『BEFORE DAWN ビフォア・ドーン』(2012) - Before Dawn –

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おバカな若者グループも、美男美女も出てこない。代わりに登場するのは離婚の危機を迎えたある中年夫婦。次は風光明媚なイギリスの田舎の風景の中で唐突に現れ、叫びながら全力疾走で追いかけてくる血みどろの一人の男。ゾンビものだけど、ゾンビものではないような。この男を違うものに例えたらどうなる?

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■ BEFORE DAWN ビフォア・ドーン - Before Dawn – ■
2012年/イギリス/82分
監督・製作:ドミニク・ブラント
脚本:ジョアンナ・ミッチェル 他
製作総指揮:マーク・プライス
撮影:アレックス・ネヴィル
 
出演:
ドミニク・ブラント(アレックス)
ジョアンナ・ミッチェル(メグ)
アイリーン・オブライエン(アイリーン)
ニッキー・エバンズ(スティーブン)
アレックス・バルダッチ(ゾンビ)
アラン・フレンチ(ピーター)

解説:
低予算ながら異色にして秀作のゾンビ映画「コリン LOVE OF THE DEAD」のM・プライスが製作総指揮を手がけた新たなゾンビ映画。冷え切った妻との仲を修復しようと努力する夫が、ゾンビにかまれた妻をなお愛し続ける姿を綴る。一途さから、やがて狂気にとらわれていく夫をD・ブラントが熱演、監督も自身が手がけた。ほとんど貸別荘だけという最小限の舞台ながら、恐怖だけでない見応えあるドラマが展開する。
(WOWOW)
 
あらすじ:
夫の浮気や失業ですれ違うようになってしまったアレックスとメグ夫婦。アレックスは愛する妻との関係修復を期待して2人の時間を持とうと田舎の貸別荘を借り出かけた。会話が弾まないまま朝を迎え、酒浸りの夫を残してジョギングに出たメグ。だがいきなり現れた血みどろの男に足を噛まれてしまい ―


Before_Dawn_18仕事は順調、運動も欠かさない、子供達もある程度大きくなって、充実した毎日を送るメグ。かたや夫のアレックスは仕事はクビに、酒浸りの毎日で、浮気したことを今も責められる。
こうなった時の夫婦とは ―
妻にとって夫は重荷でしかない。浮気したことが絶えられず、不潔に感じて触れられたくもない。愛情は冷めてしまった。充分に稼いでおり、夫がいなくても子供達と生きていける。
対して夫は、こうなって初めて妻の存在が大切だったことに気付く。いや、はじめから分かっていた。浮気は単なる浮気であり、妻も子も自分にとってかけがえのない存在であることを。
 
だから夫アレックスはなんとか夫婦の絆を取り戻したくて、2人だけの週末を計画した。子供達を義母に預け、田舎の貸別荘に。都会の喧噪を離れ、仕事漬けの妻の携帯を忘れ、自然の中でまた以前の2人のように戻れることを期待して。自分はこれほどまでに彼女を愛している。きっと彼女も応えてくれるだろう、と。
けれども、妻はどうだ。
仕事の連絡が入るからと片時も携帯を手放さない。実際、何度も鳴る呼び出し音。のんびりする時間も惜しんで、いつものように運動し、疲れたから寝ると言う。忙しい毎日を忘れることなく、マイペースな妻。夫の気持ちは伝わらなかった。もう、遅かったのだ。
 
Before_Dawn_15翌朝、妻メグはジョギングに出た。ワインを何本も開けて眠りこけている夫を残して。目が覚めた夫は一緒に朝食を作ろうと言ったが、そんなことより運動は欠かせない。毎日の習慣に夫は組み込まれておらず、既にその存在は必要なかった。
 
だが、向こうからうなり声を上げながら走ってくる男は何だろう?全力であっという間に近付いてくる。危険を察知したメグは逃げ出すが、しばらくしてとうとう捕まり襲われる。辺り構わず噛み付こうとする男。既に血まみれで、とても人とは思えない。足首を噛まれたが、なんとか振り解き貸別荘に走り込む。
それでも彼女の口から夫に助けを求める言葉は出なかった。


 
どうです?悲惨でしょう?
もちろん噛まれたメグじゃないです。夫アレックスです。
こんな状態になってなお、夫を頼ろうとしない妻を見て、「あー、もう全然ダメやん。彼女の夫に対する愛はほとんど残ってない」と思いましたよ。まーアレックスも浮気相手と来たことのある貸別荘を、この大事な場面で使うという無神経な男だから、あまり同情は出来ない。それもすぐにバレるしねー。そういった点には同情してしまうけど。
 
Before_Dawn_13噛まれたのが妻ではなくてアレックスだったら?
当然、妻はゾンビ化したアレックスをたたきのめし完全に殺しただろう。だって彼女には子供達がいるから。
でもアレックスはどうだったか。別荘隣の納屋にも出たゾンビ男で、事態は充分飲み込めていたはず。妻の傷はどんどん悪くなり、状態は悪化。どう見ても瀕死で、その後、どういう風に復活するかも分かっている。けれども彼は妻を殺してしまうことは出来ない。彼にとって、子供はもちろんだが妻も無くてはならない存在だからだ。
だから彼は最後の望みにかけた。どんなに人道に反しようとも、妻が元に戻るかもしれないことに望みをかけた。
そして起きた事は、当然の結末。
 
夜明け前 ―
小さな問題も、大きないざこざも、争いも戦争も、幸せも、人間の全てを奪い去っていく。いったい何の夜が明けるのだろうか。もしかして人類全員がゾンビになった世界というのは、究極的な幸福の最終形態になった、ということなのだろうか。