『ザ・ドア 交差する世界』(2009) - Die Tür –

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1枚のドアの抜けると、そこは5年前の世界だった ― 。娘を失い、全てを失った主人公は全てを取り戻したかにみえたが、この不思議な現象にはやはり大きなリスクが。個人的な出来事から、やがてそれは社会全体に広がっていく。そして主人公は最後に何が一番大事で何が幸せなのかに気付く。そんなお話です。ちょっと考えさせられる内容。

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■ ザ・ドア 交差する世界 - Die Tür – ■
2009年/ドイツ/101分
監督:アノ・サオル
脚本:ヤン・ベルガー
原作:アキフ・ピリンチ「Die Damalstür」
製作:シュテファン・シューバート 他
撮影:ベラ・ハルベン
音楽:ファビアン・ローメー
 
出演:
マッツ・ミケルセン(ダヴィッド)
ジェシカ・シュヴァルツ(マヤ)
ヴァレリア・アイゼンバルト(レオニー)
トーマス・ティーメ(シギー)
ティム・ザイフィ(マックス)
ハイケ・マカチュ(ジア)

解説:
「007/カジノ・ロワイヤル」の悪役や、カンヌ国際映画祭で男優賞に輝いた「偽りなき者」など、デンマークが生んだ人気スターのミケルセンが主演。あるトンネルの奥のドアを開けて、5年前、自分の人生が変わる寸前に戻った主人公。娘を救った彼は、5年前の自分を殺して自分として生きることになるが……。終盤に突入してからも意外な事実が次々と判明するなど、最後まで目が離せない秀作となった。原作はドイツの作家A・ピリンチ。2014年2月に特集上映「未体験ゾーンの映画たち 2014」で日本初公開。
(WOWOW)
 
あらすじ:
画家のダヴィッドは妻の留守中、浮気相手と会うために娘から目を離して自宅のプールで溺死させてしまう。その後、妻とは離婚、自暴自棄の生活を送ることになったダヴィッドは事故から5年後、ひょんな事から家の近くで不思議なドアとそれに続くトンネルを発見。向こう側に出てみると、そこはちょうど5年前の自宅付近で、そこに浮気相手の家に向かう自分自身を見つける ―

英題:The Door


仕事がノリに乗っている画家ダヴィッド。妻と可愛い娘、庭にプールのある大きな家。「失って初めて気が付く大事なもの」とよく言うが、彼もそれを身をもって体験することになる。
妻への愛は冷め切ったと思っているダヴィッドは目の前の家に住むジアと度々浮気。この夏の日も妻が出かけたのを幸いに、道を横切ってジアの家へと急ぐ。「パパ、一緒に遊んでよ」と言う娘を置いて。
 
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この短い間に自宅のプールで溺死した娘。責める妻。こうなって初めて気付いた娘への大きな愛。自分を支える妻の存在。その全てをほとんど一瞬にして無くした彼は自暴自棄になり、娘の死んだ大きな家で一人暮らすことになる。あちらこちらに響く娘の声。陽炎のように横切る妻の姿。
何度、自殺を考えただろうか。
 
Die_Tür_115年後の冬のある日。
死ぬ覚悟でプールに落ちた彼は友人に助けられる。その後、彼は導くように飛んでいく蝶の後を追って、茂みに隠れたドアを見つける。蝶はドアの向こうに続くトンネルをなおも飛んでいく。夢見心地で着いていった彼はトンネルの向こう側のドアを開けた。
そこは、入ってきた場所と全く同じところだったが、季節は夏。そして見つけたのだ。今まさしく浮気相手の家に向かう、あの日の自分を ―
 
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娘の事故の寸前に辿り着いたダヴィッドは娘を助けることが出来、5年前の家族に会うことが出来た。違いは自分だけが5つ年を取っているという事だったが、大きな問題が1つ。5年前のもう1人の自分だ。
娘を助けてほどなく5年前と同じように帰宅した彼と鉢合わせしたダヴィッドは、もみ合いになり勢い余って彼を殺してしまう。単純に時間を行き来しているわけではなく、5年前の自分が死んでも、今の自分は死なない。死体を庭に埋めたダヴィッドは、このまま5年前からの暮らしをやり直すことに決めた。もっといい父親として、もっといい夫として。
 
ここまでも充分に不思議なストーリーだが、ここから大きく話は展開。ファンタジーからよりリアルなSFへ。何事にもリスクが伴うことが明らかになってくる。5年前に“戻ってしまって”何も記憶が無いのとは違い、5年間の記憶、自分の言動と共に5年前に自ら“とどまった”からには、自分のした行いの責任から逃れることは出来ない。
 
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あわせてダヴィッドは気が付いた。自分が無くし求めたものは「幸せな家庭」だったが、究極の選択の先にあるものは「娘が幸せになること」だということを。例え、そこに自分がいなくとも。そういった意味ではダヴィッドは失ったものを取り返したといえるラストだと思う。