『ペインレス』(2012) - Insensibles

脈々と続いていくDNA。その特殊な能力は、ある時代では“悪”に、ある時代には“善”になり得る。

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■ ペインレス - Insensibles – ■
2012年/スペイン・フランス・ポルトガル/101分
監督:フアン・カルロス・メディナ
脚本:フアン・カルロス・メディナ 他
製作:アドルフォ・ブランコ 他
製作総指揮:マヌエル・モンゾン 他
撮影:アレハンドロ・マルティネス
音楽:ヨハン・セーデルクヴィスト
 
出演:
アレックス・ブレンデミュール(ダビッド・マルテル)
トーマス・レマルキス(ベルカノ)
デレク・デ・リント(ホルツマン)
ラモン・フォンセレ(カルセド)
ベア・セグラ(マグダレーナ)

解説:
スパニッシュホラーが注目されるきっかけとなったヒット作「REC/レック」シリーズで知られる脚本家L・ベルデホが新たに脚本を手掛けたサスペンスホラー。スペイン内戦時代の1930年代と、2000年の現代という2つの時代から物語が始まり、“痛みを感じない子どもたち”の存在を手掛かりに、やがて70年の隔たりが埋められていく。2つの時代をつなぐミステリーなど、本作で劇場長編デビューを飾ったJ・C・メディナ監督の才気走った演出が見どころだ。出演は「氷の国のノイ」のT・レマルキスなど。

あらすじ:
1931年、内戦時代のスペイン。なぜか痛覚を持たない子どもたちが次々と生まれ、暴力的で“痛み”を理解できない彼らを恐れた政府は、子どもたちを隔離施設に収容する。一方2000年の現在。深刻な悪性リンパ腫が見つかった医師ダビッドは、両親に骨髄移植への協力を求めるが、両親は実はダビッドが養子であり、自分たちでは移植に適合しないことを告げる。ダビッドは自らの生存のため、実の親を探し始めるのだが ―

(wowow)


深刻な悪性リンパ腫の治療のために両親に骨髄移植を相談したダビッド。だがそこで思いがけず自分が養子であることを知り、実の親を探すことになる。彼のこの出生の秘密を知る旅が、過去に起き、埋められた歴史の1ページを開くことになる。

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1931年。内戦時代のスペインのある村で痛覚を持たず、涙液分泌が無い子供たちが次々に産まれる。彼らは生まれつき“痛み”を知らないために遊び感覚で自らを傷つけ、それに他人までも巻き込んでとても危険な存在となっていった。治療方法は無く、ある日、親の元から強制的に連行され、無期限の監禁状態に置かれることに。同時に彼らは極秘の実験対象となり、いずれ政府や軍に利用されるのは明白だった。

10数名の少年少女の中でも特に反抗的で暴力的な少年は“ベニグノ”の名付けられ、とりわけ厳しい監視下に。何故なら彼はまだ子供ながら自分の意思にそぐわない場合は、他人を傷つけ命を奪うことも簡単にやってのける。まるで彼には痛覚と同時に人の心も持っていないようだった。
そこに目を付けたのが1940年代のナチスである。
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痛覚を持たない子どもの集団が大人を襲うチャイルド・ホラーみたいなものかと思っていたら大違い。スパニッシュ・ホラーに度々出てくる歴史の犠牲者となった子どもたちの物語。中でも特異なDNAを持って産まれたために軍に利用され、生涯自由を奪われた少年の脈々と続く哀しい情念。
だがそれをいったん断ち切り、明るい未来へと繋げたラストが秀逸である。彼らはきっとこのDNAを人々に託したのだ。過去のような使い方はせず、人々のため、子どもたちのため、未来のために使ってくれ、と。

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