『クロッシング』(2009) - Brooklyn’s Finest

この映画もいいよねー。低所得層の街、ギャング、刑事、群像劇・・と好きな要素が詰まってる。リチャード・ギアは苦手だったんだけど、この作品で好きになったなー。ちゃらけたダメ男じゃないイーサン・ホークもいつになく眉間に皺寄せてる。そう言えばこの映画の主人公達は笑わないなー

■ クロッシング - Brooklyn’s Finest – ■

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2009年/アメリカ/132分
監督:アントワーン・フークア
脚本:マイケル・C・マーティン
製作:ジョン・トンプソン 他
製作総指揮:ダニー・ディムボート
撮影:パトリック・ムルギア
音楽:マーセロ・ザーヴォス

出演:
リチャード・ギア(エディ)
イーサン・ホーク(サル)
ドン・チードル(タンゴ)
ウェズリー・スナイプス(キャズ)
ウィル・パットン(ホバーツ副署長)
エレン・バーキン(スミス捜査官)
ヴィンセント・ドノフリオ
リリ・テイラー
ブライアン・F・オバーン

解説:
「トレーニング デイ」のアントワーン・フークア監督が、リチャード・ギア、イーサン・ホーク、ドン・チードルの3人を主演に迎えて描く緊迫の刑事ドラマ。ブルックリンの犯罪多発地区で危険と隣り合わせの過酷な日常を送る3人の警官たちの三者三様の苦悩が、リアルかつ緊張感溢れるタッチで綴られてゆく。共演はウェズリー・スナイプス、ウィル・パットン、エレン・バーキン。

あらすじ:
ニューヨーク、ブルックリンの低所得者層が暮らす犯罪多発地区。ここで、警官による強盗事件が発生する。マスコミの非難にさらされたニューヨーク市警では、犯罪の取締り強化でイメージの回復を狙う。そんな中、ベテラン警官のエディは定年退職を1週間後に控えていた。日々を無難にやり過ごすことだけを考えて警官人生を送ってきた彼だったが、最後の任務として犯罪多発地区での新人研修を任されることに。信心深く子だくさんの麻薬捜査官、サル。愛する家族のためにどうしても広い新居が必要になるが、彼の薄給ではとうてい資金の工面などできるわけもなかった。長年ギャングへの潜入捜査を続けているタンゴ。もはや結婚生活もボロボロで、捜査から抜けたいと上司に願い出る。ところが、そんなタンゴに、彼の命の恩人でもあるギャングのボス、キャズに対するおとり捜査というさらなる過酷な任務が課せられる ―
(allcinema)


親しげに話していたギャングらしい男を撃ち殺す警官、街では警官による強盗殺人が起き、その被害者が優秀な黒人少年だったことから大騒ぎになっている…
初っ端から“警官”に問題がある事が浮き彫りになる。
― ニューヨーク

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これがニューヨークなのだ。
空から映し出されるのは低所得者が住む公営住宅。誘拐、売春、麻薬売買・・・。犯罪多発地域と言うよりは“犯罪”そのものが風呂敷のように広がる地帯、ブルックリン。


この映画の主人公達は、この街の3人の警官。
中堅以降の彼らはそれぞれの職務に励むものの、この犯罪の街で真っ当に生きるのは難しく、毎日がそれぞれの持つ“正義”と誘惑との戦いとなる。だがそれはあまりに当たり前の日常であり、その都度、その都度、ほとんど考えも無く自然に選択してしまう。だが選択した事柄により、結果は当然変わってくるのだ。

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麻薬捜査官サル。
功績を次々に挙げ、上司、同僚共に信頼の厚い男だが、家族を愛するあまり自分勝手に作り上げた理想のため、金が早急に必要になる。彼が職務上、踏み込む現場には麻薬売買で集まってきた大量の金が。目の前に積まれている大金の束。サルは誘惑に勝つことが出来るのか ―

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潜入捜査官タンゴ。
ギャングへの長い潜入の末、結婚生活は破綻。世間一般常識上での善悪が付かなくなってきている自分に危機感を持っており、早く抜けたいと思っている。そんな時に最後の仕事として、信頼を勝ち取り兄弟のような絆を育んできたギャングのボスを罠にかけることを言い渡される。タンゴは正義と友情の間で苦悩する ―

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退職間際の警官エディ。
事なかれ主義で危険に近付かず、ようやく定年を迎えようとしている彼は、最後の最後になって誘拐犯罪とその後の監禁現場に遭遇、目撃してしまう。退職したその日に愛を打ち明け、見事にフラれ守るものが無くなった彼のとった行動とは ―


冒頭に殺される男が語る話の中に、実はこの作品のキモがある。
「人生は、より善か、より悪か」
人生の善し悪し、生き方の善し悪しは、日頃の行動で既に決まっており、そのまま突き進むことになる、みたいな意味で、この作品の登場人物達はそれを身体を張って見せてくれる。一部に気の毒な結果を迎える人物もいるが、よくよく考えると彼はスター・ウォーズ風に言うと“暗黒面”に落ちてしまったために仕方ないのかな、ととれる。

サルは信心深い人物だ。だがそれが彼を救ったか?念仏を唱えるように聖書の一節を朗読しながら向かった先は、必要な物が山と積まれている場所だ。サルの同僚が「やめろ、サル。そんなものは汚い金だぞ。それよりも妻の元に帰ってやれ。誰もお前にがっかりなんかしてないさ」と声をかける。だがサルも既に暗黒面にどっぷりと落ちていた。

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エディの最後は意外ではあったものの、よく考えてみると「見て見ぬ振りをする」ということは「見えている」ということだ。それは「気が付いている」ということであり、関心の無い無能な警官ではないということでもある。
彼がなぜ事なかれ主義なのかを説明する場面が一度だけある。ぜひそれを聞いてあげて欲しい。そして残りの人生を一緒に過ごそうと考えた女性とのやり取り。その彼女の表情。
エディが警官に向いていなかったのは事実かもしれないが。

3人の男達は顔も名前も知らない間柄だが、群像劇らしく最後に一瞬同じ場所に立つ。そこがあの犯罪の巣窟というのも、この作品らしい。
どうぞ、眉間に皺を寄せて男達の生き様にどっぷりとお嵌まりください。

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