『スイミング・プール』(2003) - Swimming Pool –

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ほー、これは・・ 中年女性作家と若い娘。お互い相容れぬまま同居が始まるが、徐々に娘の言動に魅入られていく作家。そして事件が起こり、ラストへ。だけど辻褄が合わない これをどうとるか。観ている側の性別や年代、経験によって違うものになりそう。だって主人公は作家だからね
 

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■スイミング・プール - Swimming Pool -■
2003年/フランス・イギリス/102分
監督:フランソワ・オゾン
脚本:フランソワ・オゾン 他
製作:オリヴィエ・デルボス 他
撮影:ヨリック・ル・ソー
音楽:フィリップ・ロンビ

出演:
シャーロット・ランプリング(サラ・モートン)
リュディヴィーヌ・サニエ(ジュリー)
チャールズ・ダンス(ジョン)
ジャン=マリー・ラムール(フランク)
マルク・ファヨール(マルセル)
ミレイユ・モセ(マルセル娘)


解説:
2人の対照的な女性の間で現実と幻想が交錯し、謎が二転三転していくさまを、幾重もの仕掛けを張り巡らせミステリアスかつ官能的に描いたサスペンス・ドラマ。監督は「8人の女たち」のフランソワ・オゾン。出演はいずれもオゾン作品に出演歴のある「まぼろし」のシャーロット・ランプリングと「焼け石に水」のリュディヴィーヌ・サニエ。
(allcinema)
 
あらすじ:
スランプに陥っているイギリスのミステリー作家サラは、出版社社長ジョンの勧めで彼の南仏にある別荘を訪れる。人里離れた気持ちのいい場所で早速、執筆に入ったサラ。だが翌日の夜半にジョンの娘ジュリーがいきなりやって来て ―


Swimming_Pool_21創作活動に行き詰まったミステリー作家。
最近、電話の一つも寄越さない出版社の社長ジョン(=恋人)の所に文句を言いに、混んだ地下鉄に乗ってまで仏頂面で押しかけると、小さな賞を取った新人君に優しく声をかけている姿が見える。「お目にかかれて光栄です。」なんて声をかけてくる、作家活動を始めたばかりの初々しい新人君。そんな気持ちはとっくに忘れてしまった。あんたには夢が一杯なんだろうけど、私はアイデアの一つも浮かばなくてイライラしてんのよ。
 
ロンドンの喧噪を離れて、南仏にある小さな村の別荘へ。
暖かい日差しに風が心地よい。隣の家さえ見えない自分一人の静寂な世界。ジョンはこっちに来る気は無いみたいだけど、まぁいい。道中、沸いたアイデアで執筆が進みそう。さぁ、シリーズの新作を書かなくちゃ。
 
 
Swimming_Pool_18これが売れっ子作家サラ・モートン。
刑事物のミステリー作家でシリーズを書いており、次作がなかなか書けない上に、ジョンともすれ違いが続いていて全てにイライラしていた。そこにジョンからの思いがけないプレゼントが。じめじめしたロンドンから、明るい太陽と乾いた風が吹く南仏へ。大きな別荘で一人っきり。日頃の憂さを晴らして開放感を満喫するにはもってこいだった。
近くに一軒だけあるカフェのウェイターが親しげに話しかけてくることさえ気分がいい。もしかして自分に気があったりして?なんて考えたりしてウキウキする。当然、執筆も進んでいた。
 
Swimming_Pool_15そこにやっかいな娘がやって来た。ジョンの娘ジュリー。
仕事にウンザリしたから生まれ育ったこの家に帰ってきたと言う。娘が来るなんて聞いてなかった。それにこの娘は単なる普通のお嬢さんじゃ無い。半裸に近い恰好で家の中をウロウロし、食事の後片付けさえしない。昼間は暇さえあれば庭のプールサイドに寝そべり、夜は夜で毎晩違う男を連れ帰る。
存在を感じるだけでイライラして仕事の邪魔になるばかりか、ロンドンから来るだろうジョンと2人だけの時間にもお邪魔だ。何せジョンは娘を溺愛している。
 
Swimming_Pool_16しばらく一緒に滞在することになった2人の出会いは最悪だったけれど、生来、人の面倒見がいいサラは次第にジュリーを理解していく。ジュリーは元々細かいことは気にしない性質。母親とは離れて暮らしているから、サラに少しの母性を見出した。それでも美貌と若さを武器に男との遊びで自分を計るジュリーは、サラがカフェのウェイター、フランクを気に入っていることを知りながら、彼を家に連れ込んでくる。サラの前で見せつけるように彼と戯れるジュリー。だが、フランクはいつもの男とは違った。彼女を拒絶したのだ。
――そして、事件が起こる


 
【ここからはネタバレ謎解きを少々】
 
Swimming_Pool_29父親ジョンへの愛だけで頭が一杯だった母親。ジョンと別れた途端に娘の存在さえ意識から無くなった母親。想い出のあるこの別荘はジュリーが育った場所だったが、母親は以来、近付くことさえせずに単身ニースに越してしまった。父親はイギリスへ帰郷。
独りぼっちになってしまったジュリー。自由奔放に男の愛を求めさすらうが、満足感も安心感も得られないまま。そして、ある夜、男から拒絶された彼女は凶行に走る。自分の愛を拒絶する者を許せないがため。サラはそんな自分を全て受け入れてくれ、秘密を守ると誓ってくれた。
 
ラストでサラはロンドンに戻る。ジョンに仕上がった作品を見せた丁度その時、ジョンの娘が社を訪れた。父親とハグする長いブロンドの娘ジュリア。おや?名前が違う。それに顔も。ジュリーとは似ていない、大人しそうな地味な女の子。
ここで観ていた我々は頭がとなることになっている。
一体、今までの物語、あのドラマチックなストーリーは何だったのか?と。
 
Swimming_Pool_12南仏で登場したのは、サラとジュリー、管理人マルセル、マルセルの娘、カフェのフランクと連れ込んだ男達
●その男達はジュリーの相手にしては年上だった。特に2人目は
●自分のシリーズ執筆をそっちのけで、ジュリーの物語を書き出したサラ
●合間に挟まる現実とも夢とも区別の付かないシーン。フランクがジュリーを、マルセルがサラを見つめ、女側がさらに挑発する
●ジュリーの母親は亡くなっていたことが分かる
 
ロンドンで
●出発前に「娘がいるから」とジョンはフランス行きを渋っていた
●帰国後、渡した原稿は情愛もの。君に似合わないとジョンに言われる
●ジョンには秘密があった
●娘は別人だった
●にやりと笑うサラ
 
Swimming_Pool_23以上の事から導き出される答えは一つ。“ジュリー”はサラが生み出した小説の主人公であり、自分の分身だ。ジョンとの間を邪魔する小娘(ジュリア)であるがゆえ、最低な女の子の設定にした。が、それもサラ自身の生き方であり求めている事でもある。サラは決して“嫌味な年増のイギリス女”なんかではなく、その仮面の下には情愛に溢れる自由奔放な女性が隠れている。ロンドンでの堅苦しい服装が、南仏で花柄の優しげなものに変わっていくことでも分かる。
夫も子供も持たず自由に生きてきて、今はジョンの恋人、というより、こそこそしている感じは“愛人”の位置づけ。ジョンは妻とは別居しているが別れていないとサラに言っていたのでは?だが、妻は亡くなっていた。ジョンが隠していた事はこの事であり、その事からサラとの関係は本気では無いことが分かる。
 
サラは自分をジュリーやジュリーの母親に置き換え、情愛もの小説を完成させた。小説の中ではジュリーの母親が書いたことになっている。
この映画の事実は
●ジョンとサラは愛人関係
●サラは南仏の別荘へ
●南仏で存在していたのはマルセルとフランク
●ジョンの妻は亡くなっていた
●完成させたのは情愛もの小説。プラスでシリーズものの一部
 
Swimming_Pool_22小説の中では奔放な娘の行動のよき理解者としてサラ自身も登場させる。事件を隠蔽する冷静さを持たせたが、マルセルとの事で内に秘めた奔放さを公表することも忘れなかった。
 
一つ、分からないのがマルセルの娘の存在。ドラマ性を持たせたかっただけなのか、本当に存在したのか。作り事の一つであるとすれば、ジョンの妻が亡くなったことを聞いたのはマルセル自身だったのかもしれない。
出版社を出る時に抱き合う父娘を見てにやりとしたサラの心中は、ジョンへの復讐を小説の中で果たした達成感からなのかも。

 
 
 

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コメント

コメント一覧 (3件)

  • スイミング・プール 【映画】

    久々にシャーロット・ランプリングの映画を観た。
     
    当然だけど、年取ったねぇ。
     
    さて「スイミング・プール」です。
     
    なかなかおもしろかったです。
     
    期待したほどではなかったけど、
    それでもおもろかったです。
     
    シャーロット・ランプリングは、売れっ子ミステリー作家。
     
    そして、編集長と不倫の関係。
     
    そして、最近二人はうまくいっていない。
     
    そこで、編集長が自…

  • >いいかがわしい香りを発散させている
    確かにそのとおりです^^
    この監督の作品は『ぼくを葬る』くらいしか観たことがなくて、あんまり詳しくはないんですが、浮き世離れした感じが作風なんでしょうか。
    『危険なプロット』←メモしときます!

  • ずいぶんと昔に観たので、もう細部は忘れちゃってるんですけど、
    オゾンらしいいかがわしい香りを発散させている、
    奇妙におもしろい映画でしたね。
     
    この作品以降、失速してしまった感があり、
    途中からこの監督の作品を追いかけなくなったんですけど、
    久々に観た『危険なプロット』はおもしろかったですよ。
     
    『スイミング・プール』と同じ、虚実ないまぜの話です。

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