繰り返される歴史『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(2023)

20世紀初頭のアメリカ先住民と白人のお話ってどんなのだろう?と興味津々で観始めた本作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は、想像していたよりも物質的にも精神的にも蹂躙されていく過酷な現実を、凡庸な男ディカプリオが身をもって語ってくれる物語。彼のおかげで3時間越えの長さに気が付かないほど集中して観ることができた。

Killers-of-the-Flower-Moon

■解説:
ジャーナリストのデビッド・グランがアメリカ先住民連続殺人事件について描いたベストセラーノンフィクション「花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生」を原作に、「フォレスト・ガンプ 一期一会」などの脚本家エリック・ロスとスコセッシ監督が共同脚本を手がけた。第96回アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞、撮影賞など10部門でノミネートされた。

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Flowermoonとは:多くの花が開花する5月の満月のことであり、アメリカ先住民の風習を由来とする。他に“秘密”、“変化”などのキーワードを持つ。


Contents

あらすじ

1920年、アメリカ・オクラホマ。
叔父キング・ヘイルを頼って帰還した第一次世界大戦の復員兵アーネストは、運転手の仕事中に居留地の土地から原油が出たことで莫大な富を得た先住民オセージ族の女性モリーと出会う。やがて彼らは結婚し子どもをもうけるが、それに並行するようにしてモリーの姉妹を含むオセージ族の人間の不審死が相次ぎ、司法省捜査局の捜査官がこの地を訪れる ─

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見どころと感想

上のあらすじを読む限り、犯人の分からないサスペンスもののように見えるかもしれませんが、違います(‘ω’)/
犯人というか、オセージ族の人間が次々に、これでもかというほど殺されていく後ろの闇には、この地の権力者であり有力者であり保安官代理までをも務める“キング”が君臨。オセージ族が死ぬことによって自分に多大の利益が転がり込むように日々操作している。

まぁそれが非常に分かりやすく、自分の手足となって動く男たちをうまく使い決して自分の手は汚さない。その手足になる駒に指示する役目の男さえも間に挟み、裏の顔は決して見せない。特にオセージ族には良き理解者である表の顔のまま病院や学校などを作るなどして恩を売る。
キングは絵に描いたような悪者なのだけど、甥っ子アーネストはごくごく普通の平凡な男。ちゃっかり手足の駒にキングの指示を伝える伝令の役目をさせられているのだが、その後ろにある大きな意味を分かっているのかいないのか(-.-) それに伝える時に「これはキングの命令だ」「キングの指示だというのにそんな態度でいいのか!?」などと黒幕をばらしまくっているのだけど、いいのこれ?

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アーネストのいいところは正直で平凡なところ。
オセージ族の富を狙って近づいてくる数多の人間の中で、なぜモリーが彼を選んだのか。それは彼が悪だくみなどできない普通の男だからだ。それに叔父は権力者で部族の理解者キング・ヘイルだ。だが彼女はその正体にすぐ気が付くことになる。夫アーネストがキングの仕事をしていることも分かっているが何も言わなかった。けれど愛する姉妹が次々に亡くなっていき、持病の糖尿病が悪化する頃、彼女の猜疑心はとうとう愛する夫にも向けられる。

けれどあまりに凡庸な男アーネストは自分のしていることに気が付いていない。

ふと疑問に思ったこともそのままやり過ごし、妻子を愛している、叔父を崇拝しているという自分の気持ち、考え方のみに執着し、悪い意味で自分を信じている。見ただろう、妻の愛する姉の無残な亡骸を。爆発で吹っ飛んだ妹の自宅を。
なぜだ…こんなに分かりやすく身の回りで殺しとその結果が起き続けているというのに(-.-) 考えろ、自分の頭で。けれど凡庸な男アーネストも最後には自分の頭で考え決断を下す時がきた。彼にとってそれは大きな決断だっただろう。叔父を“キング”と呼べなくなったくらいに。

だが彼は失敗する。

またもや失敗する。妻の求めていたことを分からなかったばかりに。自分の長所に気が付かなかったばかりに。そのせいでラストのラストで全てを失うことになる。妻がせっかくやり直そうとしていたのに、最後の妻のひっかけ問題に誤った答えを選んでしまった。断固として自分は正しいと信じている叔父の大きく曲がったへの字口を大した考えもなく真似ているとどうなるのか。
残念だったね ─

でもきっと彼は分かってない

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本作では、そのほとんどの場面でバックにずっと太鼓のような音が響いている。大きくシーンが移り変わる時にその音がパタッと止んだりするものだから少しびっくりするのだが、あの音はアメリカ先住民の信仰する大地の神がたてる音なのか、それとも彼らの先祖たちが発する警告音なのか。何にせよ白人たちの音ではない。

オセージ族の人々は白人たちに元々暮らしていた土地から追いやられ、流れに流れて居留地として与えられたオクラホマの土地に原油が出た。そして本作の通りに事件が起きてゆくのだが、この一連の不審死事件で亡くなった先住民は60人を超えるとも言われている。

ネイティブ・アメリカンと白人入植者の話は詳しくはないまでも少しは知っていたものの、こんなことまで起きていたとは本作を観るまで知らなかった(-.-)
現代の物差しで全てを語ることはできないが、オイルダラーに群がった人殺しさえ厭わない実在した悪人たちと毅然と立ち続けた女性の物語を“凡庸な男”を使って語った物語は決してヒーロー的なありがちな方向に向かわずに、ある意味、自分に置き換え自分のこととして一緒に体験していくことが出来る分かりやすいお話になっている。
3時間を超える作品でありながら、その時間の長さは気にならなかった。長いなーと敬遠せずにこの分かりやすいノンフィクション物語をぜひアーネストと一緒に体験してほしい。

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