テッド・コンクリン
アメリカのオフィスでは10名ほどの直属部下を持ち、あらゆる情報収集を手がけ、海外の拠点においても指示を下せるポストにある。
 
本作の面白いのは、記憶を失い苦しみながら、一歩一歩自分の正体に向かって歩いていく、ある意味自由なジェイソン・ボーンと、窓も無い狭いオフィスでモニタに囲まれ世界中の情報に華麗にアクセスし、まるでゲームのようにさくさくと人の命の駒を動かすCIAの対比だ。
彼らCIA(の偉いさん)にとって人は一つの駒に過ぎず、それらを動かし全体を指揮、掌握しているつもりになっている。そんな中のこの失敗した案件とは、大がかりな「トレッド・ストーン作戦」の一つであった。

トレッド・ストーン(踏み石)作戦
米国政府により、1人に付き3000万ドルをかけて作られる究極の工作員。個人的な感情を出来うる限り無くすような措置がとられ、冷徹な「人間兵器」に作り上げられる。有能な兵士が選ばれることも多い。
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基本的には1人で行動し、あらゆる国に配備され日常生活に溶け込んでいるが、特別な指令が入った場合は、すぐさま行動に移す事が使命だ。そのためにあらゆる国のパスポート、紙幣を常備している。その一方で人間兵器に改造される時の何かが原因で、慢性的な不眠、頭痛に悩まされる者が多い。
※特別な指令とは、本作を見る限り米国の利になる「暗殺」のようだ。



The Bourne Identity_55そんな踏み石の一つであったボーンが、暗殺をしくじったばかりか、顔を見られた上にCIAであるという事までもターゲット‘ウォンボシ’に知られ、コンクリンは窮地に陥る。コンクリンの取るべき道は一つ。CIAの陰謀を世界中に知らしめてやると息巻くウォンボシの確実な暗殺実行と、ヨーロッパで妙な動きをとりCIAの脅威とならんとしているボーンの抹殺であった。
こうしてボーンは所属するCIAとウォンボシから命を狙われることとなる。しかし彼はまだ記憶が戻らず、狙われる理由がわからないままであった-

 

  

 
ボーンシリーズ3部作は世界中で絶賛され、大成功を収めたシリーズものである。特に続編が製作されればされるほど、質、人気ともに落ちていく続編ものと違い、新作が公開されるたび、質、人気、興行収入が上がっていった希有な作品であるとも言える。 →参照:Wiki/ボーンシリーズ
何がこれほどこの作品を愛されるものにしたのか。日本に住む一個人がすごく主観的にちょっと考えてみました。

ジェイソン・ボーンの魅力
 
1.海に浮かぶ銃弾を受けた男
The Bourne Identity_03スパイものと知って観始めた観客は、ここで王道とも言えるオープニングを目撃。しかし海に漂流しているという点が新しく、何があった?下手したら死んでいたぞと色々推測。銃弾を摘出、カプセル発見で一気に物語に引き込まれていく。
 
2.記憶がない
身体にカプセルを埋め込んでいるような主人公の記憶が無い。
アイデンティティーを確立できずに苦しむボーン。ここで女性観客の心を一気に鷲づかみ。マリーもこれにやられた、と推測。
 
3.高度な格闘術
The Bourne Identity_14個人的な記憶は無いが、身体が覚えているスパイのお仕事。
ラフでありながら、キレがあり、相手の拳を受けながらもその場にある物を使って確実に敵を倒す。これで世の男性方と一部の女性の目を釘付けに。スタントを立てるとバレるからと、マット・デイモンは出来る限り自分でアクション。これがよりリアルに見せていると思う。
 
4.的確な判断と実行力
The Bourne Identity_33倒した領事館職員の無線を奪うことを忘れず、戸を蹴り破った後、きちんと閉める。凍ったようなビルの壁面を冷静に伝い降りていく。相手を観察し動きを読みCIAの出鼻を挫く。追跡装置の設置も怠らない。
作品を通じてのこれら冷静沈着な行動様式から、スパイとしての高いレベルが伺えどんな事が起きても、彼なら対処できるという安心感を観る者に与える。こうなれば観客は皆ボーンの味方。
 
5.カーチェイス
The Bourne Identity_52警察からも追われているボーン。
マリーの車ミニでパリを逃げ回るシーンは迫力そのもの。
アクション映画に欠かせないカーチェイスは、続く『ボーン・スプレマシー』でも楽しめる。
 
6.さらりとしたロマンス
ボーンの行動のそのほとんどにマリーが一緒でありながら、女女した雰囲気を醸し出さず、邪魔にならない。
ボーンを助けてのホテルでの活躍もさらりとしたもので、雰囲気を壊さない。で、ありながらボーンの人間性をも引き出し、観客に普通の人間であることを知らしめる存在。
ベタなロマンス展開にせず、純粋にスパイアクションを見せてくれた。
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  ほとんどのシーンに共通する、この距離感がいい。
 
 
7.魅力的な登場人物
The Bourne Identity_36マリー・クルーツ(フランカ・ポテンテ)
ドイツ人であるが、世界を転々としている放浪癖のある娘。お金のためにボーンを車に乗せたが、次第にボーンに惹かれていく。しかし無闇について行くのではなく、どうするべきかを冷静に判断する知恵もある。ボーンに好意を持っている時と不信感を持った時の表情、特に口元が違う。上手いなーと思った。

The Bourne Identity_70プロフェッサー(クライヴ・オーウェン)
ボーンと同じトレッド・ストーンのメンバー。一匹狼を自負し、ヨーロッパで暗躍する。
イギリスで活躍していたクライヴ・オーウェンは、この言葉少ない孤独な暗殺者役でハリウッド作品に初出演。以後、大作の主演にも抜擢されている。

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8.ヨーロッパが舞台
アメリカに比べて馴染みの少ないヨーロッパが舞台ということで、ここでなら何が起きても不思議がない、
逃亡者にも充分な隠れ蓑があるはず、と観客に錯覚させる。(ヨーロッパの人が本作を観た時どう感じるかは不明です。)
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9.モービー「エクストリーム・ウェイズ」
言わずと知れたエンディング。
ボーンの心情をダイレクトに歌う。

 
こちらニコ動「Extreme Ways」では日本語歌詞付き

 
久しぶりに本作を観てみたけれど、マット・デイモンが若かった!
三部作が終わり、4作目の出演がどうなるのかを見守ってきたが、出演を取りやめたのは正解だったかもしれない(この記事『ヒア アフター』では出ておくれよー、と叫んでいる自分)。
考えてみると、『007』でも容赦なく俳優は変わっている。
この『ボーン』も代替わりしながら長く続いていくのだろうか..。
 
ではまた