『ウィンターズ・ボーン』(2010) - Winter’s Bone –

独特のルールが支配する、血縁関係者が点々と暮らす貧しい寒村。彼らは身内であり、仲間であり、味方であり、敵でもあった――

 

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■ウィンターズ・ボーン - Winter’s Bone -■
2010年/アメリカ/100分
監督:デブラ・グラニク
脚本:デブラ・グラニク、アン・ロゼリーニ
原作:ダニエル・ウッドレル
製作:アン・ロゼリーニ、アリックス・マディガン=ヨーキン
製作総指揮:ジョアンサン・ショイアー、ショーン・サイモン
撮影:マイケル・マクドノー
音楽:ディコン・ハインクリフェ
 
出演:
ジェニファー・ローレンス(リー・ドリー)
ジョン・ホークス(ティアドロップ・ドリー)
シェリル・リー(エイプリル)
デイル・ディッキー(メラブ)
ギャレット・ディラハント(バスキン保安官)
ローレン・スウィートサー(ゲイル)
アイザイア・ストーン(ソニー・ドリー)
アシュリー・トンプソン(アシュリー・ドリー)
ケヴィン・ブレズナハン(ディタ・マンディー)
ステイシー・キーチ(リトル・アーサー)
 
解説:
米中西部の寒村で、17歳の少女は家族との生活を守るため、行方不明になった父親の行方を捜すが……。アカデミー賞で4部門にノミネートされた、衝撃の社会派サスペンス。
懸命に父親を捜すヒロインだが、親族が多い村民はなぜか彼女を忌み嫌う。それは何かのタブーに触れようとしている彼女に対する警告なのか。西部劇のバリエーションを思わせる一方、次第に物語は西部劇とは反対に、米国の地方にある厳しい現実を示唆していく。謎めいたムードと同時に底知れぬ恐ろしさを感じさせる迫真編。本作で熱演し、アカデミー主演女優賞にノミネートされた新星J・ローレンス。続いて大作「X‐MEN:ファースト・ジェネレーション」に出演し、全米大ヒットした「ハンガーゲーム」でも主演に。
  (WOWOW)
 
あらすじ:
Winter's Bone_03アメリカ中西部ミズーリ州にある、貧しい寒村に暮らす17歳の少女リー。精神を病んだ母親に代わって幼い弟妹の面倒をみて家を切り盛りしていた。
そんなある日、逮捕された父親が自宅を担保にして借りた保釈金のせいで、このままでは地所もろとも差し押さえられてしまうことを告げられる。家と家族を守るため、自力で父親を捜し出そうとするリーだったが、その前には大きな壁が次々と立ちはだかる-


 
寒風が吹きすさぶ冬のミズーリ、オザーク高原。
自宅の裏で薪を割るのは17歳の少女リー。父親は家に寄りつかず、そんな生活に耐えられなくなった母親は精神を病んでいる。幼い弟と妹の面倒もみている彼女は学校に通う余裕も無く、リスを狩り痩せた畑を耕して、なんとか家族を守っていた。
父親は薬物製造で逮捕されている。そんな父親の帰りを待っていた家族だったが、代わりにやって来たのは、保釈代行業者。自宅と地所を担保に父親に保釈金を借したが、このまま連絡もとれず次の審理に来なければ、地所と自宅全てが差し押さえられてしまうと言う。
家が無ければ家族を守ることも出来ないと、リーは少ないつてを頼りに父親を捜し始める。
 
Winter's Bone_13移動手段の無いリーが、歩いて訪ねる先は父親の兄である叔父夫婦や、父親の従兄弟の家。雪の舞う中、凍えながら歩くリーだが、その足取りはしっかりしている。ようやく辿り着き、父親の行方を尋ねるも、知らない、早く帰れと追い出され、とりつく島もない。しかしリーはあきらめない。最後にはこのあたりを仕切っている遠縁の男の元を目指し歩き続ける。

Winter's Bone_14不幸な身の上であっても力強く生きている少女の物語であったのに、このあたりから段々と登場する大人の胡散臭さが目立ち始める。一緒に薬物製造をしていたと思われる父親の従兄弟。クスリをやりながら、大きな目でぎょろりと睨む叔父。犯罪の秘密めいた匂いがする遠縁の男など、誰一人とってもまともではない。
それに加えて奇妙なのが、リーが訪れた家で、まず応対に出るのが女なのだ。それも憮然とした表情でまるで門番のように立ちはだかる。この中の男に会いたければ、まず自分を通しな、とでも言うように。
 
この作品のキャッチコピーは「家族のために 未来のために 彼女は大人になるしかなかった―」だが、そんな生やさしいものでは無い。ただの普通の大人には、これらの男達、女達にはとうてい相手をしてもらえそうにない。

Winter's Bone_06リーにとって彼らは皆、遠縁も含め親戚にあたる。長くここミズーリに住む一族だが、ミズーリ州の人々の地域性として「規制に対し熱烈で、保守的で、容易に信じない態度を採る」ということが知られている。それは州の非公式ニックネーム「疑い深い州」(The Show Me State) の由来の1つだとされている。(Wiki:ミズーリ州)
 
ここで生まれ育ったリーにも、それはしっかり受け継がれており、決して目的を見失わず、力に負けることは無い。リーが父親を捜すのは、社会のルールに則って家と家族を守るためである。しかし、そこに立ちはだかったのは、このあたりに暗黙の了解の上に横たわる、地域の、一族の、決して破ってはならないルールであった。
 


Winter's Bone_15邪魔をする壁を一つ一つ壊しながら、父親の行方を捜すリー。
それは痛みを伴ったが、同時に人の優しさにも触れることになる。余所では通用しないこの地のルールが、彼女を傷つけ、守り、結末を見せてくれることになった。
 
最後まで謎のままになる父親の保釈金を補填した男、そして父親の最後を見た者は、案外、ルールに忠実に生きることで家族を守るしかないティアドロップなのではないかな、と感じた。

 
 
しかし本当にここは現代の、あの「ゴシップ・ガール」(見たことないけど)と同じ時代のアメリカなのか?
ではまた
 
 

ジェニファー・ローレンス(リー・ドリー)
Winter's Bone_08ケンタッキー州ルイビルで生まれ育つ。14歳までに俳優になることを決め、タレントエージェントを見つけるために自分をニューヨークに連れて行くように両親を説得した。彼女は演技訓練をした経験も無かったが、オーディションを受けた際には絶賛された。
17歳の時に『あの日、欲望の大地で』に出演し、監督のギジェルモ・アリアガには「メリル・ストリープの再来かと思った」と評され、さらに第65回ヴェネツィア国際映画祭では新人俳優賞を受賞した。1990年生まれ

■主な出演作
 ・名探偵モンク -Monk(2006/1話)
 ・コールドケース 迷宮事件簿 -Cold Case(2007/1話)
 ・ミディアム 霊能者アリソン・デュボア -Medium(2007・2008/2話)
 ・あの日、欲望の大地で -The Burning Plain(2008)
 ・ウィンターズ・ボーン -Winter’s Bone(2010)
 ・それでも、愛してる -The Beaver(2011)
 ・今日、キミに会えたら -Like Crazy(2011)
 ・X-MEN: ファースト・ジェネレーション -X-Men: First Class(2011)
 ・ハンガー・ゲーム -The Hunger Games(2012)
 ・ボディ・ハント -House at the End of the Street(2012)
 ・Silver Linings Playbook(2012)
 

ジョン・ホークス(ティアドロップ・ドリー)
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ミネソタ州アレクサンドリア生まれ。グレッチェン・フィリップスと共にミート・ジョイというバンドのメンバーであった。また、仲間の俳優のロドニー・イーストマンとブレント・ゴアと共にミュージカル・グループのキング・ストラグラーのメンバーでもあった。
『24 -TWENTY FOUR-』の第1シーズンではゲストキャラクターのグレッグ・ペンティコフを演じた。HBOのシリーズ Eastbound & Down の第1シーズンではケニー・パワーズの兄のダスティン・パワーズを演じた。ABCの『LOST』の最終シーズンではレノンを演じた。1959年生まれ

■主な出演作
 ・D.O.A.(1988)
 ・コンゴ -Congo(1995)
 ・フロム・ダスク・ティル・ドーン -From Dusk Till Dawn(1996)
 ・ラッシュアワー -Rush Hour(1998)
 ・ラストサマー2 -I Still Know What You Did Last Summer(1998)
 ・パーフェクト ストーム -The Perfect Storm(2000)
 ・“アイデンティティー” -Identity(2003)
 ・マイアミ・バイス -Miami Vice(2006)
 ・アメリカン・ギャングスター -American Gangster(2007)
 ・ドニー・ダーコ2 -S. Darko(2009)
 ・ウィンターズ・ボーン -Winter’s Bone(2010)
 ・マーサ、あるいはマーシー・メイ -Martha Marcy May Marlene(2011)
 ・コンテイジョン -Contagion(2011)
 ・リンカーン -Lincoln(2012)
 ・The Playroom(2012)
 

 

 

 
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