『グレイン』 (2017) ~ 遺伝子の辿り着く先に

近未来の地球。選ばれた者だけが暮らす磁気壁の中で、作物が育たない現象が続く。種子遺伝学者は人類存続の突破口として、 磁気壁の外へとある研究者を探しに出かけるが ─ 
─ 遺伝子研究、遺伝子の選択、人間の選別 これらは既に始まって…

Bugday

■ グレイン  Bugday – ■
2017年/トルコ・ドイツ・フランス・スウェーデン・カタール合作/127分
監督:セミフ・カプランオール
脚本:セミフ・カプランオール
製作:セミフ・カプランオール他
製作総指揮:ヨハネス・レキシン

出演:
ジャン=マルク・バール
エルミン・ブラヴォ
グリゴリー・ドブリギン
クリスティナ・フルトゥル
ルブナ・アザバル
ハル・ヤマノウチ

■解説:
「蜂蜜」で第60回ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞したトルコのセミフ・カプランオール監督が7年ぶりにメガホンをとり、ダークなディストピアを美しいモノクロ映像で描いたSFドラマ。2017年・第30回東京国際映画祭コンペティション部門で最高賞の東京グランプリを受賞。

映画.com


あらすじは最初に書いた通りで、遺伝子組み換え技術などを使って育てていた作物がすぐに自己破壊による劣化を起こすために、育て続けることができない問題が起きた近未来。研究によってある素粒子が足りないからではないかと見た学者エロル・エリンが、その素粒子の専門家を探すために危険な旅に出るという物語。

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なぜに危険かというと、学者たちが暮らす都市は周囲に磁気による壁が張り巡らされている。それは移民や危険な人間の勝手な流入を阻止するためなのだが、移民の中でも検査などで合格した所謂“選ばれた者”は入ることができる、というより強制的に入れられる。だが出ることは決して出来ない。

壁の外の世界は“死の地”などと呼ばれ、危険な人間はもとより、ウイルスや病気などがはびこり、決して中の者は行ってはならない土地なのだ。だが少し前にエロルと同じ企業で研究していた学者アクマンが研究半ばにして“死の地”へと旅立ってしまった。エロルはアクマンの研究「遺伝子カオス論」「M素粒子」こそが今の最大の課題を克服するのでは、と考えたのだった。

壁越え案内人を雇って無事外に出たエロルがこれから見て体験すること。それは自然の中で身体を使って自力で進んでいくということ。整然と並んだ建物や銃を持つ警備の兵士、車などの移動手段、綺麗な空気や美味しい食べ物などは一切無い。荒涼とした大地が広がる中に、目指す方向があるのみだ。目指すものを見失うと待っているのは“死”のみ。そういった意味では、ここが“死の地”というのはある意味正しい。

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疲れ果てながらも真っ直ぐ前を見て進むエロルは、会社のためとか人類のためとか、もはやそういった気持ちは二の次になっている。どうしても知りたいのだ、続く生命を持つ種子の力を。どうしても作りたいのだ、命の連鎖を絶たない完璧な種子を。

その気持ちが通じたのか、エロルはアクマンに出会うことが出来た。そして彼の研究である「遺伝子カオス論」「M素粒子」について話をきき、「M素粒子」の存在場所を知ることになる。

素粒子とは、物質を構成する最小の単位のことである。素粒子はそれが従う統計によって二種類に分類され、フェルミ統計に従う粒子をフェルミ粒子、ボース統計に従う粒子をボース粒子と呼ぶ。素粒子の大きさは分かっておらず、大きさが無い(点粒子)とする理論と、非常に小さいがある大きさを持つとする理論がある。

Wikipedia

M素粒子の存在する場所とは ─
人にあった。自然に、地球に宿っていた。アクマンが“死の地”で大事に保管していた「土」。彼はこの土を自分の顔や身体に聖水を浴びるかのようにこすり付けていく。その人間の遺伝子が混じった土こそが、強い種子を育てるのだ。守られた土、守られた水、守られた空気の中では種子に生き残る力は必要ない。だが他の遺伝子が近づこうとした時こそ種の存族が危ぶまれ、自ら、より強い生存本能を生み出し守りに入る。

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答えは自分の中にあった。

この一連の物語が何を言いたいのかは、きっとはっきりしている。磁気壁の外では「遺伝子組み換え反対」「遺伝子差別反対」のデモが盛んに行われていた。この近未来では「人種差別」「性差別」は既に過去のもの。それらを乗り越えた後に起こるのはまさしく「遺伝子差別」なのかもしれない。

U-NEXTで観る

本作はU-NEXTの配信で鑑賞しました。

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