『アザーズ』(2001) - The Others –

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今年最後の作品はお気に入りのホラー『アザーズ』。イギリス海峡に浮かぶ島、霧に包まれた大きな屋敷、クラシックな登場人物、死者のアルバム・・・。何かズレていて噛み合わない世界、何が起きたのか、何が起きるのか、、。この映画のニコール・キッドマンが一番好きだな

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■ アザーズ - The Others – ■
2001年/アメリカ・スペイン・フランス/104分
監督・脚本:アレハンドロ・アメナーバル
製作:フェルナンド・ボバイラ 他
製作総指揮:トム・クルーズ 他
撮影:ハビエル・アギーレサロベ
音楽:アレハンドロ・アメナーバル
 
出演:
ニコール・キッドマン(グレース)
アラキーナ・マン(アン)
ジェームズ・ベントレー(ニコラス)
フィオヌラ・フラナガン(ミセス・ミルズ)
エリック・サイクス(ミスター・タトル)
エレイン・キャシディ(リディア)
クリストファー・エクルストン(チャールズ)
ルネ・アシャーソン(老婆)

解説:
「オープン・ユア・アイズ」のアレハンドロ・アメナーバル監督によるサスペンス・ホラー。「バニラ・スカイ」で「オープン・ユア・アイズ」をリメイクしたトム・クルーズが本作でも製作総指揮として名を連ねる。主演は「ムーラン・ルージュ」のニコール・キッドマン。広い屋敷を舞台に、姿の見えない何者かの存在に怯える家族の心理をジワジワと迫り来る巧みな恐怖演出で描き出す。

 
あらすじ:
1945年、第二次世界大戦末期のイギリス、チャネル諸島のジャージー島。グレースは、この島に建つ広大な屋敷に娘アンと息子ニコラスと3人だけで暮らしていた。夫は戦地に向かったまま未だ戻らず、今までいた使用人たちもつい最近突然いなくなってしまった。屋敷は光アレルギーの子どもたちを守るため昼間でも分厚いカーテンを閉め切り薄暗い。そこへある日、使用人になりたいという3人の訪問者が現れる。使用人の募集をしていたグレースはさっそく彼らを雇い入れるが、それ以来屋敷では奇妙な現象が次々と起こりグレースを悩ませ始める ―

(allcinema)


まずキャスティングがいいですよねー。
神経質で完璧主義者の母親、いつも不満げな(可愛げのない)上の娘、大人しくて恐がりの弟。
 
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姉弟は光アレルギー(光線過敏性皮膚疾患)を患っており、太陽光に当たることが出来ない。元気いっぱいの子供だというのに、外で遊ぶ事はおろか屋内にいても窓には分厚いカーテンを引いたままに。母親グレースは徹底的に光から子供を守るけれど、実は、その大変な毎日に疲れていて、“耐えがたい”と感じている。
夫チャールズは出征したまま、生死も分からない。大体このような大きな屋敷に住むほどの資産家であろうから、出征義務は無かったのかも。それなのに国のためと言って自ら志願して行ってしまった。
グレースは不満だらけなのだ。不満で不安で、精神的に不安定だった。
 
この母親を線が細くて唇の薄いニコール・キッドマンが完璧に演じている。育ちの良い姉弟役の子供たちも上手で、いかにもイギリス人という感じがよく出ている。
 

色素性乾皮症(光線過敏性皮膚疾患)
一般に紫外線 (UV) には、細胞内の遺伝子であるDNAを損傷する作用がある。DNAに損傷を受けると、その細胞はがん細胞となる可能性が高まる。 また、真夏の直射日光など紫外線を大量に含む光線に晒された場合、DNAが損傷を受けるだけでなく、細胞そのものが障害を受け、細胞死に至り、水疱等の火傷のような症状を示すことがあり、これを日焼けという。
 
通常、紫外線の照射によりDNAが損傷を受けても、すべての細胞が死んだり、がん細胞となったりする訳ではなく、大部分の細胞はDNAの損傷部位を修復する機能、すなわち不定期DNA合成 (UDS:unscheduled DNA synthesis) 機能を有していて、損傷を受けたDNAを正常な状態へと修復することができる。
 
しかし、XP患者では、このDNA損傷部位を修復する機能が遺伝的に低下しているため、DNAレベルの損傷が固定化され、異常細胞、すなわち、がん細胞の増殖に繋がり、皮膚がんが発生すると考えられている。(Wiki:色素性乾皮症)

この姉弟の病気は最初は冗談か、もしかして吸血鬼作品なの?と思いながら観ていたのは秘密です
 
 
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以前にもこの屋敷で使用人として奉公していたミルズさん(抜け目の無い感じ)、リディア(純朴)、ミスター・タトル(木訥)。20世紀半ばにしては、クラシックな衣装。でもそれは飾り気の無い、仕事柄なものかとも見える。だが彼らが登場した頃から感じる違和感。何か秘密があることは間違いない。
彼らの正体は、おいおい分かるんですけどね
 
 
 
【例によってここからはネタバレあり】
 
 
 
 
 
The_Others-2001_32彼ら3人が歩く姿は、ススーーーっと宙に浮いてるような感じで、昔観た日本の怪談「牡丹灯籠」を思い出す。特にラスト近く、正体が分かるときのシーンで家に入ろうとするところ。ふわ~っと玄関ガラスに近付いて、突き抜けてそのまま中に入るのかと思いきや、外に立っている。このシーンは秀逸だ。彼らにはお化けでもなく、ゴーストでもなく、“幽霊”というのがぴったり合っている。
 
そしてもう一つ、この作品で怖かったのはアレですよ、死者のアルバム「死者集」。こんなにハッキリ見たのはこの映画が最初だったかもしれない。そう言えば、ちょっと前に観た『ブランカニエベス』では撮影するところが出てきたなー。
カメラが発明される前は「デス・マスク」。発明されてからは遺体の写真を撮ることで死者の魂を封じ込める、というヨーロッパの方の風習なのかな。古代エジプトや南米なんかの“ミイラ”も同じことですよね、きっと。
例によってチラッと置いときます(注意!クリックしたらすごく大きくなります!)
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The_Others-2001_33霧の中で夫と出会うシーンもよく出来ていた。
「家を探していたんだ・・」って、夢遊病のような夫チャールズ。もちろん彼も幽霊だったんだけど、家に戻って家族に会うことを願ったまま戦死してしまったのとは、ちょっと違う複雑な感じ。グレースがいうように妻を煩わしく思っていたのが本音だったのかもしれない。子供たちの病気も、それに対応する妻も、夢物語の嫌いな現実主義者的な妻自身も。
だから又、出て行ってしまった。こういうのが浮遊霊というのだろうか。行くところも定かではなく、帰りたいところも無い。一番可哀想に思った。
 
どこからともなく聞こえる子供の声、閉めても閉めても開くピアノの蓋、聞こえてくるピアノの旋律、娘に取り憑く老婆、無くなってしまったカーテン・・・。夫も何も言わずに出て行った。何者かが侵入したのかと怯えながらも銃を取り出すグレースはもう限界に近い。
夫が出征してから、いや出征する前からもずっと追い詰められていたグレース。でもそれは自分で自分自身を苦しめていたとも言える。
 
The_Others-2001_17-2ミルズさん達によって、全ての真実が分かった時、彼女は自分のした事におののきながらも、その時の気持ちを正直に子供たちに伝える事が出来る。そしてようやく全てから解放された。その時に現れた「ママは無知だから」と言う素直な子供のようなグレース。
よく言うよね。自分が死んだことが分かっていない人や自殺をしたような人は、何度も何度も同じ事を繰り返し苦しんでいると。これこそが、グレースが子供たちに説く「子供リンボ」という地獄の事だ。何度も何度も罰を受ける無間地獄。毎日叫びながら目が覚めるのだ、作品冒頭にあったように。
 
全てが明らかになり正直な気持ちを話し合った彼ら、グレースと子供たちはこの家に取り憑いた。だが“取り憑く”というのは生者である人間側の言い分でしかなく、反対に見ればここは彼らが一番落ち着ける彼らの住まいなのだ。彼らには他に行くところが無い。
 
だから、こういった家に暮らすことになった場合は、共存するしかない ―
 
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