『悪魔の赤ちゃん』(1974) - It’s Alive! –

entry-image_267
まだ観てなかったシリーズ続きますー。これ『悪魔の赤ちゃん』は、ホラーというよりサスペンス・ドラマですね。可愛い息子が罪を犯してしまった。その時、両親はどう対峙するのか。親として、人間としてどうあるべきなのか。犯人が子供であるとき警察はどう対応するのか。周りの人が試される。しかもそれが生まれたての赤ちゃんでモンスターだったら!?

悪魔の赤ちゃん - It’s Alive! –

ItsAlive

1974年/アメリカ/91分
監督:ラリー・コーエン
脚本:ラリー・コーエン
製作:ラリー・コーエン
製作総指揮:ピーター・パクストン
撮影:フェントン・ハミルトン
音楽:バーナード・ハーマン
出演:
ジョン・P・ライアン(フランク・デイヴィス)
シャロン・ファレル(ルノール・デイヴィス)
ジェームズ・ディクソン(パーキンス警部補)
ウィリアム・ウェルマン・Jr(チャーリー)
アンドリュー・ダガン(教授)
ガイ・ストックウェル(ボブ・クレイトン)
ダニエル・ホルツマン(クリス・デイヴィス)

解説:
平凡な夫妻の間に誕生した新生児は突然変異の怪物だった―。
ただ単に赤ちゃんを怪物視して描いたモンスター映画ではなく、前触れのない厄災に見舞われた夫婦の焦燥や世間との軋轢を主眼にした異色の恐怖映画。特にクライマックスの、傷ついた赤ん坊と対峙した父親の感情の変化は、この異様な作品の中で奇妙にドラマチックな感動をもたらす。
 (allcinema)

Contents

あらすじ:

デイヴィス家に2人目の子供が産まれようとしていた。しかし今か今かと待っていた父親のフランクが目にしたものは分娩室で行われた血の殺戮。しかも犯人は生まれたての自分の息子だった。その悪魔の赤ちゃんは病院から脱走し、警察の目をかいくぐりロサンゼルスの闇へと消えていく-

見どころと感想

ItsAlive

「悪魔の赤ちゃん」といえば『ローズマリーの赤ちゃん(1968)』を思い出すけれど、あれは赤ちゃんそのものは最後に出てくるだけで、その産まれるまでの母親の恐怖とまさかの残念な結果を描いていた。対して本作はまず産まれる。しかしその赤子は突然変異の殺人モンスターで、分娩室にいた医師や看護師をいきなりなぶり殺して姿を消す。

このモンスター赤ちゃんの姿はなかなか画面にきちんと映らず、観ているこちらは自分の悪趣味加減と戦いながらたくましく想像することになる。このあたりは前回の『バスケット・ケース』とは大きく違うところ。しかし本作はこの想像して止まない赤ちゃんの活躍が主人公では無いという、ちょっと変わったホラー。
主人公はこのモンスターを産み出してしまった両親、とりわけ赤ちゃんの行方を追うことになる父親だ。この父親の怒り、苦悩、あきらめ、悲しみ、決断といったものが物語の主軸となる。

ItsAlive

息子が1人いる夫婦は、長い間、妻がピルを飲むことで避妊していたが、予期せぬ妊娠を知ってどうするか悩んだ末に産まれたのがこの赤ちゃん。夫フランクが病院に付き添い、ロビーで産まれるのを待っている間のちょっと落ち着かない嬉しそうな様子。続いて起こる叫び声とともに見てしまった大殺戮。その犯人が自分の生まれたての息子だと知った時の茫然自失な様子。この短い間に巻き起こった夫婦の災難は、しかしそのままでやり過ごすことが出来ないものだった。大勢の命を奪ったのは自分の分身である息子だったからだ。

この事件は瞬く間に世間に知れ渡り、夫婦はマスコミの餌食となる。この悪夢は夫婦のせいだと言わんばかりの世間の声に、同情的な捜査担当の警部補や親しい友人が夫婦の力になってくれる。
ここまで観て感じたのは、この作品に悪いヤツが出てこないところ。赤ちゃんは殺人を犯すが、異形のモンスターだから仕方ない..。夫婦の周りの人々は良心的で何かホッとするものがある。

ItsAlive

さて、何故今回このような異常出産が起こったのか。それはどうやら妻が長年服用していたピルにあるようだ。そのピルを開発した大学側は、その事実を隠蔽しようとしたりして、なかなか現実的な展開に。しかし話はそこに時間を割かない。自分の息子が犯したことの始末をつけるため、父親フランクは警察と一緒に行動し、赤ちゃんを捜索する。

追い詰めては取り逃がすの繰り返しだが、時々、見える赤子の影。それは上の息子の小学校や自宅にまで忍び寄り、物音に耳を澄ますシーンはまるでヒッチコックばりにドキドキできる。それもそのはず。音楽担当は『サイコ』『』や『タクシードライバー』のバーナード・ハーマン

ItsAlive

妻が止めるのも聞かず、自分の手で始末をつけようと赤ちゃんを探している父親フランクには、その固い決心がある種の憎悪と共に垣間見える。しかし実際にその目で初めて息子を見つけた時に流れる涙。その涙には異形であっても殺人鬼であっても、わき出てくる息子への愛が見て取れる。そしてフランクが決断し行動したこととは、社会への責任であったのだろう。

この後のラストもいい。原因がアレであるなら当然な結果だが、かなり絶望的。

監督ラリー・コーエン


アメリカ合衆国の映画監督、脚本家、プロデューサー。他人のための製作と脚本もあるが、コーエンが最も知られているのは、低予算ながら創意に富んだホラー映画、スリラー映画の監督としてである。

Wikipedia

■主な監督作
・Bone(1972)
・ブラック・シーザー(1973)
・ハーレム街の首領(1973)
・悪魔の赤ちゃん(1974)
・ディーモン 悪魔の受精卵(ディーモン)(1976)
・The Private Files of J. Edgar Hoover(1977)
・悪魔の赤ちゃん2(1978)
・ハイ・スクール・ウルフ(1981)
・空の大怪獣Q(1982)
・パーフェクト・ストレンジャー(1984)
・スペシャル・イフェクツ 謎の映像殺人(1984)
・ザ・スタッフ(1985)
・新・死霊伝説(1987)
・悪魔の赤ちゃん3 禁断の島(1987)
・殺しのイリュージョン(1987)
・おばあちゃんは魔女(1989)
・アンビュランス(地獄の殺人救急車狙われた金髪の美女)(1990)
・ホットシティ(1996)
・Air Force One: The Final Mission(2004/ドキュメンタリ)
・ハンティング(2006/「マスターズ・オブ・ホラー」の1編)
(Wiki:ラリー・コーエン)

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

コメント

コメント一覧 (5件)

  • 古い作品にはホラーに見せかけた社会派作品が結構ありますねー。
    この作品では母親じゃなくて父親にスポットを当てているのが今では珍しい気がします。
    それにしてもチャプターのタイトルまでチェックしていませんでした!そんなに面白かったですか?あー、見とけばよかった..

  • これは、後半の父親の葛藤や愛が良く出ていた作品でしたねえ
    いくら醜悪でも、犯罪をおかしていても、自分の子…
     
    報道陣がいけすかなかったのも懐かしいです
    それに、冒頭でスモッグや公害、薬害なんかの話をしていましたし、
    実は社会派ものだったんですね
     
    そういえば…DVDのチャプターの題名に吹き出しました
    ああいうところが昔のホラーだなあ、面白いです

  • 悪魔の赤ちゃん

    こ〜んにっちは♪赤ちゃん♪ …が、産まれたのは悪魔のような子だった、という古い作品です。
    父親はすぐに見つけ次第殺してもいいと了承したけど、実際に子供を産む母親からすると、絶対そんなの納得できないでしょうね。10ヶ月ずっと自分の中で育ててきた命ですよ。これって良く考えると、「赤んぼ少女」にも通じるものがあるなあ…
    この作品ではなかなか赤ちゃんの姿をみせないところが良いですね。ちらっと見え…

  • ホラーというより両親の葛藤ドラマでした。
    この赤子を例えば、乱射事件を起こした、暴走カーを運転していたなどのティーンエイジャーに置き換えてみたならば、、、ゾッとしますね、親の気持ちを考えると。だから仰る通り、後引くんですよね。
    それにラストが気に入りました。警部補に電話がかかってきた時点で嫌な予感がしましたけど。薬の副作用的なものが原因というあたりも、なんだか現代に通じるものがありますね。

  • 出ましたねえ、これも結構後引く作品ですよね。
    新生児が殺戮魔というトンデモない系ムービーかと
    思わせときながら、ボトムラインは意外にしっかり
    してるやに感じられましたなあ。
     
    父親の行動は途中ちょびっと違和感があったり
    したけど、最後はキチンとおとしてくれましたし。
     
    おっしゃる通り、ローズマリーの静謐さと対極を
    なす作品でしょうか。

Contents