『オーディション』(1999) - Audition

「キリキリキリ・・・」で有名な三池作ホラー。やっと観ることが出来たー(正月早々じゃないですよ、観たのは年末(-.-) 残虐描写が何かと話題の本作ですが、ホントにコワイのは「中年の純粋な落とし穴」かな

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■ オーディション - Audition – ■
1999年/日本/115分
監督:三池崇史
脚本:天願大介
製作:福島聡司 他
製作総指揮:横浜豊行
撮影:山本英夫
音楽:遠藤浩二

出演:
石橋凌(青山重治)
椎名英姫(山崎麻美)
沢木哲(青山重彦)
國村隼(吉川泰久)
石橋蓮司(車椅子の老人)
松田美由紀(青山良子)
根岸季衣(リエ)
大杉漣(芝田)

解説:
月刊誌「ペントハウス・ジャパン」に連載された村上龍の原作を、今や日本映画界の救世主的存在である三池崇史が監督したサイコ・スリラー。

あらすじ:
ビデオ制作会社を経営している青山は7年前に妻を亡くし、一人息子の重彦と寂しい日々を過ごしていた。そんなある日、青山の身の上を案じた友人の吉川は青山にとんでもない提案をする。それは映画制作と称したオーディションを開催し、その中から再婚相手を探せというものだった。そして4000通もの応募の中から選んだ女性、麻美に加速度的に魅了されていく青山。しかし彼女の愛は余りにも真っ直ぐで完全なものだった ―
(allcinema)


もっと最初から最後までギャーッ、ウゲェーーなグロホラーだと思っていたけども、初っ端は何だか昭和風な日本映画として幕開け。病気で妻を亡くし、一人息子を精一杯育てている父親――と言っても、制作会社経営の主人公は金銭的には不自由していないし、派手系な業界に属しながらも人間的には比較的穏やかで良心的で真面目に生きている。高校生の息子に「そろそろ、再婚したら?」なんて言われるほどには。

この息子の一言がこの後、彼、青山の人生を大きくねじ曲げることに ―

青山の友人が(ほぼ架空の)映画制作をする事にしてオーディションを計画。応募者は写真、履歴、趣味、作文による考え方等々全てをさらけ出すことになる。そこから再婚相手を選べば確実なのではないか?と声をかけてきたのだ、もうほとんど大学生のノリで。
罪悪感を抱えながらも気分を弾ませながらたくさんの応募書類をめくっていく青山。そして運命的な出会いをしてしまう。麻美と ―
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ま、お察しの通り、ここからダダーーっと有名な最後近くの「キリキリキリ・・」までいくわけですが、やはりグロ描写は最後のお楽しみであって、それまではそこにいくまでの過程を結構詳しく丁寧に、ねっとりと、色々な登場人物を絡めつつ哀しく描かれていく。

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いかにも薄幸そうなキリキリ女、麻美の登場から、あまりに自分の理想であると思い込んでしまった青山が麻美の罠に嵌められ、まるで蜘蛛の巣に絡め取られていくように女の掘った穴に落ち込んでいく様子。もがけばもがくほど更に動きが取れなくなっていく状態は、ラストシーンそのものでもある。
同時に麻美の過去や青山の人間的な弱点なんかも見せられて、これは起きるべくして起きたことであると観る者を納得させる作りに。といっても、麻美が何故にここまでやる人になったのかの理由付けは少し弱く、ありがちであるとも。
意外に青山の一人息子がデキルやつで、唯一の救いでもある。
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オーディションを始めた頃に感じていた自分の中の「罪悪感」にもっと真摯に対応していれば、青山はこうはならなかったのかもしれないけれど、これが青山の人間性であり、限界で弱点なのかな、とも。要するにいずれは女で失敗するタイプ。まだ若ければこれほどに固執せずともよかったのだろうに、ここは寂しい中年やもめ。全てが麻美の掌の上。黒電話が鳴ったときの麻美のニヤリの怖さといったら(-ω-)
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で、最後のお楽しみグロですが、確かに痛々しいんだけど、そのものズバリの映像は流れなくて想像して頂く形がとられている。が、その残虐行為の結果はきちんと映りますけども。三池監督作であれば『インプリント~ぼっけえ、きょうてえ~(2005)』の方がよっぽどイタくて顔が歪んでダメですわ。
それでは今年もよろしくお願いいたします。

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