『ラッシュ/プライドと友情』(2013) - Rush –

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F1レースとレーサーを扱った話だというのに、黄色みがかった暖かい質感の画面から伝わるこの感じはなんだろう?ヘルメットと車体に自分の名前を刻みつけた男達がサーキットで見るものは、狭い視界一杯に広がる互いのマシンだけ。それは鏡に映る自身の姿でもあるのだ。

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■ ラッシュ/プライドと友情 - Rush – ■
2013年/アメリカ・ドイツ・イギリス/124分
監督:ロン・ハワード
脚本:ピーター・モーガン
製作:アンドリュー・イートン 他
製作総指揮:ガイ・イースト 他
撮影:アンソニー・ドッド・マントル
音楽:ハンス・ジマー
 
出演:
クリス・ヘムズワース(ジェームズ・ハント)
ダニエル・ブリュール(ニキ・ラウダ)
オリヴィア・ワイルド(スージー・ミラー)
アレクサンドラ・マリア・ララ(マルレーヌ)
ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ(クレイ・レガッツォーニ)
クリスチャン・マッケイ(ヘスケス卿)
デヴィッド・コールダー(ルイス・スタンレー)
ナタリー・ドーマー
スティーヴン・マンガン
アリスター・ペトリ
ジュリアン・リンド=タット

解説:
「アポロ13」の巨匠R・ハワードがF1界の伝説を映画化した力作。1976年のグランプリをクライマックスに、宿命のライバルとして互いを認め合い、競い合ったハントとラウダ、対照的な2人のレーサーの軌跡を描く。「マイティ・ソー」のC・ヘムズワーズが天才肌ながら精神的にもろい部分も持ったハント役を、「グッバイ、レーニン!」のD・ブリュールが頭脳派だが大事故からよみがえる不屈の闘志を秘めたラウダ役を熱演。当時のF1マシンを再現した、ドキュメンタリーと見まごう迫真の映像も見ものだ。

 
あらすじ:
感性で走る天才型でプレーボーイとしても名高いハント、緻密な計算でレースを支配する頭脳派にしてストイックなラウダ。対照的なレーサーの2人は、F3時代から互いをライバルと認め、しのぎを削っていた。自動車レースの最高峰、F1に舞台を移してからもその関係は続き、1976年、2連覇を目指すラウダと悲願のチャンピオンを狙うハントが死闘を繰り広げる。そして第10戦、ドイツGPで2人の運命を揺るがす事件が起きる ―

(WOWOW)


 
派手な設定と登場人物であるはずなのに、とても静かに話は進行していく。ヘルメットを被った耳に聞こえてくるのは、くぐもったエンジン音。ヘルメットを通して見えるものは、狭い視界一杯に広がるライバルたちのマシン。そして旗が振られた後は、マシンを操る自分の腕と足。機械のようにぎこちなく動くように見えるのは、マシンが300kmの速度で移動しているせいだ。その速さの中では何もかもがぎこちなく、とても頼りない。
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改めてF1用のレースカーを見てみると、そのハンドルの小ささにとても驚く。もちろん超スピードの中での小回りのためだと分かるのだけど、そんなほとんど車型スーツのような小さくて軽いものに身体を嵌め込んで、地面すれすれに300km以上のスピードを出していて大丈夫なんですか…
作品冒頭に主人公の一人ニキ・ラウダが語っていた。「レーサーになるヤツなんて大なり小なり頭がオカシイのさ」
 
Rush-movie2013_37この映画は、1970年代に実在した二人のレーサーの物語。
一人は身体が大きく度胸もあってプレイボーイのジェームズ・ハント。もう一人はネズミ顔で神経質なニキ・ラウダ。どちらも天才的なドライビング・テクニックを持つと同時に命知らずな事でも変わらない。けれども“命知らず”というのは、いつ死んでもいいという意味では無い。自身のテクニックに裏打ちされた「自信」に対する証明なのだ。
 
それと同時にF1のレースカーに刻み込まれた自分の名前。もちろんヘルメットにも自分の名前が書いてある。大勢の観客、大勢のテレビ視聴者、大勢のマスコミ、カメラがそれを追う。他を凌駕するスピードでコーナーを曲がり、行く手に見えるのはコースだけ。自分のためのコースが目の前に広がり、ラストにチェッカーフラッグが振られる。
 
空いている阪○高速3号線で○○0km以上のスピードを出せた時に感じたあの「この道は、この世界は私のためだけにあるー!!」というような高揚感。ほんの一瞬だけ感じることが出来るあの高揚感。大分とレベルは違うんだけど、これがレーサーが命をかけてまでやめることが出来ないレースに感じるものに少しだけ近いのかなー、と想像する。
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これを感じるには、やはり先頭を走ってこそ。だからラウダは大怪我をしたにも関わらず、レースのテレビ中継を見ることをやめられず、痛みをこらえて自分の名前のあるヘルメットを被ってみる。そこに自分が望む世界があるから。そこでしか得られないものがあるから。
でも彼にとっての一番のかけがえのないものは何だったか?これに気が付いた時、ラウダはなんの躊躇いも無く一直線にその場所へ。この後、彼は自分の大事なものと命を守りながらレースを続けた。楽しんだ後、大事な者の待つ場所に帰るため。
 
Rush-movie2013_36対照的なのは性格だけでは無かったジェームズ・ハント。豪快なように見えて、実は神経質な彼は、チャンピオンのタイトルを一度手に入れた後、引退する。彼は何事も“守る”ことが不得手だったのだ。守ることに時間と労力を割くくらいなら、とっとと放り出して違う場所へ移動する。だが手に入れるまでは惜しみない努力と苦労する事をものともしない。そこがラウダと気のあったところなのだろう。ラウダはハントの良き理解者でもあった。
 
このハントを演じたのはクリス・ヘムズワース。今までの彼の出演作の中で一番いいのではないだろうか?彼に限らずこの作品は思っていたより極上のドラマが展開するF1レースもの。奥行きのある色使いに音楽。それでありながらレースカーに乗っている気分も味あわせてくれる。なんか珍しくも続けて2回観てしまったわ。
オススメです。