日本の俳優やタレントにあまり詳しくないけれど、色々と話題になっていた本作を好奇心に駆られて観てみた。写真家であり『さくらん(2007)』の監督らしく、1シーン1シーンがそのまま芸術写真のような構図の作風。美しいたくさんの色、物に囲まれて、人形のように綺麗な主人公りりこが人間らしい感情を表に出すたび、その醜さが際立っていく。
■ ヘルタースケルター ■
2012年/日本/127分
監督:蜷川 実花
脚本:金子ありさ
原作:岡崎 京子
製作:宇田 充、甘木モリオ
撮影:相馬 大輔
音楽:上野 耕路
主題歌:浜崎あゆみ「evolution」、AA=「The Klock」
出演:
沢尻エリカ(りりこ )
大森 南朋(麻田 誠)
寺島しのぶ(羽田 美知子)
綾野 剛(奥村 伸一)
水原 希子(吉川 こずえ)
新井 浩文(沢鍋 錦二)
鈴木 杏(保須田 久美)
寺島 進(塚原 慶太)
哀川 翔(浜口 幹男)
住吉真理子(比留駒 千加子)
窪塚 洋介(南部 貴男)
原田美枝子(和智 久子)
桃井かおり(多田 寛子)
■解説:
岡崎京子の伝説的コミックを「パッチギ!」の沢尻エリカ主演、「さくらん」の蜷川実花監督で実写映画化。全身美容整形という秘密を抱えモデルの頂点に君臨するヒロインの際限のない欲望と転落への道のりを、過激な性愛描写と極彩色のヴィジュアルで描き出す。共演に大森南朋、寺島しのぶ、桃井かおり。
■あらすじ:
完璧な美貌で芸能界の頂点に君臨するトップ・モデル、りりこ。実は、彼女には絶対に知られてはならない秘密があった。彼女の美しさは、ほとんど全身に施された美容整形の賜であり、そのために免疫抑制剤の服用が欠かせなかった。だが、整形の後遺症は確実にりりこの身体を蝕んでいく。そんな中、美容クリニックをめぐる事件を追う検事の影がりりこに迫る。さらに、生まれたままの美しさでりりこの存在を脅かす後輩モデルまで出現し、次第にりりこは精神的にも追い詰められていく。 (allcinema)
田舎から上京し、全身整形を施したうえでトップモデルとして芸能界に君臨するりりこ。その毎日は写真撮影、テレビ番組出演、インタビューなどで埋め尽くされ、息つく暇もない。自宅に戻っても化粧を落とす余裕も無く、眠っているシーンさえ無い。いつもいつも綺麗なりりこ。途切れも無いフラッシュで浮かび上がる人形のようなりりこ。途切れ無い声援の中で優雅に手を振るりりこ。女子高生達の憧れの的-。
雑誌のつるつるした表紙を飾る彼女。自分の姿を鏡に映し悦に入る彼女。
だがその裏では、若い新人モデルの登場におびえ、整形の後遺症が出だした身体におののき、しかしなすすべは無い。その度に整形手術を加えても毎年年齢は上積みされていく。
そんな彼女が生身の人間としての感情を爆発させ、自分の言葉で語り(叫び)出すと、一気にその内面の醜さが表れる。陰でりりこを支える付き人の羽田 美知子はその格好の標的だ。
お偉い芸能人様にはこんなタイプも多いのだろうが、羽田への要求と命令は日々ひどくなって、羽田の恋人までまきこんでの最低の仕打ちが行われる(これらのシーンでは思わず最近の「尼崎監禁事件」を思い出した)。
本作最初はりりこがどうなるのだろうかと興味津々で観ていたが、綺麗で完璧な「りりこ」がこれでもかと画面に登場し続け、(非道い行いもあってか)その存在に段々と飽きてくる。彼女自身よりも他の登場人物に目が行くようになる。
・りりこを芸能界にデビューさせた女社長
・後輩新人モデル
・付き人羽田
・整形手術の女医
・りりこの妹
それに何より、途中途中にはさまれる今時の女子高校生達。りりこに憧れ声援を送る彼女らは、一人が右を振り向くと一斉に皆そちらを見る。りりこが言っていたように「すぐに飽き」られ「忘れられる」。
こんなりりこを利用しがっぽり儲けている女社長や整形医の存在も対照的で、50代、60代になってなお美しい桃井かおりと原田美枝子を起用しているところも面白い。
そして後輩の新人モデル(水原希子)。この子もりりことは対照的で、陶器のような美しさを持つ彼女とは違って、持って生まれた内面からにじみ出てくる可愛らしさがある。それに可愛いだけではない、理知的でドライな感じがより現代的。
年の割にはしっかりとしたタイプに見える新人だが、気をつけて。
赤い羽根が舞ってるよ。
途中から半ばうんざりしながら観ていた本作だったが、最後のワンカットに思わず声援を送りたくなった。
あの笑い方、最高だ。
ではまた