ずっとトム・ハーディと『ダークナイト ライジング』ベインがシンクロしなかった管理人momorex。優しげで大人しめでスマートなイメージを彼に持っていたからだが、本作を観て大納得。スタローンともザ・ロックともウディ・ハレルソンとも、もちろんシュワちゃんとも違う「筋にくん」がここに居た。そしてその筋肉には狂気と笑いとナーバスな何かが潜んでいたのだ。

■ブロンソン - Bronson -■

Bronson

2008年/イギリス/92分
監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
脚本:ブロック・ノーマン・ブロック、ニコラス・ウィンディング・レフン
製作:ルパート・プレストン、ダニエル・ハンスフォード
製作総指揮:スザンヌ・アリザート、サイモン・フォーセット他
撮影:ラリー・スミス
音楽:ロル・ハモンド
出演:
トム・ハーディ(ブロンソン/マイケル・ピーターソン)
マット・キング(ナイトクラブのオーナー)
ジェームズ・ランス(刑務所の美術教師)

解説:
後の「ドライヴ」で世界中の映画ファンから熱い視線を注がれる鬼才レフン監督。彼がデンマークから英国に招かれて放った、実話ものとはいえ、監督独自のセンスを光らせた異色作。自身を俳優のチャールズ・ブロンソンの分身であると主張し、34年もの間、刑務所で暮らした実在の人物ピーターソン。彼がひたすら暴れまくる姿を、監督は大胆なまでのスタイリッシュな映像と音のスタイルを貫いて描写。ピーターソン役のT・ハーディはその激演が注目され、後に「ダークナイト ライジング」の悪役ベイン役に抜擢された。 (WOWOW)

あらすじ:
子供の頃から喧嘩や盗みで有名だったマイケルは、19歳の時に郵便局強盗で捕まり収監。服役中も反抗的な態度で暴力を繰り返し、独房入りが日常茶飯事に。7年の実刑だったのがようやく出所したのは26年後。出所後はムショ仲間のつてを頼り、“チャールズ・ブロンソン”のリング名でアンダーグラウンド・ボクサーになるが-
 


しごく真っ当に育てられたはずの少年マイケル・ピーターソンは、とにかく有名になりたかった。しかし歌も、演技も駄目で自慢できるものが何も無い。そこで彼は自分の拳をはたと見る。その拳を思う存分使うことにしたのだ。喧嘩や盗みに明け暮れて、10代後半で結婚、子供も出来るが、郵便局強盗でとうとう逮捕、収監される。入ったその夜は男泣きしてしまった彼。
しかしマイケルは刑務所を気に入ってしまったのだ。素敵なホテルだと思えるほどに。

Bronson

もともと粗野で人の言うことに耳を貸さない性格。看守達に意味も無い因縁をつけては暴力沙汰を起こし、その度に独房に入れられる。それでも懲りないマイケルは、呆れ果てた刑務所長によって刑務所をたらい回しにされたあげく、精神病院に強制入院させられる。

そこでも続ける反抗的態度に最後には薬漬けにされるが、それでも屈しないマイケルは殺人未遂を犯して異常人格犯罪者の病院へ放り込まれる。
郵便局強盗で7年の実刑だったのが、病院から半ばほっぽり出されるように出てくるまでに26年という月日が経っていた。

Bronson

有名になりたかったマイケル。
あらゆる刑務所で超有名になって娑婆に出てきた。迎えに来たのは両親だったが、実家に収まっているようなタマではない。アンダーグラウンドのボクサー“チャールズ・ブロンソン”として、その拳をいかし始める。そしてある女性に出会い愛してしまった彼は、プレゼントの指輪を盗み再び刑務所へ。26年努めてようやく出てきたところなのに、その69日後にまた舞い戻ってしまった彼。
この時から彼は“ブロンソン”と呼ばれるようになる。

  
Bronson

この破天荒な男が実在すると言うからビックリだ。
レフン監督はバイオレンスな暴力男の物語を、ただ単に暴力を持って表現するだけではなく、ブロンソンによる一人語りのショー仕立てにして進めていく。
よくある囚人の語りだけではなく、劇場で観客の前でのショー、美術教室での自らをキャンパスにしたような演出。ライトがさんさんとブロンソンに当たり、有名人になりたかった彼を浮かび上がらせる。

暴力表現だけの男ならただの犯罪者にしか見えないが、このような演出で笑いと皮肉と哀愁が垣間見えるため、ブロンソンがとても魅力的に見えてきて、愛すべき男へと昇華する。(彼は粗野な暴れ者ではあったが、人殺しだけはしていない、という自負があったようだ。そこだけが救いとも言えるが..。)

合計34年(現在も進行中)の獄中生活のうち、30年を独房で過ごしたブロンソン。
そんな彼を理解しようとしても難しい。
舞台の上のショーは、ショーであって現実では無く作り事。舞台の上のブロンソンの頭の中は彼にしかわからない。

ドライヴ』に続いて観たレフン監督作。
暴力を肯定も否定もしない考え方の監督なのかな、と感じた。  

 監督ニコラス・ウィンディング・レフン
デンマーク出身の映画監督、脚本家、映画プロデューサー。
1970年にコペンハーゲンで生まれ、8歳の時に両親とともにニューヨークに渡る。17歳でコペンハーゲンに戻ってギムナジウム(高校)で学び、卒業するとすぐにニューヨークに戻ってアメリカン・アカデミー・オブ・ドラマティック・アーツに通う。ところが、教室の壁に机を投げつけたことで放校処分になり、デンマークの映画学校に入学することになる。しかし、こちらもすぐに退学する。
レフン自らの脚本・監督・出演による短編映画がマイナーなケーブルテレビ局で放送されると、彼の人生を変えるオファーが来る。320万クローネの出資により、当時24歳の彼が脚本・監督を務めたバイオレンス映画『プッシャー』(1996年)が公開され、批評面でも興行面でも大成功を収める。(Wiki:ニコラス・ウィンディング・レフン)

■主な監督作
 ・プッシャー(1996)
 ・ブリーダー(1999)
 ・Fear X(2003)
 ・プッシャー2(2004)
 ・プッシャー3(2005)
 ・ブロンソン(2008)
 ・ヴァルハラ・ライジング(2009)
 ・ドライヴ(2011)
 ・オンリー・ゴッド(2013)

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