こう見えてコスチュームもの映画、ドラマも好きな管理人momorex。
かつてWOWOWで放送されていた「ボルジア家 愛と欲望の教皇一族」。その時代と生きていた人々の背景を探ってみる。
■ボルジア家 愛と欲望の教皇一族 -The Borgias-■
アカデミー賞に輝く名優 J・アイアンズ主演。
史上最もスキャンダラスなローマ教皇アレクサンデル6世と
その一族の愛と欲望を描いた歴史ドラマ。
TVドラマ2011年~/カナダ・アイルランド・ハンガリー
監督:ニール・ジョーダン、サイモン・セラン・ジョーンズ他
企画:ニール・ジョーダン
脚本:ニール・ジョーダン
製作総指揮:ニール・ジョーダン、マイケル・ハースト他
出演:
ジェレミー・アイアンズ(ロドリーゴ・ボルジア)
フランソワ・アルノー(チェーザレ・ボルジア)
ホリデイ・グレインジャー(ルクレツィア・ボルジア)
ジョアンヌ・ウォーリー(ヴァノッツァ・カッターネイ)
ロッテ・ファービーク(ジュリア・ファルネーゼ)
デヴィッド・オークス(ホアン・ボルジア)
ショーン・ハリス(ミケロット)
エイダン・アレクサンダー(ホフレ・ボルジア)
コルム・フィオール(ジュリアーノ・デッラ・ローヴェレ)
サイモン・マクバーニー
デレク・ジャコビ(オルシーニ)
■解説:
“史上最もスキャンダラスなローマ教皇”、アレクサンデル6世とその一族。彼らが欲望のために権力をふるった時代をドラマティックに描く、空前絶後のセンセーショナル大河エンターテインメントが、今回の放送が日本初上陸となる本作だ。全米では第2シーズンに突入する最新ヒットドラマ。企画・製作総指揮と第1・2話の監督、全話の脚本を『クライング・ゲーム』『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』の鬼才N・ジョーダン監督が手がけたのも話題。
Contents
■あらすじ:
猛烈な野心をもってローマ教皇の座を目指すスペイン出身のロドリーゴ・ボルジア枢機卿は、前代の教皇インノケンティウス8世が崩御した後、卑怯なやり方を使ってコンクラーベ(教皇選挙)を勝ち抜いて即位し、教皇アレクサンデル6世となった後も周囲を権力で支配しようとする。教皇でありながら美しい愛人を持ち、一族を使いあらゆる手段を使って教皇の座を守ろうとする。愛、権力、暗殺、、、それぞれの野望がいま動き出す-
WOWOW
ロドリーゴを首長とするボルジア家。なぜにこれほどまでの権力を欲するのか。
政財界を代表するあらゆる社会の中でトップに君臨し、力を手に入れたいと願う人間は、古今東西を問わず存在し続けている。
日本の時代劇でたまに登場する「越後屋、おぬしも悪よのう」の「越後屋」に相当する影で陰謀を操る悪いやつ。中世などの時代設定で作られた海外映画、ドラマにはこの悪の設定として「枢機卿様、司教様」が登場することがある。
参照1: 「ダークエイジ・ロマン 大聖堂(2010)」
参照2: 「THE TUDORS~背徳の王冠~(2007)」
参照3: 『マリー・アントワネットの首飾り(2001)』
ほとんどが権力を欲するあまり、結局は自爆するという設定が多いが、なぜ「神の前では皆等しく・・・」などが教義の宗教界にも権力なるものが存在したのか?
ボルジアの時代
ローマ教皇
日本では「ローマ法王」と言われることが多い。
カトリック教会の最高権威者であり、ローマ司教として、初代ローマ司教、第一の使徒ペテロの後継者。そのため教皇の座は聖ペテロの聖座と呼ばれる。枢機卿達の選挙により選出され、ペテロがキリストから天国の門の鍵を預けられたことから、地上でキリストを代理する。歴史的には4世紀から全教会に対する首位権が主張された。精神の指導者であるが、中世・ルネサンス期には広大な教皇領を領有し、君主のような世俗的権力も保持していた。
WOWOW
枢機卿
枢機卿というのはローマ教皇に次ぐ高位の聖職者で、教皇の自由意志で任命され、教皇の助言にあたる。
敬称は猊下(げいか)。そして現教皇が崩御、もしくは退位の際には、この枢機卿団の中から次の教皇を枢機卿団自ら選挙(コンクラーベ)で決定する。
選挙と言えば聞こえはいいが、このドラマの冒頭部分で繰り広げられたように、教皇に選ばれるためには裏側での謀略が大事なポイントだ。教皇が絶大な権力を持っていた中世・ルネサンス期のコンクラーベは政治的駆け引きの場だった。
コンクラーベ
コンクラーベ(ラテン語: Conclave)とはラテン語で「鍵をかける」の意味。
選挙参加者は外部との接触を一切断たれ、システィーナ礼拝堂に寝泊まりし選挙を行う。選挙会場は文字通り外から鍵をかけられた。
トム・ハンクス主演の映画『天使と悪魔(2009)』でも詳しい様子が描かれている。
イタリアの時代背景とローマ教皇
栄華を誇ったローマ帝国が、異民族の侵入や内戦により徐々に崩壊へと向かっていた3世紀。
皇帝コンスタンティヌス1世(在位306年~337年)は帝国の再建を試みており、内戦においてキリスト教徒の助けを借りたこともあり、313年ミラノ勅令を発してキリスト教を公認した。380年には、テオドシウス1世によってキリスト教が国教とされた。
それ以前は、ご存じの通りキリスト教徒は迫害を受けていた。キリストが十字架に架けられたのもローマ帝国の手による。
その後もローマ帝国は異民族の侵入(ゲルマンの民族大移動など)や内戦が続き、小さな国に分割、独立しては統合される時代が続く。しかし、そんな中でもラヴェンナから、教皇の居るローマにかけての南北に細長い部分は、8世紀初頭まで征服できなかった。こうして後の教皇領となる部分が出来上がった。
中世の時代、このような状況下でカトリック教会は唯一安定した組織だと見なされ、大きな政治権力を握るようになった。ローマにいる教皇はイタリアの一部を直接統治していたが、その影響力はイタリア全域にとどまらずキリスト教化されたヨーロッパ中に及んでいた。
(Wikipedia/WOWOWより抜粋)
こうしてみると、ローマ教皇の立場というのは単なる「カトリック教会の最高権威者」であるだけではなく、ヨーロッパ全体の統治者であるとも言える。この絶大な権力を手に入れるため、様々な謀略を尽くし、教皇の椅子を勝ち取ったロドリーゴ・ボルジアだが、ドラマで描かれていたような謀(はかりごと)ぐらいでは、手に入れることは出来なかっただろうと想像できる。実際は何年も前から計画され、着々と進められていたのではないだろうか。
ロドリーゴ・ボルジア
ロドリーゴ・ボルジアは1455年~1458年在位の教皇カリストゥス3世の甥にあたる。
叔父カリストゥス3世に枢機卿として大抜擢され、その後、5人の教皇に仕えることになる。叔父在位の1457年から教皇になるまで、教皇に次ぐ権力を持つ「副尚書(ふくしょうしょ:副長官・副首相などの意)」を勤め、経験と富、人脈を形成していった。叔父の権力、富、(おそらく)女を間近で見て過ごし、いつかは自分だと常々野心に燃えていたことであろう。
当時、堕落していたのはロドリーゴに限らず、高位聖職者達のモラルは堕ちきっており、多くの者が金と女に情熱を傾けている時代であった。
ドラマ内で教皇に選任された直後、今後は公人として生きることになるから、今までのように一緒に生活は出来ないと妻に話す。すると妻は
あなた、浮気はしないでくださいよ。
私も清貧の誓いをたてようかしら
と返す。
ロドリーゴが反応したのは「清貧の誓い」。「そんなバカらしいっ!」と言ってのける。
えっ あなたは聖職者、それも教皇様ですよね?
第1話はロドリーゴ・ボルジアが聖職売買をも使い、アレクサンデル6世として教皇についたところから始まる。しかしこの魅力的な権力の座は、既に他の枢機卿から狙われており、いきなり家族もろとも暗殺されそうになる。
それを事前に察知し、すんでの所で止めた上、暗殺者を味方に寝返らせる影の主役が息子チェーザレ・ボルジア。
チェーザレ・ボルジア
聖職者として登場するが、その実は軍人であり政治家。大学で法律を学び、武芸全般にも秀でていた。
1492年8月に父・ロドリーゴがアレクサンデル6世として教皇の座を得たこの年に、チェーザレはバレンシア大司教として異例の抜擢を受け、翌年にはバレンシア枢機卿に任命されている。
しかし彼は聖職者として生きるより、軍人として使命を全うしたいと考えており、父親であるアレクサンデル6世にも度々願い出ていた。
ドラマでもちらりと話が出てくるが、ローマ教皇とフランス国王シャルル8世の確執。チェーザレはフランス軍侵攻時には間に立ち、特使として行き来している。その後、フランス国王ルイ12世の治世時には、枢機卿及びバレンシア大司教の地位を返上し、フランスに滞在(これにはアレクサンデル6世とルイ12世の裏での密約があったとされている)。かねてからの願いだった軍人としての途を行くこととなる。
一方で、彼は目的のためには手段を選ばない冷酷な政治家とも表される。
ドラマ第1話で既にそれは証明されており、寝返らせたばかりの暗殺者に元の雇い主であるオルシーニ枢機卿を毒殺させている。
ドラマに出てくるボルジア家の子供達は4人。
右上から左回りに チェーザレ、ホアン、ルクレツィア、ホフレ。
兄弟仲は良く、とりわけチェーザレとルクレツィアは妙な噂が出るほど、仲が良かった。
子供達、特にルクレツィアは父アレクサンデル6世によって、一族の繁栄のため政権闘争に翻弄されることになる-。
子供達の母親ヴァノッツァ・カッターネイ
教皇アレクサンデル6世の内縁の妻。
1460年のマントヴァでの教会会議において、当時枢機卿であったロドリーゴ・ボルジアと出会う。2人は恋仲になったが、ロドリーゴの聖職者という立場上、正式に結婚する事はできなかった。
しかし2人が事実上、夫婦で子供がいることは公然の秘密であり、ドラマの中ではアレクサンデル6世の即位式において家族の位置づけで扱われている。
ニール・ジョーダン
このドラマ化を企画、全ての脚本を書き、製作した。
アイルランドの映画監督・脚本家。
ゴシック・ホラーや歴史物、恋愛物などを手がけ、ハリウッドで活躍するアイルランドを代表するストリーテラーである。
『クライング・ゲーム』でアカデミー脚本賞を、『マイケル・コリンズ』でヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を、『ブッチャー・ボーイ』でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞している。
↓の作品を確認すると、結構好きで観ていた映画が多かった。
■主な監督作品
『狼の血族』 The Company of Wolves (1984)
『モナリザ』 Mona Lisa (1986)
『プランケット城への招待状』 High Spirits (1988)
『俺たちは天使じゃない』 We’re No Angels (1989)
『クライング・ゲーム』 The Crying Game (1992)
『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』 Interview with the Vampire: The Vampire Chronicles (1994)
『マイケル・コリンズ』 Michael Collins (1996)
『ブッチャー・ボーイ』 The Butcher Boy (1997)
『ことの終わり』 The End of the Affair (1999)
『ギャンブル・プレイ』 The Good Thief (2002)
『プルートで朝食を』 Breakfast on Pluto (2005)
『ブレイブ ワン』 The Brave One (2007)
ジェレミー・アイアンズ(ロドリーゴ・ボルジア)
イギリスの俳優。
1988年公開のデヴィッド・クローネンバーグ監督作 『戦慄の絆』 で演じた双子役が高く評価され、以降はハリウッド作品にも多数出演。1990年公開の 『運命の逆転』 でアカデミー主演男優賞を受賞。
最近はコスチューム映画には欠かせない存在となっていますね。
1948年生まれ。