『牢獄処刑人』(2013) - On the Job –

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囚人殺し屋とそれを追う捜査官。でも真実の敵は簡単には手に届かないほどの大きなモノだった ―。フィリピン産「L.A.コンフィデンシャル」いいですよー。アメリカものに比べてもっと人間的で綺麗事など何処にも無い。前観た『キナタイ マニラ・アンダーグラウンド』も面白かったもんねー

On_the_Job-movie2013
■ 牢獄処刑人 - On the Job – ■
2013年/フィリピン/116分
監督:エリック・マッティ
脚本:エリック・マッティ、ミチコ・ヤマモト
製作:エリック・マッティ
 
出演:
ジョエル・トレ(タタン)
ジェラルド・アンダーソン(ダニエル)
ピオロ・パスクアル(フランシス・コロネル・Jr.)
ジョーイ・マルケス(アコスタ)
レオ・マルティネス(パチェコ将軍)

解説:
驚きの実話をもとに警察内部の腐敗を痛烈に描き、国内で数々の映画賞に輝いたほか、海外でも評判を呼び、ハリウッドでのリメイクも決まったフィリピン発の話題の犯罪映画。
 
あらすじ:
中年のタタンとまだ若いダニエルの2人組は、白昼の繁華街で大胆不敵な殺しの仕事を遂行し、ひとときの自由時間を思い思いに味わった後、元の刑務所内へと戻っていく。実は囚人である彼らは、刑務所を隠れ家にして権力の手先として働く殺し屋だった。一方、大物議員の娘婿である若手エリート捜査官のフランシスと、たたき上げの刑事アコスタは、コンビを組んで事件の調査に乗り出すうち、警察組織の腐敗の実態を知るようになる ―

(WOWOW)


キナタイ -マニラ・アンダーグラウンド-』では警官学校に通う青年が嫌悪すべき警察の腐敗に否応なく取り込まれていく様子を描いていたが、本作ではフィリピンのFBIとも言うべきNBIという組織のエリート捜査官が巨大な悪と立ち向かおうとする。けれどそれは本作の半分のお話に過ぎず、残り半分は邦題でもある「牢獄処刑人」囚人殺し屋のお話だ。
どちらも「若手を育てる」というところが共通している。だが簡単には育たない、育てることは難しい、という点も同じだ。あともう一つ、“女が命取りになる”という点でも同じ。
邦題はその半分しか意味していないが、原題は「On the Job」。“職務中”というような意味だ。
 
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フィリピンのある刑務所。
まず驚くのがこの刑務所そのもの。刑務所と言えばきちんと統制がとれ、どこもピカピカ、囚人達が自由に出来る時間も空間も規制されている、というイメージだが、ここフィリピンの刑務所は違う。
まず人が多い(ようするに囚人が溢れている)。広い空間を建物内だろうが中庭だろうが自由に行き来している(但し、終端には鍵のある門があるが)。とっても雑多でうるさく、一見すると労働者が溢れる飯場か、非常に汚い何かの寮のようだ。囚人服さえ無い。一部の囚人達は洗濯していたり料理したりしているが、他のほとんどは遊んでいるように見える。
 
On_the_Job_15-2この取りあえず閉じ込めましたな刑務所に目を付けたのが、ある筋の仲介人。その仲介するものは“殺し”の請負だ。賄賂でどうにでもなる点も注目で、看守や刑務所所長など何とでもなる所も都合が良かった。溢れるほどたくさんいる囚人の中から、向いているヤツを探して“ある職務”のために密かに外に連れ出し、職務を遂行。その後、一晩ほど自由に過ごし、表向きはちょっと脱走しちゃった風に見せかけて翌日こっそり連れ戻す。報酬も出る。これが「囚人殺し屋」の実態だった。
 
この殺し屋は代々受け継がれていく。一つの刑務所で同時に殺し屋となるのは2人。慣れている者とそれを継ぐ者。今は熟練者タタンと若者ダニエルのコンビだった。タタンは家族のため、とりわけロースクールに通う娘の学費のために仕事を受けていた。ダニエルも家族への仕送りのため、金のためだった。
On_the_Job_11-2そして今回のターゲットはある麻薬の売人。何の躊躇いも無く、人でごった返している祭りの中で職務を遂行した2人だったが、この売人の持つあるリストがこの後、大きな問題へと発展していく。
 
地元警察のアコスタは連続して起きている殺人事件を必死に捜査していたが、何かと邪魔が入って遅々として進まない。そこにNBIの捜査官フランシスがやって来た。今日から自分たちが捜査するからと(地元警察とNBIが仲良くないのはフィリピンでも同じ) ―
 
 
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NBI捜査官フランシス・コロネル・Jrは犯罪を憎む善意の警官だ。決して警察内部の腐敗に負けない信念があるが、結婚相手が悪かった。ぃや、悪かったのは妻ではなく妻の父親で、有力議員である義父は権力を誇示することに恥を感じない。金と名声を得るための悪事にも関わっている様子がありありと見える。
義父はフランシスにも男なら権力を手にすることこそが最終目標だと言い募る。NBIの肩書きを利用しようとしているのは明白だった。
 
今回の連続殺人を地元警察アコスタと追ううち、この殺人の後ろに隠されている大きなものが見え始める。義父に何かあれば直ちに連絡するよう指示されるが、フランシスは出来るだろうか。特に組んでいるアコスタは粗野ではあるものの、彼自身も犯罪と警察腐敗を憎む同士だった。


 
ダニエルを一人前の殺し屋として育てるタタン、フランシスを権力側の人間として育てようとする義父。それぞれ本物の親子のような絆で結びついているかにみえたが、彼らを動かす真の権力者にとっては、誰もがコマに過ぎず、そこに又大きな力が加わることになる。
誰もが信念を持って行動していたはずなのに、簡単にねじ曲げられる運命。この物語の最後に立っていられるのはたった数人しかいない。だが、彼らでさえ、いつ他の者に取って変わられるかは分らない。
本作は実話を元にした作品です。


 

 

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