“ゴースト・ハウス”ものだ~と飛びついてみたものの、ちょっと違ってた。邦題の”獣”がどこから来たのか知らないけれど、それも違う。正しく言うなら「”内なる葛藤”と戦う家」となるホラー
■ 獣の棲む家 - His House – ■
2020年/アメリカ/93分
監督:レミ・ウィークス
原案:フェリシティ・エバンス他
脚本:レミ・ウィークス
製作:エドワード・キング他
製作総指揮:ヤリフ・ミルチャン他
撮影:ジョー・ウィレムズ
音楽:ロケ・バニョス他
出演:
ショペ・ディリス
ウンミ・モサク
マット・スミス
Netflixオリジナル作品
■解説:
映画.com
戦火のスーダンからイギリスへ逃れた難民夫婦が、新居に潜む謎の存在によって追い詰められていく姿を描いたNetflixオリジナルのスリラー映画。監督・脚本は、これまで数々のCM作品を手がけてきたレミ・ウィークス。Netflixで2020年10月30日から配信。
■あらすじ:
スーダンの内戦を生き延び、過酷な船旅を経てイギリスに亡命を申請した若い夫婦。条件付きで収容施設から出ることを許された彼らは、役所にあてがわれた古びた住居で新たな生活をスタートさせることに。しかし安堵したのも束の間、新居で奇妙な出来事に次々と襲われ -
亡命を目的に内乱の続くスーダンから逃げ延び、苦労した末イギリスにたどり着いたある若い夫婦。長い間、収容所で暮らし、ようやく今後の身の振り方が決まった。3つの条件のもと、毎週報告書を当局に出すことで亡命が認められるかどうか決定されるという。その条件とは
- 当局が決めた家に住む
- 毎週74ポンドが支給される
- 労働で収入を得ないこと
二人は未来に希望がさしたようで、これを受ける。
さっそく案内された家は古く汚く、前の住人の荷物や勝手に入り込んで寝泊まりしていた人のゴミが散乱してはいたが、収容所ではない「自分の家」を持てたことに夫は喜んだ。彼は役所の人間の言う「とにかく近所に馴染め、溶け込め」を努力して実践する。
だが妻は気分が今一つ優れない。
それは何故なのか…。
夫婦には娘がいたが、スーダンからの道中、イギリスに渡る小さな船から落ちて海で亡くなった。亡くなったのは娘だけではなかった。ずっと続く部族間の争いは内乱となり、親戚や知り合いを失った妻。大勢の人と国家としての形を失った母国スーダン…。
そんなことが思い出され、異国で一人考えているうち、この希望の家のあちらこちらから音が聞こえるようになる。音だけではない。人の影や気配、「ママ」と呼ぶ娘のか細い声までもが聞こえだし、かつてのトラウマが悲鳴となって甦る。
これらの現象はやがて希望に満ちていたはずの夫にも伝染する。壁の中にうごめく悪霊のごとき何者かは、壁の中から這いずりだして闇に溶け込み、次第に攻撃を始める。まるで自分たちの未来を妬むかのように、自分たち夫婦を呪っているかのように。そして夫は、その闇の住人の中に亡くした最愛の娘の姿を見つけるのだった -
この作品でほんとに大変だな..と同情してしまったのは、もちろん母国を捨てざるを得ない点もそうだけど、イギリスの地で同じアフリカ系の少年たちから差別を受ける妻の場面。ここはホラー映画でもなんでもなく難民や亡命の人々の現実が垣間見えているところ。それでもイギリスである程度自由に動くことができ始めたのは、彼らの努力もあるだろうけどラッキーな方なのかな…。
こういったことも合わせ、過去の出来事への後悔、同胞への罪悪感、これからの不安、何よりも娘への感情が自らの内に潜む「獣」となって、この古い家にはびこり出し自らを苦しめ始めた、というお話。でもそれで終わったんではあまりに無情。彼らはそれを真正面から受け止め、今後の糧として乗り越えていくはず。
……がんばれ、夫婦