『残酷メルヘン 親指トムの冒険』(2010) - Le Petit Poucet –

民話「親指トム」はグリム兄弟やイギリスのJ・ジェイコブズなどが再話しており、いくつかのバージョンがあるが、今回は17世紀のフランス詩人シャルル・ペロー版を映画化。原作の残酷描写や性描写もそのまま取り入れられ、子供向けというよりも大人向けなものになっている。

Le Petit Poucet_Movie
■残酷メルヘン 親指トムの冒険 - Le Petit Poucet -■
2010年/フランス/81分
監督:マリナ・ド・バン
脚本:マリナ・ド・バン
原作:シャルル・ペロー
製作:シルベット・フリードマン他
出演:
ドニ・ラヴァン (人喰い鬼)
アドリアン・ド・バン
レイチェル・アルディティ
バレリー・ダッシュウッド
イリアン・カラバー

解説:
「赤ずきん」「眠れる森の美女」などで知られるフランスの詩人シャルル・ペローがまとめた童話「親指トム」を、原作の残酷描写もそのままに映像化したダーク・ファンタジー。監督は、フランソワ・オゾン監督作『8人の女たち』『まぼろし』にて、オゾン監督と共に脚本を担当したマリナ・ドゥ・ヴァン。

あらすじ:
飢餓と貧困にあえぐ17世紀ヨーロッパ、5人兄弟の末っ子で親指トムと呼ばれた少年は、貧しさから両親に兄弟と一緒に森の奥に捨てられてしまう。森の中をさまよう彼らは、偶然にも人食い鬼と娘たちが暮らす屋敷を見つけ、娘たちの部屋に泊めてもらうことに。しかしその夜、トムは部屋の中にただならぬ気配を感じ-
 (シネマトゥデイ)


童話「親指トム」に何種類かのバージョンがあるとは知らずに大人になった管理人が調べたところ、元々が民間伝承のお話なので、それらをまとめて本にした人によって少しずつ違うんですね。
グリム版は日本の「一寸法師」に似ていて、小さな身体を使って冒険し、最後に親元へ帰って来るというお話。ジェイコブズ版は「桃太郎」にも似ていて鬼退治の後、アーサー王の家来になって冒険していくお話。
そして本作シャルル・ペロー版を映画化したお話は-

17世紀ヨーロッパ。木こりの父親、母親と暮らす5人兄弟の末っ子、小さくやせっぽちのトムは動物や小さな昆虫までもの命を大事にする利口な子供。家族は慎ましく仲良く暮らしていた。
Le Petit Poucet_Movieしかし作物が出来ずに大飢饉になったその年、いもの欠片などを分け合って何とか飢えをしのいでいたが、とうとう両親は子供を森に連れて行き置き去りにすることを決める。両親の様子からそれをいち早く察したトムは、川で白い石を拾っておき、森の中で迷子にならないようにその石を置いて歩いた。そのおかげで一度は助かった兄弟達だったが、二度目、森に入ったときに置いたのは貴重なパンくず。パンくずは置いたとたんにカラスに食べられていき、迷子になってしまった5人の兄弟。森の中をさまよい歩き、一軒の大きな屋敷にたどり着く。

Le Petit Poucet_2010奥さんに頼み込んでなんとか家に入れてもらった兄弟達だったが、この屋敷は人喰い鬼の家だった。そこへ狩りから帰ってきた主の人喰い鬼。見つかれば食べられてしまうと隠れたが、鼻のきく鬼に見つかってしまう。早々に5人を食べようと舌なめずりをする鬼と5人の娘達。奥さんは機転を利かして「もっと太らせて次の日曜のごちそうにしよう」と主人に提案。承知した鬼だったが、その夜、我慢が出来ずに娘達の部屋で眠っている5人のところにナイフを持ってやって来る-

Le Petit Poucet_2010シャルル・ペロー版の本作では「利口なトムと愚鈍な他の兄弟」が対比されている他にも、トムと両親、トムと人喰い鬼、5人兄弟と人喰い鬼の5人娘、など、それぞれの立ち位置がはっきりしていて、トム一人の冒険ものである他のバージョンに比べると、より身近でより残酷なお話に感じられる。物語を通じてどんどん利口になっていくトムに比べて、その他の登場人物はお馬鹿さんのままであることも面白い。
トムの両親は兄弟を森に置き去りにするが、すぐに「(この飢饉が去って)落ち着いたら、また子供を作ればいいし・・」などと鬼畜な事を言っている。「おぉい!また飢饉がきたらどうするんだ!?」と思わず突っ込む管理人。

人喰い鬼夫婦は同じ部屋に5人の娘と5人の兄弟を寝かせたが、「これ、いいの?」と思っていると鬼がこっそり入ってくる。そして真っ直ぐ白い帽子の兄弟のところへ行きナイフを振りかざす。それも次々、5人ともに。娘だというのに…。
「ちょっと、いくらよだれで口元がベタベタになっていたとしても、目は見えるだろ?よくきく鼻はどうした?」とまたしても童話に突っ込む管理人。まー、このあたりが子供に読み聞かせるしつけ童話たる所以でしょうが、なんかちょっと下卑た感じですね。ホントに子供に聞かせていいんでしょうか..?
Le Petit Poucet_2010 Le Petit Poucet_2010

他にも娘の「肉付皮膚」をプレゼントにもらって喜んで食す鬼やら、男の子達を舌なめずりしながら眺め回す5人の娘など見所はいっぱい。鬼畜な人に天罰が下るというオチもしっかり入っています。これで、すっきり、気持ちよく眠ることが出来ると思いきや、最後の場面でまた気分が悪くなるという大どんでん返し付。
これは、やっぱり大人向けですね。
ではまた

シャルル・ペロー
ChPerraultフランスの詩人。日本では『ペロー童話集』の作者として有名。
1628年にパリのブルジョワ階級の家庭に生まれる。1651年、オルレアン大学で法学の学位を取得し弁護士となるが、二度弁護しただけでその職に再び戻ることはなかった。1671年にはアカデミー・フランセーズ会員に選出される。コルベールに認められ、ルイ14世に仕えた。

■著作物
・グリゼリディス(Griselidis)
・おろかな願い(Les Souhaits ridicules)
・ロバの皮 (Peau d’Âne)
・赤ずきん(Le Petit Chaperon rouge)
・長靴をはいた猫(Le Chat botté)
・青ひげ(La Barbe Bleue)
・眠りの森の美女(La Belle au bois dormant)
・仙女たち(Les Fées)
・シンデレラ (Cendrillon, ou la Petite Pantoufle de verre)
・巻き毛のリケ(Riquet à La houppe)
・親指小僧・親指太郎(Le Petit Poucet)



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