『蘇える金狼』(1979) - Resurrection of Golden Wolf –

entry-image_282
警察の存在は完全に無視された世界で起きる、ハードボイルド。これは松田優作あってこその悪対悪の作品だ。「探偵物語」の彼が大好きで一度観てみたかった。銃を片手に身体を張って情報を入手し、莫大な金を手に入れる。結構地道な努力が必要で、誰でも情報が簡単に入手できる21世紀には通用しないんだろーなー。

■蘇える金狼 - Resurrection of Golden Wolf -■

蘇える金狼_00

1979年/日本/131分
監督:村川 透
脚本:永原秀一
原作:大藪春彦「蘇える金狼」
製作総指揮:角川春樹
撮影:仙元誠三
音楽:ケーシー・ランキン
主題歌:前野曜子「蘇る金狼のテーマ」

出演:
松田優作(朝倉哲也)
風吹ジュン(永井京子)
佐藤慶(清水)
成田三樹夫(小泉)
小池朝雄(金子)
草薙幸二郎(竹島)
真行寺君枝(清水絵理子)
岸田森(石井)
安部徹(鈴木光明)
千葉真一(桜井光彦)
結城しのぶ(牧雪子)
南原宏治(磯川)

解説:
大藪春彦の同名小説の映画化で、遊戯シリーズでコンビを組んだ村川透監督、松田優作主演のハードボイルド。

あらすじ:
朝倉哲也は表向きは平凡なサラリーマンだが、夜は身体を鍛えて巨大資本乗っ取りを企んでいる。朝倉はある日、手に入れた麻薬で上司の愛人、永井京子を手なずけた。しばらくして会社幹部達の横領事件をネタに、桜井という男がゆすりに来ていることを突き止めた。朝倉は桜井と会社を巧みに利用して社長令嬢の絵理子と婚約することに成功するが、その一方で嫉妬に燃える京子は、ある決意をしていた-
 (allcinema)


実際に起きた「三億円事件(1968年)」に模したオープニング。白バイ警官になりすました主人公・朝倉が現金輸送の途中で1億円を易々と奪う。しかし実際の事件と違う点が一つ。朝倉は輸送人に発砲し命を奪っている。ここで朝倉は金のためなら人の命など何とも思わない冷たいただの犯罪者と分かる。
今時の映画やドラマなら、命は奪わないとか、奪ってしまったとしても、いつまでも悩んだりして、こんな悪い王道な犯罪者は主人公にならないのではないか。ここがある意味、新鮮だった。

蘇える金狼_119:1分けのださいカツラを被り、黒縁の眼鏡をかけて出勤する朝倉。大企業に就職するため夜間大学にも通って、長い間、努力してきたことが窺える。もちろん、この会社“東和油脂”に入社したのも、重役達の怪しい動きを下調べした上でのことかもしれない。
奪ったものの、紙幣ナンバーが控えられていた1億円を“使える金”にするため、ヤクザやヤクザ顔負けの議員をやり込め、次なる標的は横領、背任を犯している“東和油脂”の重役達。朝倉は簡単に手玉に取る。
莫大な自社株と社長の娘まで手に入れた朝倉。全てを手に入れ頂点に登ったかの彼は、ランボルギーニ・カウンタックを走らせ、笑いがこみ上げるのを我慢できなくなる。が、、これはハードボイルド。必ず女で躓くのだ。

蘇える金狼_1270年代のこの作品にリアルさは無い。
いくら利口で腕が立つといっても、こう簡単にヤクザや大企業の重役を手玉に取ることは無理だろう。それに全編、犯罪が行われているのに警察の捜査という現実が全く描かれていない。が、一人の男の栄光と死という物語に、そんなものは不要なのだろう。これはあくまでハードボイルド作品なのだ。
汚い大企業の重役、松田優作のアクション、美しい女達。事が起こるのは会社の会議室という無機質でありながら秘密が漂っている場所の他、まるでフランス映画『冒険者たち』に出てくるような廃墟(スケールは小さい)、教会の地下など、いかにも映画という舞台。朝倉の奇妙な隠れ家は、サイコ犯罪者に共通するような部屋でもあった。ラスト近く、女に葬る赤い紙吹雪も印象的。

が、一番好きなシーンは、空港ロビーを歩く朝倉の後ろ姿。長い足を交互に動かし歩く朝倉。しかし足を少しひねったかと思うと倒れ込んでしまう。うまい、うまいよ、松田優作!あんな倒れ方は見たことがない!
そして好きな台詞は「駄目」「残念だったね」とかの敵を小馬鹿にしたかのような朝倉の言葉。これは朝倉というよりは松田優作の言葉なのかな。あと殺し屋・岸田森の台詞「ギャラ高いよー」「恨みは深いよー」がここだけ妙にリアルで笑える。
思えば、これも大好きなドラマ「傷だらけの天使」でも、こういった一部リアルでコミカルな演出が最高だった。今の日本のドラマを見る気が起きないのは、こういった粋で正直なものを感じられないからかもしれない。

 松田 優作
蘇える金狼_18山口県下関市生まれの俳優、歌手。
刑事ドラマ『太陽にほえろ!』で人気を獲得。1970年代後半から東映セントラルフィルム作品、角川映画作品でアクションスターとして人気を博し、1980年代からは演技派としても認められるようになる。主演したドラマ『探偵物語』など、後進への影響も大きく、男気にあふれ情に厚く、その勇猛な人間性と卓越した演技力から、1980年代を通じてもっとも重要な日本の映画俳優の1人、カリスマと評価されている。1989年、40歳で癌により死去。

■主な出演作(映画)
・狼の紋章(1973)
・竜馬暗殺(1974)
・暴力教室(1976) ・ひとごろし(1976)
・人間の証明(1977)
・最も危険な遊戯(1978) ・殺人遊戯(1978)
・乱れからくり(1979) ・俺達に墓はない(1979)
・蘇える金狼(1979) ・処刑遊戯(1979)
・野獣死すべし(1980)
・家族ゲーム(1983)
・それから(1985)
・ア・ホーマンス(1986/監督とも)
・華の乱(1988)
・ブラック・レイン(1989)
(Wiki:松田優作)

 

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

コメント

コメント一覧 (2件)

  • しろくろShowさん こんばんはー
    そうそう!成田三樹夫の台詞も良かったですね!まるで何かのコントみたいで。
    松田優作のイントネーションは独特のものがある上にぼそぼそしゃべりだから、ついよーく聞いてしまうんですよね。あの面白い台詞大好きです。
     
    今回調べて知りましたが、優作映画は結構あるんですねー。
    「野獣死すべし」も観たことがないんです。どこかで放送してくれないものか..

  • こんばんは。
     
    この映画は私の廻りの映画好き仲間で同じく優作の「野獣死すべし」と並んでよく宴会芸のネタになってました(ーー;)
     
    居酒屋で意に沿わず美味くない皿が出てきたら「○○がね~、どーしてもって喰いたいって言うから~」と成田三樹夫になりきって言い訳し、店内の有線で曲が変わりそうになると「大阪有線!続けるんだよ~」などとと言ってみたり・・・
     
    そのうちどこかで「○○さん、アンタも狸だねえ」と誰かに言ってみたいものです。

Contents