『 ナイトクローラー』(2014) - Nightcrawler

この映画の怖いところは、ついこないだまでただのこそ泥だった男がパパラッチ業に目覚め、開眼し、業界で上り詰めていくところ。故にこれは誰でもこっそり持っている“週刊誌的怖い物見たさ”を具現化し、人の形にしてカメラを持たせたホラーであります。

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■ ナイトクローラー - Nightcrawler – ■
2014年/アメリカ/118分
監督・脚本:ダン・ギルロイ
製作:ジェニファー・フォックス 他
製作総指揮:ゲイリー・マイケル・ウォルターズ 他
撮影:ロバート・エルスウィット
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード

出演:
ジェイク・ギレンホール(ルイス・ブルーム)
レネ・ルッソ(ニーナ・ロミナ)
リズ・アーメッド(リック)
ビル・パクストン(ジョー・ロダー)
アン・キューザック
ケヴィン・ラーム
エリック・ラング
ジョニー・コイン
マイケル・ハイアット
マイケル・パパジョン

解説:
「ブロークバック・マウンテン」「エンド・オブ・ウォッチ」のジェイク・ギレンホールが、刺激的なスクープ映像を求めるあまりモラルのタガが外れていくフリーランスのニュース・カメラマン役で鬼気迫る怪演を披露し、高い評価を受けたピカレスク・サスペンス・ドラマ。共演はビル・パクストン、レネ・ルッソ、リズ・アーメッド。監督は「トゥー・フォー・ザ・マネー」「ボーン・レガシー」などの脚本を手がけ、本作が監督デビューのダン・ギルロイ。

あらすじ:
ロサンゼルスに暮らす孤独な中年男ルイス・ブルーム。野心はあるものの定職にも就かず、コソ泥をしてはその日暮らしのしがない日々。そんなある日、偶然遭遇した事故現場で、ビデオカメラ片手に夢中で撮影する男たちを目撃する。彼らはニュース映像専門のパパラッチ、通称“ナイトクローラー”。事件、事故の現場にいち早く駆けつけ、誰よりもショッキングな映像をカメラに収め、それをテレビ局に高く売りつけるのを生業とする連中だ。そんなことが商売になると知り、さっそくビデオカメラと無線傍受器を手に入れると、見よう見まねでナイトクローラーとしての活動を開始するルイスだったが ―
(allcinema)


元々、ちょっと非常識で罪悪感ってものが希薄な男ルー。金を手に入れるためなら人を殴ったりする事などなんとも思わない。見かけは、乱暴者に見えず、ごく普通の一般市民。けれども本名が“ルイス”なのにルーと呼ばせるところなんか、何か業界人ぽく偽装しているというか、人に尊敬され親しまれている風を装っているというか、どこか「偽物」の匂いがぷーんっとしてくる。

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そんな彼が、ある夜、たまたま事故現場に居合わせて、事故死した人の悲惨な映像を狙ってカメラに収め、テレビ局に売っている男達の存在を目撃。ソレが金になることを知る。

ホームビデオのカメラを使ってその仕事を始めた彼は映像がうまく売れたことを皮切りに、商売道具の車やカメラを新調し、言葉巧みにこき使うための助手さえ手に入れる。それより何より、映像を売りつけるのに恰好のテレビ局ディレクターを籠絡し、この闇の業界でライバルを蹴散らしてどんどんのし上がっていく。

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もちろん彼は猪突猛進型の努力家だ。目的があればのめり込み、目的を達成するためには他者を利用し、踏みつけにしても平気な自己中心的な性格。その上、口はうまく人を騙すのも、人を脅すのもとても上手で、押しが強いことも忘れてはならない。人の弱みを見抜く力もそれを利用する術も持っている。
これじゃまるで“ほぼ”サイコキラーだ。

彼は自分でも言っていた。「人が破滅するとき、そこには俺がいる」と。こうなるとサイコキラーどころではなく、悪魔死神そのものであるとも言える。カメラマンを捕食者に仕立て上げたような作品なのだ。なぜ、そこまで?と思われた方はぜひ本作をご覧下さい。
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この死神を演じたジェイク・ギレンホールは激やせで目が落ちくぼみ人相が変わっている。カメラマンとしての動きなのだろうが、カメラを定位置に構えて獲物に近付いていく様子はとても血の通う人に見えない。
それと彼のこの風貌はどこかアル・パチーノを思い出させて、より一層、ギラギラしている精悍な男にも見えてくるのだった。

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