『クロコダイルの涙』(1998) - The Wisdom of Crocodiles

「血液の中の愛が僕を生かし、憎悪が僕を破壊する」― ただの生き血というだけではなくて、その成分(持ち主の感情)までもを選んで飲まなくちゃ生きられない美男子ジュード・ロウ。この作品は吸血鬼モノって記憶していたんだけど、今回観て、果たしてそれはどうだろう?と思い始めた。

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■ クロコダイルの涙 - The Wisdom of Crocodiles – ■
1998年/イギリス/95分
監督:レオン・ポーチ
脚本:ポール・ホフマン
製作:デヴィッド・ラッシェルズ 他
撮影:オリヴァー・カーティス
音楽:ジョン・ラン 他
 
出演:
ジュード・ロウ(スティーヴン・グリルシュ)
エリナ・レーヴェンソン(アン・レヴェルス)
ティモシー・スポール(ヒーリー警部補)
ケリー・フォックス(マリア・ヴォーン)
ジャック・ダヴェンポート(ロシェ巡査部長)

解説:
現代のロンドンを舞台とした異色のラブ・ストーリー。“吸血鬼”にまつわる怪奇幻想に満ちた要素をとり入れ、孤独な若者の破滅的な愛と殺人の物語が展開していく。

(Movie Walker)

あらすじ:
医師スティーヴンは自分を愛してくれる女性の生き血を定期的に吸わねば生きていけないという性を持つ青年。多くの女性を誘惑し襲っては生き長らえてきたが、偶然出会ったアンを心から愛してしまったために血を吸い殺すことが出来ない。そうするうちに自身の身体の破壊が始まってしまい ―


寂しげな女性を誘惑してはのど笛に噛み付き、血を吸って殺して生きているスティーヴン。と言っても彼の正体は判然としない。普通に昼間に外を歩いているし、鏡にも映る(ま、その手の吸血鬼は他にもいるけど  icon-arrow-circle-rightハンガー』)

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愛している振りをして淡々とベッドまで運び、相手がロマンチックの最高点に達したところで大きく口を開いて喉元を襲うという情け容赦の無いやり方。というのも、彼はただの血液ではなくて、自分への愛情で溢れている女性の血液を飲むことが必要なのだ。愛に満ちた血は我が身の中にしみ渡り、疲れた細胞を活性化させる。
反対に憎しみに満ちた感情の血液は彼を傷つけ破壊する。最近の彼の獲物はいざとなると驚きと憎しみをたたえた大きな目で彼を見つめながら死んでいく。殺されようとしている時なんだから当たり前とも言えるが、そのため、彼は自分の肉体の衰えを感じ取っており、早急に愛に満ちた血を必要としていた。

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そんな時に出会ったアン。彼女はいつもの女性たちとはどこか違う。だからスティーヴンはあまり時間が無いというのに、いつもとは違ってじっくり付き合うことにした。そして相手と自分の愛情を計ることにしたのだ。自分の愛が高まれば、相手の愛も高まるのかもしれない・・・
と、同時に世間では行方不明だった女性の遺体が発見されたと報道している。彼は色々な意味で追い詰められていた ―

彼がアンと出会った頃には、彼は自分の呪われた性にうんざりしているようにも見える。かといって自分の命を台無しにしてしまう勇気も持てず。血の付いたシーツを取り替え、木綿のシーツの下には血液を通さないビニール製のシーツを敷くことも忘れない。我が身を呪いうんざりしながらも、女性と出会い襲いかかることに恍惚を覚える。

彼は言っていた。人間の中には、脈々と受け継がれてきた哺乳動物の野生が隠れている。そしてその内側には爬虫類が身を潜めている。爬虫類は生きるために獲物を襲う。それは食べて生きるためであって、決して楽しんで殺しているわけではない。
自分もそうだと言いたいのだろうか・・・

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「生き血を飲まなくては死んでしまう」という一点だけをとれば、彼の正体は吸血鬼となる。が、ただの白血病患者だったのかもしれないし、ひどい妄想男だったのかもしれない。大勢の被害者がいるのは確かなものの、いつからなのか、何年前からなのか、何十年も前からなのかが分からない作りになっていて、どうも判断出来ない。それでも確かに言えることは、彼は時にとても獣っぽく、ドキッとさせられる場面がある。
そういうことから、これはジュード・ロウを主役にした雰囲気ホラーといえなくもないが、よく考えてみると吸血鬼モノってのは、得てしてそういうロマンチックな雰囲気ホラーであることが多いのだった。

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