『トランストリップ』(2013) - Magic Magic –

これは… え、これで終わり?っていうところでホントに終わってしまった。観ながら「こうなるんじゃない?この人がこうなんでしょ?」って考えてたでしょ。実は「登場人物達がオカシイんじゃなくて、観ているあんたがヘンなんだよ」って言われたような気分・・・。

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■ トランストリップ - Magic Magic – ■
2013年/チリ・アメリカ/98分
監督・脚本:セバスティアン・スィルバ
製作:クリスティーン・ヴェイコン 他
製作総指揮:ジョヴァンナ・ランドール 他
撮影:クリストファー・ドイル
音楽:ソーンダー・ジュリアーンズ 他
 
出演:
ジュノ・テンプル(アリシア)
エミリー・ブラウニング(サラ)
マイケル・セラ(ブリンク)
カタリーナ・サンディノ・モレノ(バーバラ)
アグスティン・スィルバ(アウグスティン)

解説:
ジュノー・テンプルが体当たり演技で第46回シッチェス・カタロニア国際映画祭主演女優賞受賞。”観る人”を不安にさせるため上映中止された国も出た、メンタルブレイク・サイコ・サスペンス。〈シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2014〉で劇場公開。
(allcinema)
 
あらすじ:
従兄弟の大学生サラと仲間が暮らすチリに初めて旅行したアリシア。内向的な彼女はサラだけが頼りの旅だったが急遽、サラが急用で旅行先を離れることになる。精神的なより所を無くしたアリシアは、旅行仲間が自分に意地悪をしていると思い始め、精神的に不安定になっていく ―


初っ端からすごく変わってる。セーターを着ている人の胸元が妙な歌と一緒にゆらゆら映って、酔っ払っているかクスリをやっているみたい。でもこれ、誰の視点か分からない。それでもこれだけは分かる。この作品はきっと変わってる。
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こんな感じで始まるから、こちらも身構える、身構える。
冒頭のシーンはアリシアとサラはじめ、旅行する御一行の待ち合わせシーン。場所はサラの住む家で目指すバカンス先は郊外の海に浮かぶ島にある別荘。メンバーは従兄弟同士で仲の良いアリシアとサラ。サラはここ、チリの大学に通っていてこちらに住んでいる。3人目のメンバーはサラの恋人アウグスティン、4人目はアウグスティンの姉バーバラ、5人目の最後はアメリカ人ブリンク。皆、同じ大学に通う友人同士でアリシアを除いてスペイン語が出来る。
ここで既にアリシアは孤独感を感じ始めている。
 
Magic_Magic-movie2013_18だいたい、チリのメンバーがバカンスに出かけるのは分かるのだが、どうしてアリシアが参加することになったのかは説明されない。特にアリシアは内向的で引っ込み思案。サラにベッタリ依存しているように見える。グループ旅行に全く向いていないアリシアだというのに、更に悪い事に空気が読めない。
この時も、すぐにでも出発する事になっていたけど、まずサラの家でシャワーを浴びてから出発したいと言い、それを曲げない。もちろんそれらは全てサラから皆に伝えてもらった。
「面倒くさい子ね」バーバラはスペイン語で呟いたが、こういった事には耳ざといアリシアでもあった。
 
こんな感じでぽんぽんとなんでも言い合うチリメンバーと、俯いたままのアリシアが1台の車で出発した。だが、すぐにサラだけが戻る用事が出来てしまい、アリシアは自分も一緒に戻るとパニックに。この段階でも充分面倒なのだが、一応みんなに説得された形でサラを除くチリメンバーとアリシアは島を目指して進むことになった。
ここからは、更なるアリシアの偏執狂的な妄想が幕開くことに ―

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一言で説明すると「精神的不安定女子に引っかき回された大学生グループの災難」なお話となるのだが、それに行き着くまでに大学生と一緒にこっちが引っかき回されて散々な目にあう。彼女の知ってか知らずかの突拍子もない動きにカメラが調子を合わせ、更に不安にさせる映像と音を送ってくるのだ。
 
5人のとりとめも無い会話が炸裂し、それでなくても纏まりのない車内に突如響く「MINNIE THE MOOCHER」(キャブ・キャロウェイ)。選んだのはアリシアで、皆、冷たい視線を送るが、元々このCDが車内にあった事に文句を付けて欲しい。纏まりのないグループは更に騒音をまき散らしながら進んでいく。
姉弟知り合いの家に寄った時に見つけた子犬の件も、アリシアの精神を直撃する。最初からそのままにしておけば良かったものを、一度拾い上げて結局道端に捨てるという残酷さ。
 

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アリシアにとっての残酷はまだまだ続く。森にあるキャビンでのレジャーの一つ「狩猟」。キャビンには至る所に動物の剥製が飾られ、これ見よがしに生きている動物の絵も飾られている。アリシアが撃たないで!と頼んだのに遊びで鳥を撃ち殺したブリンク。彼女はその亡骸を拾って鞄に入れ、ブリンクは彼女に謝ろうとするが、うまく言動が噛み合わない。
眠れない中、ようやくサラが到着する。皆で泳ぎに出かけ崖から海にジャンプして遊ぶ。だが飛び込めないアリシア。ここの描写が非常に長く、一度、足がすくんでしまったらもう無理なのに、何度も飛ぼうとするアリシアに付き合うのも面倒下そうな面々…。

Magic_Magic-movie2013_23-2アリシアだけが悪いとは思わないけど、今回の旅行参加は間違っていたと言える。よかれと思ってサラは誘ったんだろうけども。黄色いフード付きレインコートを羽織るアリシアの後ろ姿は、とても大人には見えず、ほとんど小学生のようだ。けれども子供じみていたのはチリメンバーも同じ。特にサラの恋人アウグスティンの本性には辟易した。意地悪ブリンクの方が分かりやすいだけまだマシに思える。
 
最後にはもうこれ以上どうしようもない程の精神錯乱を来たすアリシア。この辺りで、もしかしたら精神的にまいっているのは“サラ”で、この“アリシア”というのは彼女が生み出した「本音」という妄想ではないのか?などとホラーらしく色々考えながら観ていたのだが、、
このラストはどうなんでしょう・・?いいんでしょうか、こんなので?
結局は「チリの僻地で起きた若者グループの悲劇」という事なんでしょうか?
ずっとゆらゆらするブランコに乗せられて、ようやく降りられるという時に後ろからドンッと押されて落とされた感じ。「”観る人”を不安にさせるため上映中止された国も出た」というのも、あながち信じられる作品でございました。