よくあるキレる親父系作品かと思っていたら、ちょっと違う『Mr.ノーバディ』。これは予告編すら見ずに観始めたほうが、カッコよくて人間味のあるノーバディおじさんをより楽しめる。クリストファー・ロイドがノーバディ・シニアとして登場するよ。
■ Mr.ノーバディ – Nobody – ■
2021年/アメリカ/92分
監督:イリヤ・ナイシュラー
脚本:デレク・コルスタッド
製作:ケリー・マコーミック他
撮影:パヴェウ・ポゴジェルスキ
音楽:デヴィッド・バックリー
出演:
ボブ・オデンカーク(ハッチ・マンセル)
コニー・ニールセン(ベッカ・マンセル)
クリストファー・ロイド(デイビッド・マンセル)
RZA(ハリー・マンセル)
ゲージ・マンロー(ブレイク・マンセル)
ペイズリー・カドラス(サミー・マンセル)
アレクセイ・セレブリャコフ(ユリアン・クズネツォフ)
■解説:
一見してごく普通の中年男が、世の中の理不尽に怒りを爆発させて大暴れし、やがて武装集団やマフィアを相手に激しい戦いを繰り広げる姿を描いた痛快ハードボイルドアクション。映画.com
Contents
あらすじ
自宅と妻の実家が経営する職場をバスで往復するだけの会計士ハッチ。バリバリ働く妻に代わって家事もこなす彼だが、妻と眠るベッドには間に枕を立てられ拒絶状態、年頃の息子からは冷たい眼差しを投げられ、孤独な日々を送っている。
そんなある夜、ハッチの家に強盗が入る。若い男女の強盗で現金や金目の物をあさっているのを見つけた彼は、金をやったらすぐに出ていくだろうと判断し振り上げたゴルフクラブを下におろす。それらの行動を見ていた息子は、父親にがっかりし、以前にもまして冷たい態度をとるようになった。
だが幼い娘が大事にしていたネコちゃんのブレスレットを強盗が金と一緒に持ち去ったと知るや、ハッチの態度が急変。強盗の手首にあったタトゥを頼りに探しに出かけていく。と同時に、その帰りバスに乗って来たチンピラたちのあまりの言動に憤慨した彼は、とうとう怒りが収まり切れず「俺がお前らを叩きのめす」と言い放つのだった ─
感想
家族に蔑まれ、立場の弱いお父さんの話かと思って観始めていたが、バス停の屋根につかまって懸垂したりして、案外鍛えらえた身体を持つハッチに?と思っていたならば、、。このバスの乱闘で見て取れる彼の本性と分かってくる元のお仕事。
けれど彼は完全無欠のスパイでもヒーローでもないから、殴り返されもするし、ナイフで刺されもする。でもそうされればされるほど身体の底から湧き上がってくる闘志と忍耐と正義感。これがハッチの持ち味で、きっと前職や今の家庭内の立場なんかに活かされているのかなと思われる。
その彼の本性はきっと父親から受け継がれている。正義感ありきの行動ではあるのだが、アドレナリン全開のバイオレンスに身を置いてこそ活かされてもくる血統なのだ。それはいくつになっても収まらないし、変わらないらしい。彼らが正義側でよかったと思う。
実は事件はこれで終わらない。このバスのチンピラの一人がロシアン・マフィアのボスの息子であったことから、マフィア軍団に狙われるはめになるハッチ家。だが、危険な目にあうほどにハッチの例の本性が燃え盛り、身体がどんどん動いていく。
がんばれ、ロシアン(‘ω’)
※ちなみにジャレット・レト主演『ミスター・ノーバディ』とは全く別の作品です。
『ミスター・ノーバディ』(2009) - Mr. Nobody –
この作品は、ニモの選択肢の全てを映像にし物語にしていく。
いくつもの選択。いくつもの出会い。いくつもの挫折。いくつもの人生。人は岐路に立ったとき、どうやって道を選んでいくのか?選ばなければどうなるのか?
本当にこれでよかったのか?
主演 ボブ・オデンカーク
アメリカ合衆国のコメディアン、俳優、映画監督、放送作家、脚本家、プロデューサー。
■主な出演作
〔映画〕
- ウェインズ・ワールド2(1993)
- 好きと言えなくて(1996)
- ケーブルガイ(1996)
- モンキーボーン(2001)
- ドクター・ドリトル2(2001)
- ラン・ロニー・ラン(2002)
- プリズン・フリーク(2006) ※兼監督
- 最凶家族計画(2007)
- 極秘指令 ドッグ×ドッグ(2010)
- パーティー・ナイトはダンステリア(2011)
- いま、輝くときに(2013)
- ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅(2013)
- シークレット・ロード(2014)
- ガールフレンドデー(2017) ※兼脚本・製作
- ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書(2017)
- インクレディブル・ファミリー(2018) ※声の出演
- ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋(2019)
- ルディ・レイ・ムーア(2019) ※クレジットなし
- ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語(2019)
〔テレビドラマ〕
- となりのサインフェルド(1993)
- ラリーのミッドライフ★クライシス(2000)
- アレステッド・ディベロプメン(2003)
- ジョーイ(2004)
- Weeds ママの秘密(2008)
- ママと恋に落ちるまで(2008-2012)
- ブレイキング・バッド(2009-2013)
- アントラージュ★オレたちのハリウッド(2010)
- ザ・オフィス(2013)
- FARGO/ファーゴ(2014)
- ベター・コール・ソウル(2015-)
- コミンスキー・メソッド(2019)
このブログの見逃せないハードボイルド作品
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『ボーン・アイデンティティー』(2002) - The Bourne Identity –
原作はロバート・ラドラム「暗殺者」(1980)。「ジェイソン・ボーン」三部作の1作目であり、それぞれが映画化されてはいるが、内容のほとんどは別物で、ラドラム自身が製作に関わったのは本作『ボーン・アイデンティティー』だけになる。 -
『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』(2009) - 復仇 Vengeance –
本作を観終わって感じたのは、全編を通した乾いてざらざらした西部劇のような感触と何故かサムライの精神。黒澤明監督作品についてはあまり詳しくないので説明は出来ないが、クロサワ作品というのはこういう感じなんだろうな、と。 『ディパーテッド』もいいけど、やっぱり『インファナル・アフェア』という人はぜひ。 -
『牢獄処刑人』(2013) - On the Job –
囚人殺し屋とそれを追う捜査官。でも真実の敵は簡単には手に届かないほどの大きなモノだった ―。フィリピン産「L.A.コンフィデンシャル」いいですよー。アメリカものに… -
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至福『ソプラノズ ニューアークに舞い降りたマフィアたち』(2021)
『ソプラノズ ニューアークに舞い降りたマフィアたち』はクリスの語りで進められていきます。たっぷりとトニーへの恨みを合間合間に挟みながらね(‘ω’) 亡くなってもまだ、うんちくと屁理屈が好きなの、クリスは。