カルトTVドラマ「ツイン・ピークス」の前日譚である本作。ドラマでは初っぱなにローラが殺されていることから、一体何があったのかは正確には分からなかった。そのローラを主役に、自らが「ツイン・ピークス」に捕らわれてしまったかのようなデヴィッド・リンチ監督が、ローラの衝撃的な毎日と最期の1週間を描く。
ローラの最期の1週間。知らなかった方がよかったかもしれない..。
■ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間
– Twin Peaks: Fire Walk with Me -■ 1992年/アメリカ/136分
監督:デヴィッド・リンチ
脚本:デヴィッド・リンチ、ロバート・エンゲルス
製作:グレッグ・ファインバーグ
製作総指揮:マーク・フロスト、デヴィッド・リンチ
撮影:ロン・ガルシア
音楽:アンジェロ・バダラメンティ
出演:
カイル・マクラクラン(デイル・クーパー)
シェリル・リー(ローラ・パーマー)
デイヴィッド・リンチ(ゴードン・コール)
クリス・アイザック(チェット・デズモンド)
キーファー・サザーランド(サム・スタンリー)
デイヴィッド・ボウイ(フィリップ・ジェフリーズ)
パメラ・ギドリー(テレサ・バンクス)
ハリー・ディーン・スタントン(カール・ロッド/管理人)
レイ・ワイズ(リーランド・パーマー)
グレイス・ザブリスキー(セーラ・パーマー)
モイラ・ケリー(ドナ・ヘイワード)
ジェームズ・マーシャル(ジェームズ・ハーリー)
デーナ・アッシュブルック(ボビー・ブリッグス)
メッチェン・エイミック(シェリー・ジョンソン)
エリック・ダ・レー(レオ・ジョンソン)
ウォルター・オルケウィッツ(ジャック・ルノー)
フィービー・オーガスティン(ロネット・ポラスキー)
キャサリン・E・コールソン(丸太おばさん)
フランシス・ベイ(シャルフォン夫人)
マイケル・J・アンダーソン(小さな男)
フランク・シルヴァ(キラー・ボブ)
アル・ストロベル(片腕の男)
■解説:
番組の起点になった“ローラ・パーマー殺人事件”に至る1週間を描くことを通じ、ピーカー(TV版のファン)にとって最大の謎がついに解き明かされるのか……という“特別編”が本作。映画単体として見ても、リンチはこれまで以上に一層ミステリアスでセクシーな、超カルトというべき独自の世界を展開。後にTV「SEX AND THE CITY」に出演するK・マクラクランなど番組おなじみのメンバーに加え、歌手D・ボウイ、TV「24」のK・サザーランド、そしてリンチまでが続々と登場したのも見ものだ。 (WOWOW)
■あらすじ:
アメリカ北西部に位置するワシントン州の川で一人の若い女性の死体が発見される。FBIゴードン捜査主任の下でデズモンド捜査官らが捜査にあたるが、犯人はわからないままデズモンドが失踪してしまう。
それから1年。州郊外の小さな田舎町ツイン・ピークスに住む高校生ローラ・パーマー。勉強も出来、奉仕活動にも参加する学園のクィーンである彼女だが、それは表向きの顔で、その裏ではドラッグやセックスに溺れる不健康な毎日を過ごしていた-
ビニールにくるまれ、冷たい川で見つかった女性の死体。
現地の様子を身体全体で表現する赤いドレスの女。
地元警察のFBIへのアレルギー。
捜査に向かった有能FBI捜査官の失踪。
今回も最初から飛ばします。
案外普通っぽく始まった冒頭に、いきなり登場する赤いドレスの女性。
なぜ、なぜ、これが必要なんだ…と、頭を抱えることになる。
が、ここで立ち止まっていては、どんどんストーリーが進んでいくのでデズモンド捜査官のようにさらりと流すのがいい。ほんの数秒で事件を扱う地元警察の様子を説明してくれた彼女に感謝しながら。
頭を後ろから何度も殴られたことで命を失った女性テレサ・バンクス。事件前の行動を捜査するデズモンド捜査官と鑑識のスタンリーだったが、単身テレサの住んでいたトレーラー・パークを調べに出たまま、失踪してしまうデズモンド。
これらのことを調べにトレーラー・パークまでやって来たクーパーは、この殺人事件は始まりに過ぎないと直感する。相棒のアルバートに「次の標的は高校生の女の子。毎日ドラッグやセックスに溺れている」と予言のようなものを話し、皮肉屋アルバートは「おぉ!全米高校生の半分まで絞れたな!」と返す。
全米高校生の半分て..。1990年代にすでにアメリカの高校生は、これほど乱れているのか?と驚いた。
では、その乱れ具合とは。
それはこの後、登場する学園クィーンローラ・パーマーによって説明される。
昼は真面目な高校生。放課後は必要な人に食事を配るボランティアをし、社会の役にたつ。しかし、その陰では学校のトイレでドラッグ、家族との夕食後はセクシーな服に着替えて家を抜け出し、怪しげな場所に出入りする。
家庭にも友人にも恵まれた彼女の何がいったい、ここまでさせるのか?
母親から引き継いだ幻影をみてしまう能力のせいか?
特にローラを苦しめているのは、その幻影の一つ「ボブ」。ボブはローラが幼い頃から繰り返しローラの部屋に出入りしては彼女に暴行をはたらいた。
これが事実だろうが妄想だろうが、ローラは忘れたい。それ故の毎日の乱れた生活か。
そして、もう一人。こういった幻影をみる者がいる。FBIのデイル・クーパー。
彼は扱う事件に関しての夢や幻影をみることがあり、それをヒントに事件を解決していく能力がある。
しかしクーパーの夢が白で、ローラの夢が黒なのではない。それらは分かれていることもあるが、時に混じり、用心しなくては黒く渦巻く闇の世界に連れて行かれてしまう。
この闇の世界に連れて行かれそうになっているのはローラだけではない。連れて行かれ、すでに取り込まれてしまった人物こそが、テレサ殺人の犯人であり、ローラを殺すことになる犯人だ。
その闇の世界の一歩前にあるのが「赤い部屋」。
白と黒のタイルが床に敷かれ、リンチ監督の好きなドレープカーテンで区切られた奇妙な空間だ。ここに来ることが出来るのは、この世界の住人と特殊能力を持つ限られた人間のみ。
ここでの会話は、普通の人間にはとても理解できるものではないが、小さな男の言う「ガルモンボジーア」とは“痛みと悲しみ”と定義される何かで、クリーム・コーンの形態を取っているらしい。それを盗んだのがキラー・ボブ。ボブはそれを盗み、これと目を付けた人間にふるまっているようだ。そしてターゲットとして目を付けるキーになるのがどうやら「指輪」のようだ。
「指輪」は本作にもドラマシリーズにも繰り返し出てくる。それは限定された一つの指輪ではなく、各個人が意味を持って大事にしているものだ。そこに取り付くキラー・ボブ。取り付かれるのは指輪を持ち、心に何か弱いものが巣くっている人間だ。誰にでもボブのターゲットになる可能性はある。
と、核心に触れる部分をつらつら書いてみましたが、「ツイン・ピークス」未見の方には何が何やらわかりませんよね
自分がドラマ「ツイン・ピークス」を初めて観たのは随分前だけど、どっぷりはまりました。おそらく初見のその日は、あのオープニングの曲が1時間ごとくらいに何十回も流れていたはず。
魅力ある奇妙なキャラクター達とストーリーにローラ殺しの犯人が分かるまではぐいぐい引きつけられ、テレビを消すことが出来なかった。けれども後半は何が何やらで記憶があまり定かでは無い..。1年ほど前にも観たはずだけど、やっぱり後半の記憶は
もしこれから観てみようかと思われる場合は、一つの区切りは犯人が分かるところまで(確か10数話くらいだったと思う)。その後、ついていけなくなったら、そのまま本作「最期の7日間」をご覧下さい。これでOK。
「最期の7日間」では、どんどん綺麗になっていくローラも見所の一つ。
「指輪」=「結婚」と「子殺し」というお話で、あっ、と思い出すのがリンチ監督デビュー作『イレイザーヘッド』。全然違うストーリーでありながら、何か底辺に流れているのは同じように感じる。
リンチ監督はよっぽど結婚生活と子育てに悩み苦しまれたのだろうか..
コメント
コメント一覧 (4件)
ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間
ドナ以外は、テレビ・シリーズの皆様、大集合で懐かしかったです。「観たら、よけいに訳分からなくなった」との声もあったみたいですが、あくまで、リンチ監督の遊び心作品でしょうか?かなりスパイシーですが、リンチ監督の摩訶不思議ワールドを堪能できただけで充分だった気がしました。個人的に、大好きな、赤い部屋の幻想シーンがふんだんで嬉しかったのでした。しかし、ローラ役のシェリル・リー、「世界一美しい死体」…
ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間 【映画】
「ツイン・ピークス」の映画です。
最近では、TVのその後を映画にする話が浮かんでは消えてを繰り返していたりします。
「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間」は、
コメントありがとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
>懐かしい映画やドラマ
昔好きだったものを一つ書いたことで次々思い出されたことと放送が最近
あったこともあって、懐かしい作品シリーズになっちゃってます。
(なかなか映画館に足を運べないのもあるんですが)
>カイル・マクラクラン
ギリシャ彫刻のような男前でした。
今は有名なドラマに出演しつつ好きなワインで実業家的なことをやっている
ようですね。
懐かしい映画やドラマが続きますね。
そういえば、カイル・マクラクランはいまどうしているんでしょう?