『モンスターズ/地球外生命体』(2010) - Monsters –

国境まであと125km-
地球外生命体がメキシコで繁殖。隔離された危険地帯から脱出を図る男女の姿をリアルに描き世界を驚かせた新世代SFパニック。

 

Monsters_01

 
■モンスターズ/地球外生命体 - Monsters -■
2010年/イギリス/94分
監督:ギャレス・エドワーズ
脚本:ギャレス・エドワーズ
製作:アラン・ニブロ、ジェームズ・リチャードソン
製作総指揮:ナイジェル・ウィリアムズ、ニック・ラヴ、ルパート・プレストン
撮影:ギャレス・エドワーズ
音楽:ジョン・ホプキンス
出演:
スクート・マクナリー(アンドリュー・コールダー)
ホイットニー・エイブル(サマンサ・ワインデン)
 
解説:
ハリウッド最新版『ゴジラ』に抜擢された新鋭、ギャレス・エドワーズ監督の長編デビュー作。未知の生物が地球に棲息しているという状況を、ある男女2人の視点からドキュメンタリータッチで描く。スタッフは少人数、編集などの仕上げ作業は自宅で、というDIY的製作方式が話題に。総製作費約130万円という超低予算にも関わらずハイクオリティな、映画製作における新時代の到来を感じさせる見応え十分なSFパニック映画。
  (スターチャンネル)
 
あらすじ:
Monsters_062009年。NASAが太陽系に発見した地球外生命体のサンプルを採取。しかし地球への帰還に失敗し、サンプル共々、メキシコ上空で探査機は大破する。その6年後、メキシコで繁殖した地球外生命体は人類を脅かすまでになり、アメリカとメキシコ軍によってメキシコの半分をも占める地域がモンスター地帯として隔離されていた。
軍の作戦を取材中のカメラマン、コールダーは現地に足止めされた社長令嬢サマンサをアメリカ国境まで無事に送り届けるよう命じられるが、既に港は閉鎖。危険地域を通る陸路を使いアメリカ国境を目指すことになるが-


 
邦題に「地球外生命体」が付いていて昭和の香りが漂うが、原題は『Monsters』。それが何を指しているのかは最後まで観れば分かる。また、あらすじの社長令嬢は、ぎゃあ、ぎゃあと騒ぐ女の子を想像しがちだが、これも全く違っていた。エイリアンものでありながら地に足の付いた、決してパニックものではないロード・ムービーと言えるのが本作。
 

Monsters_10

 
メキシコで地球外生命体サンプルが落下してから6年。増殖したその生命体にメキシコの半分は乗っ取られてた形になっていた。その生命体=モンスターは、定期的に海から川を遡上、内陸に入って木に卵を産み付ける。その繁殖行動中は何者をも敵とみなし、邪魔立てするものに攻撃する。
Monsters_13モンスターの行動範囲と人間の居住地が交差するため、かなりの犠牲が出た街や人々。アメリカ軍とメキシコ軍は協力して、モンスターの封じ込めを試みていたが、なかなか上手くいかず、メキシコの半分は立ち入り禁止の危険地帯となってしまった。
 
そんな軍に同行してスクープを追う新聞社のカメラマン、コールダー。何年もかかってようやく軍の心臓部にまで辿り着いた。そこへ上司から連絡が入り、メキシコで怪我をした社長の娘、サマンサをアメリカの国境まで無事に送り届けろと言われてしまう。そんな無茶なと抵抗してみたものの、無駄なことであった。
サマンサを列車で港まで連れて行き、船に乗せるだけの仕事のはずであったが、モンスターの攻撃で線路が破壊され途中までしか行けなくなったあたりから、トラブルに次々と見舞われ始める。
 
Monsters_08カメラマン、コールダーは新聞社に所属するものの、なんとかスクープを手に入れ一旗揚げたいと思っている。プライベートでは昔の恋人との間に息子が一人いるが、既に継父がいるために自由に会うことが出来ず不満を抱えている。酒に酔い、サマンサをくどき、、しかし、自分の行動を後で考え反省すべきことは反省する、ごく普通の常識人で、ごく普通の男だ。息子も陰ながら愛している。
アメリカ国境への道中、サマンサに尋ねられる。
‘人の不幸でお金をもうけて、後でイヤにならない?’
コールダーは答える。
‘モンスターに惨殺された子供の写真は5万ドルで買ってくれるが、普通の子供の写真はいくらだと思う?ゼロだ。’
どんな状況の、どんな時代になっても、人は他人の不幸にお金を払い時間を使う。そして安心するのだ。
 
Monsters_09新聞社社長の娘。婚約者もいて人生に躓きはない。
しかし、どうしてそんな彼女が一人でメキシコに?理由は語られなかったように思うが、見落としたかな..。
大金持ちの令嬢となれば、さぞかし我が儘で大変なことになるだろう、と思っていたが、サマンサは違っていた。髪は短くこざっぱりとしていて化粧っけも無い。道中、親切にしてくれたメキシコ人一家に感謝することも忘れない。コールダーの失敗をことさら咎めることもなく、他者を思いやる気持ちも忘れない。
大きなダイヤの付いた婚約指輪を外した時に、‘重荷が降りた’と話す彼女は、良識ある普通の女の子に見える。
 
違う世界に生き、接点の無かったはずの、ごく普通の男女。
Monsters_04では、本作のタイトルにもなっているモンスターとは?
故郷から無理に地球に連れてこられ、生物の本能である繁殖を始めただけなのに、自分たちにとっての‘エイリアン’たちが攻撃をしかけてくる。特に繁殖行動中に攻撃されれば、反撃するのは当たり前のこと。そして自分たちを攻撃してきた、それらの武器を忘れるはずもない。
どちらが被害者なのか?

 
メキシコの危険地帯はどんどん広がり、その境界線に住む人々は軍の攻撃に巻き込まれていく。道端でモンスターに殺された少女を発見したコールダーは、思わず覆いをかけてやる。カメラのシャッターは切らなかったようではあるが..。
アメリカとの国境にようやく辿り着いた2人が目撃したものは、高い塀にぐるりを守られた強国‘アメリカ’。邪魔なもの、不要なものをその高い塀の外に全て追いやったつもりでいる現代のローマ。
しかしローマは侵略され、分解し、最後には消えてしまった-
 
ではまた
 
 

 
 

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コメント

コメント一覧 (8件)

  • モンスターズ/地球外生命体 【2010年製作:映画】

    パッケージのメインビジュアルを見ると、
    「第9地区」ぽいなぁ、と。
     
    メインビジュアルが似ていると言うことではないですよ。
     
    タイトルとメインビジュアルをみて、
    そう言う印象を持ったと言う事です。
     
    で、見始めると、
    その印象がそれほど的外れではなかったな、と。
     
    コミュニケーションの獲れない未知の生物が現れて、
    その生物がいる地域を壁で囲って隔離していて、
    その生…

  • こちらにも、コメントありがとうございます。
     
    ほんとに、本作はサバイバルなロード・ムービーですね。
    主演の女の子がよかった、すごく自然で。
    若い監督の最初の作品というのは、いいものですね。

  • こんばんはー、僕も数日前に見ました(^^)
     
    まーた最近ありがちのウソドキュメンタリーかな?と思いながら見出したんですが、これはなかなか良かったですねー。
     
    モンスター抜きで男女のロードムービーとして見ても十分成立したんじゃないかとも思えました。
     
    あとホンモノの廃墟とか座礁船のカットインの仕方が怪獣映画のリアリティを上げていたような気がします。

  • モンスターズ/地球外生命体

    「低予算」はアピールポイントなのか。
     
     
     モンスターズ/地球外生命体(2010年 イギリス映画)     75/100点
     
     
     
     130万円の製作費で作られた、という

  • >3週間で作り上げた
    !3週間ですか!凄いですねー。
    仰る通りますます『ゴジラ』が楽しみになります。
    変で大げさなドラマ性のない作風を期待します!

  • コメントの件、もしそうでしたらすいません!
    歳のせいでボケが始まったのかも知れません…。
     
    この監督、元々視覚効果アーティストなので、たぶんCGも自作じゃないでしょうか?
    それにしても、3週間で作り上げたなんて、学生の自主製作映画よりも早くて、クォリティも高いなんて、脅威としか言いようがありませんね。
     
    こちらこそ宜しくお願いします!

  • コメントありがとうございます。
    とうとう寒くなってきましたね。
     
    リンクの件、わざわざご連絡ありがとうございました。
    リンクをはらせて頂いた後、何かの形で連絡させて頂いたようにも思うのですが、
    記憶が定かではありません…。
    こちらこそ勝手にはらせて頂いた形になって申し訳ありませんでした。
    今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
     
    >『ミスト』の続編
    確かに!たんたんとした空気感が似ているかも知れません。
    外国ロケでCGを結構使っているのに、130万は凄いですよね。
    監督自らCG作業されたのでしょうか。

  • どうもすみませんでした。
    リンクを貼って頂いているのに、気が付きませんでした。
    当ブログでも、早速リンクさせて頂きました。
    何か不都合な点がありましたらお手数ですがお知らせください。
     
    この監督のハリウッド版『ゴジラ』は少し楽しみです。
    『モンスターズ』は、初見の時には『ミスト』の続編のような感じがして、結構好感が持てました。
    何と言っても、130万と言う製作費には驚くばかり。
    ハリウッドには、この精神を思い出して欲しいもんです。

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