『私はゴースト』(2012) - I Am a Ghost

iTunes Storeで見つけたインパクトある表紙絵。これは観るしかあるまいて・・・と始めてみると、主演女優さんのお名前もあってか、なんかどこからともなく漂ってくる和製ホラーな感じと、単なるゴーストハウスものでは無いちょっと複雑な感じに引き込まれ、怒濤のラストまで一気に進む。さて、彼女は一体どうなるのか…


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■ 私はゴースト - I Am a Ghost – ■
2012年/アメリカ/75分
監督・ 脚本:H・P・メンドーサ
製作:H・P・メンドーサ
 
出演:
アンナ・イシダ
ジニー・バロガ
リック・バーカート

解説:
「私は死んだの…?」成仏できない霊魂が霊媒師と共にその死の謎を解き明かす、哀しくも恐ろしい心霊ホラー。

あらすじ:
郊外の一軒家にとり憑く、彷徨える亡霊エミリー。だが、雇われ霊媒師シルヴィアの力を借りながら、成仏できない自らの運命に隠された秘密をひも解いてゆく。彼女はなぜ死んだのか、そしてなぜ成仏できないのか――すべての謎が明らかになるとき、想像を絶する恐怖が解き放たれる ―
(iTunes)


 それにしても同情しますわ、地縛霊の人には… 毎日毎日、同じ事を繰り返しているんですよ、楽しい事も辛い事も。
本作の主人公エミリーもそれは同じ。
I_Am_a_Ghost-movie2012_19-2c100年ほど前の時代だろうか?この大きなお屋敷で彼女は一人目覚め、目玉焼きを作り、家を掃除し、買い物に出かける。そしていつもある部屋の前でどこからともなく響く声を耳にし、恐怖に怯える。屋根裏部屋からも物音がして見上げはするものの確かめには行かない彼女。怪我をした掌を抱え洗面所でくずおれながら、また翌朝ベッドで目を覚まし同じ一日を迎える。

けれどもある日、自分の名を呼ぶ女性の声を聞く。
I_Am_a_Ghost-movie2012_12はっきり聞こえたその声に何者なのか?と尋ね返すエミリー。その声は言う。「あなたは死んだのよ。さぁ、唱えて。私はゴースト、私はゴースト、私は・・・」
雇われ霊能力者シルヴィアはもう何度もエミリーと交信していた。彼女を成仏させるために。依頼してきたのは現在この家に暮らす家主で、あまりに頻繁に起きるポルターガイストに恐怖したからであった。

本作は幽霊エミリーと霊能力者シルヴィアの掛け合いが基本的なストーリーだが、確かな存在として登場するのはエミリー一人。
シルヴィアは声の主として登場するに過ぎず、エミリーも言うようにどちらが幽霊なのかは定かでは無い。奇妙な現象におののくのは現在の家主だが、反対にエミリーも生きていた頃の追体験として不気味な音に恐怖する。エミリーに聞こえるのは追体験としての屋根裏部屋の物音と、幽霊となってから聞こえてくる正体不明の声とシルヴィアの語りかける声。この辺りが同時進行で起きる上、エミリーの存在感溢れる実態が、一体誰がゴーストで誰が生きているのか、今はどの時代なのかに悩まされる。
だが見て下さい。
I_Am_a_Ghost-movie2012_22間違いなくエミリーです。それも赤く色づく画面から、怒りや憎悪、哀しみや怨念が霊と共に溢れ出す。幽霊なのは間違いなくエミリーで、それもかなり手強い地縛霊。
ところが初っ端にこんな言葉が ―

霊は墓や家だけでなく 人の心にもとり憑く エミリー・ディキンソン

エミリーは普通の女性に見えるけど、家族写真はあるものの何故生きていた頃の追体験に家族は出てこないのか?大きな家にたった一人の孤独な彼女。シルヴィアとの交信の中で一つずつ明らかになっていくエミリーの人生。彼女が抱えていた問題。
そこには大きな秘密が ―
 
 
 
 
 
以下はネタバレ】

  
 
 
 

 
  
 
実は分かりにくい(私だけか…)
シルヴィアは除霊にあたってこの屋敷にまつわる事を調査しており、エミリーと家族がうまくいっておらず父親の死後、母親はエミリーを見捨て妹を連れて家を出たことも知っていた。だから死ぬ前の彼女はこの大きな屋敷に一人寂しく暮らしている。だがその母親の行動には理由があった。エミリーは心の病を抱えており妹の首を絞めたりする奇行がひどく、母親はエミリーを湖に沈めて殺してしまおうとさえしたが、夫が亡くなったことをきっかけにエミリーを一人屋敷に置き去りに。エミリーは屋敷で心の病=多重人格障害だけと暮らすことになった。
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悪魔憑きとも思えるような心の病。エミリーの心に巣くう様々な物の怪が発するノイズが彼女を襲う。そして生きていた頃、彼女を苦しめた外の世界の物音までもが ―。湖に沈められた時の水音や地鳴りのような怒りの沸点音。それらがずっと彼女の後をつきまとう。
そして終盤になってようやく姿を現した彼女の中の悪魔。悪魔は言う。「今までお前の名前で呼び続けられた屈辱・・・。今こそ復讐するぞ」
悪魔は彼女に飛びかかる、鋭いナイフを持って。
しかしその悪魔は彼女の心の中の多重人格の一つだ。エミリーは悪魔に殺されたのではない。自分で自分の腹を刺し絶命したのだった。

しかしここで一つ疑問が。
“悪魔”として登場した暗い穴のような目をした男は最後には怯え震えるただの男となっていた。目の前では自分の腹を刺すエミリーの姿。どちらが多重人格の一つなのだろうか・・・?
I_Am_a_Ghost-movie2012_16-2cこの気弱そうな男に取り憑いていたのが“エミリー”だったとしたら?それが霊だろうと多重人格の一つだろうと同じ事。男は最後にエミリーを追い出そうと戦ったのだとしたら。そういえばエミリーが愛おしそうによく眺めていた例の家族写真だが、子供たちの性別が分かりにくい。女の子にも見えるが男の子にも見える。上の子はもしかしたら↑この男だったのかも…
どちらにせよ全てシルヴィアの妄想だったのかもしれない。だって映像は全て古いブラウン管に映し出されたかのように四隅が丸く縁取られていた。

ということで、(ネタバレと言いながら)何か判然としない最後を迎えたこのホラー。その割にところどころギョッとさせられたのも事実で、ずっと続く不安感を煽るノイズ音や音楽と共にとてもイヤなしこりを残した作品でした。けっこうオススメ
DVD化はまだなのか、今のところはiTunesか楽天showtimeなんかでの動画視聴になるのかな

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