『ミッシング・ポイント』(2012) - The Reluctant Fundamentalist –

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アメリカ対テロリスト構図の作品では無いです。主人公はあくまで自国を愛するパキスタンの青年であり、テロリストとは関係無い。巨大な夢の国“アメリカ”とこれから成長していこうとしている自国パキスタン。彼の目線で見るこれら2つの国の現実と、未来への期待を描く社会派ドラマ作品です。

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■ ミッシング・ポイント - The Reluctant Fundamentalist – ■
2012年/アメリカ・イギリス・カタール/131分
監督:ミーラー・ナーイル
脚本:ウィリアム・ウィーラー
原作:モーシン・ハミッド「コウモリの見た夢」
製作:リディア・ディーン・ピルチャー
製作総指揮:ハニ・ファルシ
撮影:デクラン・クイン
音楽:マイケル・アンドリュース
 
出演:
リズ・アーメッド(チャンゲス)
リーヴ・シュレイバー(ボビー)
キーファー・サザーランド(ジム)
ケイト・ハドソン(エリカ)
オム・プリ
シャバナ・アズミ
マーティン・ドノヴァン
ネルサン・エリス
ハルク・ビルギナー

解説:
アメリカ社会で人生のエリート街道を歩んでいたさなか、2001年9月11日の同時多発テロ事件が勃発し、いわれなき人種差別により、アメリカン・ドリーム実現の夢を打ち砕かれてしまったひとりのパキスタン人青年。それ以後、祖国に戻り、反米の姿勢を打ち出すようになった彼と、テロ活動への彼の関与を疑うCIA工作員が鋭く対峙するさまを、「トリシュナ」のR・アーメッドや、L・シュライバー、K・サザーランドら、実力派キャストの競演でスリリングに描写。本邦劇場未公開ながら要注目の秀作ドラマ。
(WOWOW)
 
あらすじ:
パキスタンでテロリストによるアメリカ人大学教授の拉致事件が発生。アメリカ留学の経験があり、同じ大学で教授を務めるチャンゲス・カーンが関与しているとふんだCIAは、ジャーナリストを介して彼に接触を試みるが ―


 
夢と希望を持ってアメリカ、プリンストン大に留学したパキスタンの青年チャンゲス。主席で卒業した彼は大手企業アナリスト会社に就職。育ちの良さと持って生まれた控え目な性格も合わさって、同僚ともうまくやり、上司にも認められてめきめきと頭角を現していく。恋人も出来て明るい将来が開けていた彼。そんな時に彼の暮らすニューヨークで起きたのが9.11テロだった。
 
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中東系ということだけで、空港で呼び止められ人権を無視したような尋問、検査が行われる。ごく普通の一般人サラリーマンである彼は、人を侮辱してかかってくるFBIの尋問を大人しく受けていたが、ある時、ふとしたことで芽生えた小さな“凶暴性”。元来温厚な彼の心に出来た小さなトゲのような“いらだち”が、1本、また1本と身体の中に刺さっていく。
彼はアメリカで大きな成功を手に入れようとしていた。だが、無視できぬほどに育ってしまった心のトゲを抜き去ることが出来ず、故郷パキスタンへの帰郷を決める。そして大学で若者達に教える事を選んだのだ。「パキスタンの夢」を。
 
The_Reluctant_Fundamentalist_Movie2012_12この作品の話の流れは、現在のパキスタンで起きたアメリカ人拉致事件で、それを解決するためにマイクを付けたジャーナリストが事件に関わっているだろうチャンゲスに近付き、話を聞くということがベースとなっている。チャンゲスはジャーナリストがCIAの手先ということは百も承知だ。その上で、自分の話を全て聞いてくれ、と彼に話しかける。一部ではなく“全て”を聞いてくれ、と。
 
全てとはアメリカ留学から就職、パキスタンの家族との確執、9.11テロとその後、帰郷という彼の人生だ。「アメリカン・ドリーム」を求めた彼の人生。9.11の後、アメリカは彼を憎んだが、彼は決してアメリカを憎んではいなかった。彼は「アメリカン・ドリーム」を信じて、アメリカの一部になっていたのだ。一歩、一歩、着実に歩んでいた。
だが好むと好まざるに関わらず、9.11が彼をアメリカから浮き立たせてしまった。傷付いた彼の心はそのままアメリカに沈むことはなかったのだ。
 
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チャンゲスは故郷で若者達に教えた。「太陽を求めるのではなく、自らが輝くのだ」と。未来の夢と希望は、ここパキスタンにもあるのだ、と。誰かが作った太陽を求め、うまく行かなかった時に感じるのは挫折であり、裏切られたという思いであり、騙された、期待と違った、というような「負」の感情だ。だが自らが輝く太陽への道は、常に前を向くことであり「正」への道となる。
CIAはこれを“反アメリカ的”で過激な思想と捉えた。
過激ですぐに銃をぬく、反社会的な民族とはいったい誰のことだろう?