『ダラス・バイヤーズクラブ』(2013) – Dallas Buyers Club –

社会的ないくつもの問題をテキサス男ロンが命を張って経験していく。少しルールからは外れているかもしれないが、それは新しいルールが出来るまでの混乱期だからなのか、決められたルールは決めた人間が後から追っていくのが定めなのか…

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■ ダラス・バイヤーズクラブ - Dallas Buyers Club – ■
2013年/アメリカ/117分
監督:ジャン=マルク・ヴァレ
脚本:クレイグ・ボーテン 他
製作:ロビー・ブレナー 他
製作総指揮:デヴィッド・ブシェル 他
撮影:イヴ・ベランジェ
 
出演:
マシュー・マコノヒー(ロン・ウッドルーフ)
ジャレッド・レト(レイヨン)
ジェニファー・ガーナー(イブ)
デニス・オヘア
スティーヴ・ザーン
グリフィン・ダン
マイケル・オニール

解説:
実在の人物、ロン・ウッドルーフ。1980年代、米国がエイズ対策に手をこまねいていたころ、エイズにかかったウッドルーフは自身で海外から治療薬を密輸し、他の患者たちにも販売した……。さまざまな差別に抵抗する主人公。その不屈の魂に見る者の心が共鳴するしかない、本物の逸品だ。主人公役のM・マコノヒーは体重を21キロも落とし、鬼気迫る熱演を披露。主人公の相棒となるトランスジェンダー役のレトも、みごとにトランスジェンダーになりきった。監督は「ヴィクトリア女王 世紀の愛」のJ=M・ヴァレ。

 
あらすじ:
1985年、ダラス。電気技師ロンは行きずりの女性との肉体関係を積極的に楽しんできたが、突然倒れてしまう。医師によれば彼はエイズにかかり、余命30日だという。多くの人と同じように、ロンはエイズが同性愛者しかかからないと誤解し、政府の対応も遅れていた。メキシコで治療薬を入手したロンは帰国後、友人になったトランスジェンダーのレイヨンを相棒に、海外から密輸したエイズ治療薬を販売する会員制ビジネスを始める ―
(WOWOW)


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典型的なテキサス男、電気技師ロンはある日、病院でエイズとの診断を受ける。ガリガリに痩せ、いやな咳が止まらなかった彼は「俺はゲイじゃ無いぞ!」と信じない。数日経ち、図書館でエイズについて調べる内にゲイではなくても感染することがある事、現在開発されている治療薬などについて知ることになる。
そこでまだ臨床試験中の開発薬“AZT”を手に入れるため病院を訪れた彼だったが、簡単には手に入らない上、その薬が公的に承認されるまでまだ1年はかかると知らされる。
だが彼には時間が無かった。なぜならば彼の最初の診断は余命30日だったからだ。

dallas-buyers-club_movie2013_24-2-cけれど彼は自分の運命を悲しむ事も自暴自棄になる事も絶望する事もしなかった。まず裏ルートでAZTを手に入れた彼は、それに薬物をふりかけビールで流し込むように摂取する。だが症状は良くなるどころか、副作用で身体中が痛み頭は割れそうに。

そこで病気繋がりで知り合ったトランスジェンダーのレイヨンから聞いたメキシコの闇医者の元に飛ぶ。その医者によりAZTは毒にもなり得ることと同時に、エイズの進行を遅らせて症状を緩和するための薬の存在を知る。だがそれらはアメリカでは未承認薬だ。だが彼は諦めなかった。大量のそれらの薬をアメリカに持ち帰った彼はまず自分の身体で確かめ、その後、エイズ患者を対象に会員クラブを立ち上げ、違法な裏薬屋商売を始める ―

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ビールに薬物に女に賭け事。詐欺師まがいの毎日を送っていた根っからのカウボーイがある日、エイズと宣告され、今まで忌み嫌っていた“ゲイ”と疑われ、親しかった友人を無くしていく。けれど彼は簡単には病気にも友人らの白い目にも屈しない。自分の命を守るため、次々と行動を起こし忌み嫌っていたゲイの人々にも少しずつ理解を深めていく。

dallas-buyers-club_movie2013_11-2その上、彼はそれを商売にした。ここに単なる綺麗事では無い現実とロンらしさがある。その商売を手伝うことになったレイヨンとはラスト近くまで一線を引いた付き合いであるところも彼ららしい。二人は似たもの同士でもあり、人を疑うことを忘れない。だがそれはとても神経質で頼りない傷付いた心がさせる防御本能なのだ。思えばロンや男達がゲイを忌み嫌うのは、自分の優しさや可能性を認める事の裏返しなのかもしれない。

アルコールや薬物、その他、身体にとって異物となり毒となるものを摂らず、自然の中に、他の生物の中にあるものを取り込むことで身体の状態をコントロールする、という方法にとても共感出来た。身体に入ったエイズウィルスを無くすことは出来ないが、自浄治癒能力で少しでも症状を軽減し命の日を延ばす。その日々は自然からの恵みであり、どう使うかはその人次第。ロンは7年間の日々をとても濃いものにしたに違いない。
7年を長いと感じるか、短いと感じるかはその人次第なのだ。

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