(ホラーの合間に挟まる)癒しのほのぼの系ドラマ。主な登場人物は6人だけど、彼らは1人では体を為していない。でも大丈夫。皆で一緒にいればいいんだから。そんな彼らの1人はお面で顔を隠している。けれど大丈夫!他の皆は見せているからね!
■ FRANK -フランク- - Frank – ■
2014年/イギリス・アイルランド/95分
監督:レニー・アブラハムソン
脚本:ジョン・ロンソン 他
原作:ジョン・ロンソン
製作:エド・ギニー 他製作総指揮:テッサ・ロス 他
撮影:ジェームズ・マザー
音楽:スティーヴン・レニックス
出演:
ドーナル・グリーソン(ジョン)
マイケル・ファスベンダー(フランク)
マギー・ギレンホール(クララ)
スクート・マクネイリー(ドン)
フランソワ・シヴィル(バラク)
カーラ・アザール(ナナ)
■解説:
マイケル・ファスベンダーが実在した英国のコメディアン、クリス・シーヴィーをモデルにした謎多きミュージシャンを演じるインディ・コメディ。本作で共同 脚本も務めた作家ジョン・ロンソンが実際にクリス・シーヴィー扮するキャラクター“フランク・サイドボトム”のバンドに参加した体験談をベースに、キャプ テン・ビーフハートなど実在のアウトサイダー・ミュージシャンのエピソードを織り交ぜフィクションとして映画化。■あらすじ:
ミュージシャンを夢見る青年ジョンは、ひょんなことからキーボードの代役としてインディ・バンド“ソロンフォルブス”のライヴに飛び入りで参加すること に。ところが、そのバンドでフロントマンを務める男フランクは、なんと巨大な張りぼてのマスクを被っていた。しかも、プライベートでも決してマスクを脱が ない筋金入りの変わり者だった。やがて人里離れた湖畔の小屋で始まったバンドのレコーディング合宿にも参加することになったジョンだったが ―
(allcinema)
イギリス映画らしい斜め下を見下ろすひねた感じのコメディ・人間ドラマ。
誰がどう見ても被り物の男が目立って怪しいに決まっているのに、そこを敢えて前面に出さずに、より風変わりな変人を、それも何人も登場させる。
そうなんですよねぇ。観終わって一番印象に残ったのがクララ(マギー・ギレンホール)だったり。
彼女はこの変人バンドの中でも自分はまだ“まとも”と感じているらしいけど、それは違うみたい。というか一番複雑で理解しがたいタイプだ。その上、ミュージシャン。独自の音にこだわりがある。
そんな自分だから、同じタイプ(なはずの)フランクを理解できるのは自分だけ。この私だけがフランクの世界で生きることが出来、生き延びることが可能だ。
だからフランクも私を必要としているに違いない。
そんなフランクはどんな人なのだろうか?
・被り物を決して外さない。←理由はある
・日頃は大人しい。
・説得力がある(口八丁)。
・独自の世界観を持っていて歌い出すと人が変わる。
元からいる2人のメンバーもバンドに居続けているところを見るに、居心地が良いのだろう。ほとんど意思表示は無いが…
だが、これだけではこのバンド“ソロンフォルブス”とメンバーを説明したことにならない。それは、たまたまバンドに参加したジョンにとっても同じだった。彼も充分に変わったヤツだったが、このバンドには全くかなわなかったのだ。
結果を求めずにただ演奏し、歌で表現する彼ら。だがジョンは結果を求めた。何でもいいけど、何かの見返りが欲しかったのだ。ジョンは“ソロンフォルブス”を表舞台に引っ張り出そうとするが、あえなく失敗。それどころか“ソロンフォルブス”自体が空中分解し、微妙なバランスが崩れた時にフランクは姿を消してしまう。
だが、どうだ?今までフランクはホントにそこに存在していたのか?被り物の中の実態は全然見えないというのに。でもそれは被り物を被ったフランクだけではない。メンバーは皆、互いを必要としており、互いの目に互いが映っていてこそ存在に意味が持てた。
誰のための音楽か?
誰のためのメンバーか?
誰のための人生か?
ラスト、フランクが即興で歌い出す「みんな愛してる」
これが、聴けば聴くほど良い歌で心に染みてくる。どんなにヘンな事でも、どんなに奇妙なヤツでも、“みんな愛してる”と歌うフランク。それはフランクが皆に語りかけているのと同時に、自分へ贈る言葉でもある。
だって、フランクは愛されているもんね。メンバーや両親から。彼の歌を愛する人々から。