これは誰の果実?『ドント・ウォーリー・ダーリン』(2022)

ちょうどA24『グリーン・ナイト』と同じ頃(2022年11月)公開されていて、どっちに行こうか少し迷った作品。ということは本作は不可思議で謎でダークな作品ということ。あらすじを読むと『ステップフォード・ワイフ』みたいな男たちの夢タウン的なお話かと思いきや、少しだけひねりが ─

■ ドント・ウォーリー・ダーリン  – Don’t Worry Darling – ■

Dont-Worry-Darling

2022年/アメリカ/123分
監督:オリヴィア・ワイルド
脚本:ケイティ・シルバーマン
製作:ロイ・リー他
製作総指揮:リチャード・ブレナー他
撮影:マシュー・リバティーク
音楽:ジョン・パウエル

出演:
フローレンス・ピュー(アリス)
ハリー・スタイルズ(ジャック)
オリヴィア・ワイルド(バニー)
クリス・パイン(フランク)
ジェンマ・チャン(シェリー)
ニック・クロール(ディーン)
キキ・レイン(マーガレット)

■解説:
「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」で監督として高く評価された俳優オリビア・ワイルドの長編監督第2作で、「ミッドサマー」のフローレンス・ピューを主演に迎えて描いたユートピアスリラー。

映画.com


Contents

あらすじ

秘密のプロジェクトを進めているある企業が従業員のために用意した完璧な町。そこに暮らすジャックとアリス夫婦はご近所の同僚たちとも楽しく余暇を過ごしつつ、幸せな毎日を送っていた。そんなある日、息子をなくしてから精神的に不安定になってしまった町の友人マーガレットが自殺する現場を目撃したアリス。思わず駆け寄ろうとするとどこから来たのか赤い制服を着た男たちが突然現れ、マーガレットを連れ去ってしまう ─

Dont-Worry-Darling

見どころと感想

誰かによって管理された町、ロボットのような人々、そして時代は平和・幸福な50年代風…とくれば思い出すのが最初に書いたニコール・キッドマン『ステップフォード・ワイフ』やジム・キャリー『トゥルーマン・ショー』。どちらも幸せな毎日は造られ操られたものだったというお話だった。

で、本作はどうかというと、絵に描いたような幸せな夫婦が多数暮らす町。すべての物資は勤務先である秘密の企業によって用意され、皆が住む素敵な家は全部同じサイズで不公平がないようにしてある。夫は同じようなランクの車で軽快に出社、子供たちは学校に通い妻は家をピカピカに磨き美味しい料理を作って夫の帰りを待つ。夜はホームパーティが頻繁に行われ、上司の家によばれることもある。なんの不自由もない暮らし。愛し合う二人。“幸福”の二文字だけがある毎日。

だが決して町の外に出てはならないルールがある。

墜落するプロペラ機を目撃した時からそんなアリスの毎日にひび割れが起き始める。
割っても割っても中身のない空っぽな卵。壁と窓ガラスに押しつぶされそうになるリアルな幻視。そして友人の自殺現場の目撃。ここでアリスは気が付き始める。ここは、この町は誰かに監視されている、ここでの暮らしは本物ではなく造られたものだ、と。

Dont-Worry-Darling

怪しい人物はたくさんいる。何か知っているような素振りの友人バニー。友人たちの夫も信頼がおけない。何より会社の代表フランクはまるで新興宗教を広めるかのような口ぶりで話すじゃないか。
信用できるのは夫だけ。愛するジャックだけ。ジャックだけ…

ここでお察しの通りの流れで物語は進んでいくのだが、50年代のこの時代にまさかここまでテクノロジーが進んでいるとは恐れ入りました。確かにそのテクノロジーは時代らしくアナログ的なものではあるのだけれど。

誰が黒幕?

物語後半に入り、愛し合う二人の姿が影を潜めた頃、『ミッドサマー』のフローレンス・ピューらしく正気を失ったのかそれとも罠に嵌められたのか?とこちらがやきもきしだした時に徐々に現れるこの町の正体。
だがそもそも愛し合う二人の名前にはこの物語の裏が隠されていた。

jack

ジャック

トランプの絵札の一つ。10の上位で、クイーンの下位の札。若者の絵が描かれており、キングとクイーンに対し、廷臣または兵士などを表わすとされる。

コトバンク

アリス

眠ってしまったアリスが目を覚ますと目の前に白ウサギが。時間が無いと言いながら駆けていくウサギを追って深い穴に落ち込んだアリスは不思議の国へと迷い込むことに

Alice

けれど彼らはあくまでも物語のコマ。黒幕では無い。
じゃあ誰が?もちろん訳知り顔の友人でも、一番わかりやすい人でもなくて、やっぱりあんたか~いというのがバックに立っている。この町を牛耳り、人の上に立ち、自分のやりたいことや欲しいものを手に入れるためには何でもやる人。その目的のためには誰であろうと邪魔はさせない。役に立たない者は簡単に手のひらを返して命を奪う。
恐ろしや~(‘Д’)

が、しかし。
最後の最後。エンディングが流れる頃に本作の本当の黒幕がお出ましに。
エンディング頭に彼女の名前を見た時に背筋がゾッとしたのは言うまでもない。彼女の作品はあまり知らないけれど、これほどの才能をお持ちであったとは知りませんでした。

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