1993年にソマリアで起きた「モガディシュの戦闘」を映画化した『ブラックホーク・ダウン』。墜落したヘリ「ブラックホーク」により遂行が困難になったある作戦。それによって激化した米兵と民兵の壮絶な市街戦を米兵の目を通して描く。
■ ブラックホーク・ダウン - Black Hawk Down – ■
2001年/アメリカ/145分
監督:リドリー・スコット
脚本:ケン・ノーラン
原作:マーク・ボウデン
「ブラックホーク・ダウン アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録」
製作: リドリー・スコット
製作総指揮:サイモン・ウェスト他
撮影:スワヴォミール・イジャック
音楽:リサ・ジェラード、ハンス・ジマー
出演:
ジョシュ・ハートネット(エヴァーズマン二等軍曹)
ユアン・マクレガー(グライムズ特技下士官)
トム・サイズモア(マクナイト中佐/車輌部隊指揮官)
エリック・バナ(フート一等軍曹/デルタ)
ウィリアム・フィクナー(サンダーソン一等軍曹/デルタ)
サム・シェパード(前線基地司令官ガリソン少将)
オーランド・ブルーム(ブラックバーン上等兵)
ユエン・ブレムナー(ネルソン特技下士官)
トム・ハーディ(トゥオンブリー特技下士官)
ロン・エルダード(デュラント准尉/スーパー64 パイロット)
ジェレミー・ピヴェン(ウォルコット准尉/スーパー61 パイロット)
ジェイソン・アイザックス(スティール大尉)
ジョニー・ストロング(シュガート一等軍曹/デルタ)
ニコライ・コスター=ワルドー(ゴードン曹長/デルタ)
■解説:
1993年に米軍が失敗したソマリアの将軍の捕獲作戦を、ノンフィクション小説を原作にリドリー・スコット監督が映画化。撮影は、クシシュトフ・キエシロフスキー監督とのコンビで知られるスワボミール・イジャック。編集は「G.I.ジェーン」以降のコンビ、ピエトロ・スカリア。撮影にはロケ撮影と野外セットを駆使。モロッコの町中に、ドラマの標的となるビルを含む巨大な野外セットを4カ月かけて建築、あらゆる角度から撮影された市街戦が展開。映画.com
■あらすじ:
1992年、内戦の続くソマリア。食料が無く民間人30万人が餓死する中、国際世論もあって米軍は2万人を派兵。国連と一緒になって平和維持活動に従事していた。だが、翌1993年になって米軍の撤退が発表されるや、ソマリアの首都を制圧しているアイディード将軍が国連平和維持軍に宣戦布告。6月にはパキスタン兵24人が殺され、米兵も攻撃対象となった。
これを受け、アメリカは敵の大将であるアイディード将軍の拉致を画策するも何度も失敗。そこで計画を変更し、アイディード側近幹部2名を拉致、敵を骨抜きにする作戦に出た。市の中心のホテルで行われる幹部会議を急襲、参加している人員もろとも拉致して、3マイル先にある米軍陣地に戻るというもので、当初は30分もあれば終了すると考えられていた。だが、市街地を覆う民兵のゲリラ戦が米兵たちを苦しめ、ブラックホーク1機を撃墜される。
退路を断たれた上に墜ちたブラックホークの守りに入った時、米軍は主導権を失って事態はますます悪くなっていく ─
公開された当時、CSのヒストリーチャンネルかディスカバリーで特集番組が放送されていて、このソマリアの戦いが実際にあった話だと知って驚いたことを覚えている。本作に登場する米軍兵士の一部は実在し、作戦コード“アイリーン”、通信時の“We got a Blackhawk down, We got a Blackhawk down”も事実である。
戦争ものの作品で主役を一人に限定するのは難しいけれど、あえて本作では主役をエヴァーズマンとするならば、彼は急遽小部隊を率いる立場になったこともあり、厳しい戦いの中で葛藤していく姿を描かれている。出発前に仲間が「戦う訓練を受けただろ?」と問いかけたのに、彼は「未来を築く訓練を受けた」と返し、エヴァーズマンは夢見る男だと笑われる。彼はまだ「何故戦うのか?」を経験として分かっていない。デルタのフートは、そんな彼に「弾が横をかすめて飛んで来たら、そんな考えは全部吹き飛ぶよ」と話す。
それが現実なのだ。でもそれはエヴァーズマンだけではない。本作を見る限り、今回の作戦の失敗にも「常識」と「現実」の差が感じられる。
命を狙われていると知っているからギリギリまで分からない幹部会議の建物を命がけで地元民に知らさせているが、それをすぐ上で見張っている米軍のヘリってどうなのか?(映画だから?)
“アイリーン”とともに米軍陣地を出発する多くのハンヴィーとヘリ。それを見かけた地元の少年から少年へ、そして民兵に連絡が繋がっていく。「米軍が動き出した」と。
デルタとレンジャーによって拉致はあっという間だったものの、大勢の民兵と怒る群衆によって街は封鎖されたようなもの。そのうえ、ブラックホークを撃墜され、この街から出ることが出来なくなってしまったのだ。想像以上の民兵の動きと群衆だったのであろうか。
デルタとレンジャー合わせて100名ほどもいた米兵はバラバラになり、皆が墜ちたブラックホークを目指す。銃と身体だけで移動する彼らに容赦なく攻撃してくる民兵たち。たとえハンヴィーに乗っていたとしても大きな差はない。20世紀も終わりの戦闘だが、もはや「人vs人」の陸地での戦い。民間人を区別している間は無かったことだと思う。
弾が飛び交い、RPGが炸裂する中で「なんで、こんな知らないよその国で、知らない人たち相手に、いったい誰が誰のために戦っているのか?なぜ、人々は撃って来るんだ?あそこで敵意をむき出しにしている人々のために、俺らは来たんじゃなかったのか?この戦いは、誰が喜び、誰が受け入れてくれるんだ?」
休みなく攻撃してくる敵。どんどん失うチームの仲間。エヴァーズマンは「あの時、こうしていれば」「もし、こうなっていれば」と悔やむ。だが、その彼にフートは言う。
「これは戦争なんだ」
「仲間の命を守るために戦っているんだ」
戦うのに、きれいごとの主義主張などいらない。弾が飛んでくればそんなもの忘れてしまう。自分の命を守り、仲間の命を守り、仲間とともに帰るために戦っているんだ。
この言葉にエヴァーズマンだけではなく、私も納得したのだった。軍に入り戦地に赴く以上、フートの言うように考えたってしかたない。「仲間のために戦い、一緒に帰る」単純にしないと、やってられない。
この映画が公開された2001年は、アメリカ同時多発テロの年だった。その後、イラクの元大統領やアルカイダの元指導者を追い詰め逮捕し、または急襲する様子をテレビの特集で見ることができる時代になった。それらに従事しているのは、やはり米軍の兵士だ。
彼らのために祈りたいと思う。
第75レンジャー連隊 (アメリカ軍)
アメリカ合衆国ジョージア州フォート・ベニングに駐屯するアメリカ陸軍の精鋭歩兵連隊である。部隊のモットーは、Rangers lead the way(レンジャーが道を拓く)および、ラテン語のSua Sponte(Of their own accord、自らの意思で)。
Wikipedia
レンジャー連隊は、通常戦闘と特殊作戦の両方を遂行できる3個大隊規模の精鋭部隊である。遊撃戦を担当し、パラシュート降下も可能である。
デルタフォース
デルタフォースは、第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊の通称であり、主に対テロ作戦を遂行するアメリカ陸軍の対テロ特殊部隊である。「デルタフォース」自体は通称だが、それをさらに省略しデルタと呼称することもある。なお、第1特殊作戦部隊デルタ分遣隊と訳される場合もある。
Wikipedia
アメリカ陸軍には以前よりグリーンベレー(陸軍特殊部隊群)が存在したが、SASで訓練を受けたアメリカ陸軍のチャールズ・アルヴィン・ベックウィズ大佐が国防総省に対テロ部隊の必要性を提唱したのが、創設のきっかけである。
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