『ジェイコブス・ラダー』(1990) - Jacob’s Ladder

前にも一度観たはずなんだけど内容はすっかり忘れ、、 機会があればもう一度観たいぞーっと自分の中ではおもしろ作品に指定していた本作。30年近く前の古い作品ではあるものの、21世紀の今でも充分楽しめる。ただし同じようなオチを持つ作品はこれ以降、随分あったとみえて、ラストの予想は以前よりつくように。

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■ ジェイコブス・ラダー - Jacob’s Ladder – ■
1990年/アメリカ/115分
監督:エイドリアン・ライン
脚本: ブルース・ジョエル・ルービン
製作:アラン・マーシャル
製作総指揮:マリオ・カサール 他
撮影:ジェフリー・L・キンボール
音楽:モーリス・ジャール
 
出演:
ティム・ロビンス(ジェイコブ)
エリザベス・ペーニャ(ジェジー)
ダニー・アイエロ(ルイ)
マット・クレイヴン(マイケル)
プルイット・テイラー・ヴィンス(ポール)
エリク・ラ・サル(フランク)
ジェイソン・アレクサンダー(ギャリー)
ヴィング・レイムス(ジョージ)
マコーレー・カルキン(ゲイブ)

解説:
旧約聖書のヤコブの話をヒントに、悪夢と現実の間で翻弄されていくベトナム帰りの男の奇妙な体験を描いたサスペンス・スリラー。光と影を巧みに使った刺激的な映像やホラー感覚あふれる描写が非常に印象的な、ベトナム戦争がもたらした悲惨な結果を違った方向から描いた異色作。意外なラストが唸らせる。

あらすじ:
ニューヨークの郵便局員であるジェイコブは最近夢と現実の区別がつかなくなるほど奇妙な出来事に遭遇していた。疾走する地下鉄に乗る得体の知れない人々。掛かりつけの医者の死亡。自分を轢き殺そうとした車に乗る異様な人物。そしてベトナムの悪夢や幻覚までもが見え始め、その勢いは加速度的に、日々度合いを増すばかりだった。そんな時、ベトナム時代の戦友から電話が入るが相手は何かに怯えているような様子だった ―

(allcinema)


ニューヨークに暮らすベトナム帰還兵が見る悪夢。
顔の無い人々や、女性に絡みつく悪魔のような生き物。そのうち、ベトナム出征前に亡くした息子の姿まで見るようになり、何が現実で、どれが幻覚なのか分からないまま命まで狙われるようになったジェイコブ。けれども、それさえ現実のことなのか分からない・・・
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彼に分からないのに観ているこっちが分かるはずもなく、不安をあおるホラーじみた映像=ジェイコブの見るものを延々と見させられ、作品のほとんどの間、彼と一緒に頭を悩ませる羽目に(-.-)

とにかく彼には悪夢を見るだけのトラウマが充分すぎるほどある。
美しい妻を持ち、男子三兄弟の父親でもあった彼は幸せな毎日を送っていた。だが三男を車の事故で亡くしたことから夫婦間がうまくいかなくなり離婚。その後、ベトナム戦争に参加する。ベトナムでは仲間とバカをやって楽しい時間を持つことも出来たが、最後の戦闘はとても激しく、彼自身も大怪我を負い危うく死にかけるところだった。
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帰還後は郵便配達員として、ニューヨークで同僚の恋人ジェジーと暮らしている。その毎日に不満は無いものの、最近、奇妙なものを見始めた。それは理由もなく、突然目の前に現れる。とても人間とは思えないような人々、悪魔のような生き物、ベトナムでの記憶の断片・・・
最初は時々だったソレが頻繁に起きるようになり、あわせて見知らぬ車に追いかけられ命を狙われるような事さえ起き始める。お前はもう死んでいる、というソレに大きな声で叫び、拉致された車から飛び降りては怪我を負う。
 「オレは死んでない!」
 「助けてくれ!助けて!」

恋人はその都度優しく接してくれる。恋人だけじゃない。別れた妻や子どもたちも心配そうに見舞いに来てくれる。だがどうしても好転しないこの状況。
そこにベトナムの仲間が連絡をとってきた。
「どうしても話したいことがある。頭がおかしいなんて言わないでくれ。最近、何かおかしなものが見えるんだ…」
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【ここからはネタバレが】
 
 
 
 
おかしなものが見え始めるという内容は知っていてこの作品を観始めたんだけど、冒頭のベトナム戦闘シーンでいきなり兵隊たちが苦しみ始めたことから、あー、敵の化学兵器か・・・ とは思ったんだよね。そのせいで後遺症的なものが起き始めたのかと。

だいたいニューヨークの最初のシーン、地下鉄のところもかなりおかしい。ゴミだらけでがらがらの地下鉄。話しかけても答えずにじっと見つめてくる女性。軍のブーツを履いているらしい眠っているホームレス。服の下から何やら不気味なものがちらっと見える。駅が閉鎖されているからとしても何故、ホームから線路へ?地下鉄の線路に水たまりは危険な気がする。ジェイコブを轢き殺そうとするかのように走っていた電車。乗っているのは顔のないヘンな人々。
そしてここでベトナムの映像が入る。
「助けてくれ」
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この地下鉄のシーンは、そのままベトナムでのジェイコブの様子なんですよね。
答えない女性はジェイコブの大怪我を手当てしている看護師か?顔を隠して眠っているらしいホームレスは死んで倒れている兵士で、服の下から出てくる不気味なモノは腹から出ている内臓で腸だろう。ネズミが走り、不潔な水たまりだらけの戦場、ジェイコブめがけて飛んでくるのは各種の弾や手榴弾。人々の顔が無いのは死んだからなのか、敵兵たちなのか。
もう、こう言うしかない。
「死にたくない。助けてくれ」

でもこの時、ジェイコブは銃剣で刺されて死にかけてた。見つかったのは、刺されてからかなり経った頃で、医者の元に運ばれた時にはとても危険な状態だった(そう言えば、どこかのシーンで「この飛び出てるのは腸だろ」という台詞もあったなー)。
ジェイコブが見るおかしな悪夢全てが「お前は死んでいる」と彼に指を指す。だが彼はそのたび叫ぶのだ。
「死んでない!助けてくれ!」

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ジェイコブは妻や亡くした息子、恋人といる時にはとても穏やかで幸せそうだ。だが、あと一人。彼を精神的にも肉体的にも楽にする人物が登場する。整体師のルイ。
ルイはジェイコブを必要以上に困らせず、心配させずに落ち着けて、必要十分な会話をしながら施術し楽にしてくれる。その会話の中にとても重要なものがあった。
「死を恐れ生き長らえていると、悪魔に命を奪われる」
「死を受け入れると、それらから解放されて悪魔は天使に変わるんだ」

最初聞いた時には意味がわからなかったジェイコブ。だがラスト近く、妻子の暮らす自宅の階段で、光を浴びながら座っている三男ゲイブを見つけた時に、それらの言葉が彼の頭上からもう一度降ってくる。
「死を受け入れると天使が現れる」
そこには、上に行こう、と父を促すゲイブの手が。ジェイコブはとても幸せそうな面持ちでゲイブの手を取る。もう何も心配ない。自分もゲイブももう一人ぽっちではない ―

こうやってラストを迎えた本作。
結局、ジェイコブは戦場で亡くなっており、怪我を負ってから死ぬまでの間に見た夢ともいうべき内容だった。でも、その夢の中には、彼の大事な人生が色々な形で詰まっていた。息子を亡くした事による終わりの無い苦しみ、愛する妻。それとは反対に男性らしい正直な気持ちで女性にモテる自分を想像する。魅力ある郵便局員のジェジーとは単なる同僚(か、よく見かけるだけの女性)。何かと手助けしてくれるドアマンのサム。“サム”はジェジーの隣人としても登場し、氷を持って彼を助けた。整体師ルイは彼にとっては心の中の導師ともいうべき存在だろう。そしてラストでは三男ゲイブを天使として登場させ、ゲイブに救いを求め、自分自身とゲイブを救ったのだった。

でも、本作はこれで終わりでは無かった。実はこれが一番コワイ。
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