『Bubble/バブル』(2005) - Bubble –

泡のように消えていく。人生は短い

Bubble

■Bubble/バブル -Bubble-■
2005年/アメリカ/74分
監督:スティーヴン・ソダーバーグ
脚本:コールマン・ハフ
製作:グレゴリー・ジェイコブズ
音楽:ロバート・ポラード
撮影:スティーヴン・ソダーバーグ
出演:
デビー・ドーブライナー(マーサ)
ダスティン・アシュリー(カイル)
ミスティ・ウィルキンス(ローズ)

解説:
『オーシャンズ』シリーズなどで知られる鬼才スティーヴン・ソダーバーグが監督、撮影、編集まで行った衝撃のドラマ作品。小さな町の人形工場で起きた殺人事件を軸に、孤独な住人たちとその内面にひそむ狂気が暴かれていく。有名なキャストを一切起用せず、撮影のすべてをキャストの自宅を使って行うという実験的手法を採用。ソダーバーグ監督ならではの巧みな演出や、作品に緊張感を与える音楽なども見どころ。 (シネマトゥデイ)

あらすじ:
アメリカ、オハイオ州。
父親の介護をしながら小さな人形工場で働く中年女性マーサ。単調な毎日で、話し相手となるのは同僚の青年カイルだけだった。そんなある日、大量の注文が入り手が足りなくなった工場に新人ローズが入ってくる。

Bubble

若くて可愛いシングルマザーの彼女はカイルに急接近。マーサはカイルとの2人の世界を壊され、疎外感を感じ始める。そして、ある日、この小さな町で殺人事件が起きる-


『オーシャンズ』シリーズなどで有名なソダーバーグが監督が、大作の間に撮ったこの作品は、製作費160万ドルという低予算で作られたインデペンデント映画(ちなみに『オーシャンズ11(2011)』製作費は8500万ドル)。
出演者はプロではない地元の役者で、撮影場所も出演者の自宅が使われており、徹底的なリアルさを求めたとも言える。

主人公は小さな町の中年女性マーサ。独身で、ただ1人の家族である父親の介護をしている。夜明けと共に起き、父親の朝食を用意した後、車を走らせ同僚のカイルを迎えに行く。2人でファーストフードの朝食をとり、職場に向かう。職場は小さな人形工場。手作業で1体1体作りあげていく。

そして昼。ランチもカイルと一緒にファーストフード。仕事が終われば家に帰り、父親とテレビを見ながら持ち帰り仕事の人形の服をミシンで縫う。
そして寝る-。 これがマーサの1日だ。
決して美人とは言えないが、人が良く、単調な毎日に特に不満もない。

話し相手はカイルだけで、ただ1人の親友だと思っている。曇った日が続くような毎日に、時折光が差してカイルに当たる。マーサにとってまぶしく思えるのは、親子ほど年の離れたカイルだけ。恋愛感情では無いかもしれないが、大事な存在には違いない。

Bubble

カイルはあまり自己主張のない、おとなしい青年。そんな彼には、大勢の人がいる中でパニックを起こす障害がある。だから若くてもこの小さな町から出ることは無い。友情という名の下にずっと付き合っていけると思っていた。
ローズが来るまでは-。

Bubble

2才の娘がいるシングルマザーのローズ。
善良なマーサとは違い、小さな町での毎日に飽き飽きしている。細かいことは気にならず、人との関係も大事にしない。ハウスキーパーの仕事先で高価な時計をくすねるなんて事はお手のもの。マーサの大事な親友カイルとの間に割って入り、2人の関係を壊すこともなんとも思っていない。

彼女にとっては単なる暇つぶしでしかない。
娘の面倒をマーサに頼み、カイルとビールを飲みに出かける。カイルはマーサに気を遣うが、ローズは「タダ酒が飲めた」ぐらいにしか思っておらず、まるで毎日工場で作っている、心のない人形のようだ。

そして、この小さな町で殺人事件が起きる。
手作業で作られた愛らしい何体もの人形。まるで、その中に紛れ込んだ異質なものを排除するかのように。
証拠が出たとかで逮捕されたのはマーサだった。
善良なマーサ。まるで覚えがないのに、と面会に来たカイルに訴える。「助けて」と。
しかし自己主張も、行動力も無いカイルは「自分には無理だよ」と、言葉少なにマーサに告げる。


監督 スティーブン・ソダーバーグ

高校生の時から16mmで映画を作りはじめ、卒業後にハリウッドに行き編集者として働く。
1986年、ロックバンド「イエス」のコンサートフィルム「9012ライブ」を撮影し、高い評価を得て翌年に短編映画監督”Winston”を制作。
1989年、初めての長編映画『セックスと嘘とビデオテープ』でサンダンス映画祭観客賞とカンヌ国際映画祭パルム・ドールを史上最年少(26歳)で受賞。『トラフィック』でアカデミー監督賞を受賞。

■主な作品

1989
セックスと嘘とビデオテープ
Sex. Lies, and Videotape
1991

KAFKA/迷宮の悪夢

Kafka
1983

わが街セントルイス

King of the Hill
1998

アウト・オブ・サイト

Out of Sight
1999

イギリスから来た男

The Limery
2000

エリン・ブロコビッチ

Erin Brockovichi
 

トラフィック

Traffic
2001

オーシャンズ11

Ocean’s Eleven
2002

ソラリス

Solaris
2004

オーシャンズ12

Ocean’s Twelve
2007

オーシャンズ13

Ocean’s Thirteen
2008

チェ 28歳の革命

The Argentine
 

チェ39歳 別れの手紙

Guerrilla
2009

ガールフレンド・エクスペリエンス

The Girlfriend Experience
 

インフォーマント!

The Informant
2011

コンティジョン

Contagion
2012

エージェント・マロリー

Haywire
 

こうしてみると、マット・デイモン出演作多いですね。


次々と壊れていく人間関係。
そんな儚さと暴かれていく人間の本質を、単調な田舎の毎日に覆い被せた本作。
仕方がないとは言え、あまりにマーサが気の毒だった。

週に一度、マーサが通っている教会。
説教を聞いているときに、いきなり周囲の人が消え、マーサの顔にライトが当たり、うっすらと微笑む。
まるで女優のようなその表情。この時、彼女は何を考えていたのだろうか。いろいろ意見はあるだろうが、場所が教会だけに自分はカイルとの結婚式の幻を見ていたのではないだろうかと感じた。

ではまた

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